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 2009.6.3  「振り返れば、やっぱり格闘技」 第49回 by熊久保英幸



 立嶋は人気先行型では決してなく、本当に強かった。しかもKO勝ちが多く、常にエキサイティングな試合を心がけていたプロである。立嶋の試合で面白くなかった試合は思い浮かばない。

 ただ、なぜここで負けるのかという試合が多かったのも事実。前田憲作との第一戦、佐藤孝也との第一戦、鈴木秀明戦、カレッド・エビアップとの第一戦……立嶋有利の声が多い中、彼はこれらの試合で星を落とした。前田、佐藤、エビアップには再戦で勝って“リベンジの鬼”という異名も頂戴するわけだが。

 ちなみに、前田と佐藤に敗れた後、「立嶋は初対決のサウスポーに弱い」という説を唱えていた記者がいたが、ボクは“そうかな?”と疑問に思っていた。実際、鈴木はオーソドックスだったわけだし。

 彼は対戦相手の映像や試合を見ないことに拘っていた。相手の研究なんかせず、その時間を自分が強くなるための練習時間に費やした方がいいというわけだ。僕も何度か「相手の映像を一度でも見た方が試合のイメージが沸くのでは?」と進言したことがあるが、彼は頑なに拒み続けた。

 今でも取材をする時、相手の映像を見るかどうかはよく聞く質問だ。ビデオテープが擦り切れるほど見るという選手もいれば、立嶋のように全く見ないという選手もいる。中には映像を見てしまうと頭の中で勝手に相手のイメージが膨らんでしまい、闘う前から負ける気分になるから見たくないという選手もいる。

 映像を見た方がいいか、見なくてもいいか。どちらも正解だと思う。でも、映像を見ないで負けが続くようであれば、何かを改善しなければならないという意味で、見た方がいいとは思う。映像を見て相手を研究したことが一度もない選手が、「もう何をしたらいいのか分からない。限界かも」と言うのは違うと思う。試せることを試しつくしてからそのセリフを言えよ、と言いたくなる。

 前述の「立嶋は初対決のサウスポーに弱い」に対して異論を唱えたかったのは、立嶋はサウスポーに弱いのではなく……

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