
「極真空手、思い出を挙げればキリがない」の第45回目。今回はボクが実際に見た試合の中から、これは秀逸だったというテクニックにまつわる話をしていきたい。極真と言えば“根性”とか“精神力”とかで語られることが多いのだが、何と言ってもテクニックが素晴らしいのだよ。
空手における最大の見せ場であり魅力は、上段への蹴りによる一本勝ちだろう。もちろん、突きによる一本勝ちも多々あるのだが、顔面パンチが禁止されている以上、最も倒しやすいのは上段への蹴りとなる。と同時に、相手も最も警戒しているのだから、当てるのが難しい高度な技術なのである。だからこそ、みんな突きと下段に走る傾向にあるのだろう。
ある選手に聞いたことがある。何でもっと上段への蹴りを使わないの? と。すると彼は「疲れるから」と答えた。極真の試合は1〜3回戦までが本戦2分、4回戦以降は3分。これに延長戦2分が1〜3回まである。どんなに長くても1試合は9分。キックボクシングの3分5RやMMAの5分3Rに比べれば楽なような感じもするが、実はそうではない。
まず初日は2試合やらなければいけないし、最終日は決勝までいったとすれば4〜5試合やらなければいけないからだ。それにも増して、キックや総合にはある“見合い”がほとんどない。基本的に、常に攻撃していないといけないのである。しかも、極真の試合は圧力勝負が重要な要素で、お互いに圧力をかけあって攻撃しながら前へ出ることが勝利につながるため、疲れるのだ。
さらに言えば、上段を蹴るのは最もバランスを崩されやすい。ただでさえ当たりにくく、軸足を蹴られたり払われたりして転倒させられれば印象が悪いので、敬遠されてしまうのである。
そんな中、いかにして上段を蹴って当てるか。これがつかみや引っ掛けが許されていれば崩しが使えるのでラクなのだが、極真ルールでは禁止だ。そこで選手たちはどうしたかと言うと、本当によく考えたと思うのだが、2つユニークな方法を編み出した…