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 2009.2.4  「振り返れば、やっぱり格闘技」 第41回 by熊久保英幸




  ドーンと太鼓が鳴らされ、ついに伝説の男・三瓶啓二師範の百人組手が始まってしまった! 一体、百人と闘うのには何時間かかるのだろう。とにかく詳細にメモをとるしかないと思い、対戦相手の帯を見て名前を控え、内容と結果をノートに記し始めた。

 しかし……「アレレ?」と僕が思ってしまうのに時間はかからなかった。この時は知らなかったのだが、昇段審査の組手は両者が握り棒と呼ばれる短い棒を両手に持って行われる。これを落とすと技ありになるのだ。つまり手を開くと落としてしまうので、常に拳を握っていなければいけない。しかし、日頃の癖なのか、三瓶師範が前蹴りをやるとそれを捌こうとして手を開いてしまったり、前蹴りや足払いでコカされると反射的に手を着こうとして開いてしまったりといったことが続出。

 握り棒を2回落とせば、当然、技あり二つで合わせ一本となる。映画で見たような壮絶な闘いを思い描いていただけに、これには興ざめした。ちなみにこれは余談だが、中村誠師範が40人か50人組手をやった時に、こんなエピソードがあるらしい。途中、大山倍達総裁が「お前、手を広げてみろ」と突然言い出し、中村師範が手を広げると握り棒が落ちない……。よく見るとバンテージに握り棒が差し込んであったというのだ。これには大山総裁も「お前、考えたな。頭がいいよ」と苦笑いしたという話を聞いたことがある。

 しかも組手時間は1分か1分半とかなり短い。さらに、相手が三瓶師範ということで気を使っているのか臆しているのかは分からないが、対戦相手が非常に遠慮がちで実に淡々と組手は進んでいったのである。中には見合うだけで終わってしまった者もいた。

 正直、「なんだこりゃあ。これが伝説の荒行?」と思ったものだ。ところが、大山倍達総裁の一言が、そんな流れを断ち切ったのである。

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