「アルゼ K-1 WORLD GP2004 in TOKYO 開幕戦」
FEG/フジテレビ
2004年9月25日(土)東京・日本武道館
開場15:30 開始17:00
バンナ、ダウンを奪われ延長戦も放棄
▼K-1WORLD GP2004 開幕戦
○フランソワ・"ザ・ホワイトバッファロー"・ボタ(南アフリカ/スティーブズジム)
TKO 3R終了時 ※セコンドからタオル投入
●ジェロム・レ・バンナ(フランス/ボーア・ボエル&トサジム)
入場時、場内はバンナ色に染まった。独特の雰囲気はやはり大したもの。相手のボタはまだK-1で1勝も上げておらず、誰もがバンナの勝利を信じて疑わなかったのではないか。しかし、K-1GPにはやはり魔物が住んでいた。
ゴングを前にコーナーから飛び出さんばかりのバンナ。開始のゴングが鳴ると、逆にゆっくりとコーナーから出る。ボタの右ローに対して、右ハイキックで牽制。以後は左ローを当てていく。左インローを入れ、ボタの右ストレートには左ミドルを合わせる。ジャブとローでプレッシャーをかけていくバンナ。コーナーへ詰めて行き、右フック。ボタの右ストレートに左ミドルを合わせ、再びコーナーへ詰めていくとパンチ、ヒザ、ハイキックでボタをコーナーに釘付けにする。
2R、ボタからパンチを打っていくが、バンナは右ハイ、コーナーへ詰めて行き右ハイキック、ヒザ蹴り。ボタのジャブには左ローを合わせていき、ボタがさらに打ってくるとステップでかわす。しかし、バンナが右フックを打とうとしたところでボタの右ストレートがカウンターでヒット! グラつくバンナにボタがラッシュを仕掛け、バンナも打ち返すがボタのワンツーでバンナが座り込むようにしてダウン! 立ち上がったバンナはプレッシャーをかけていき、ボタはクリンチのブレイクの際に右フックを放ってイエローカードを掲示される。バンナは左インローをヒットさせていくが、ダウンを奪うには至らない。
3R、バンナの右にやはり右ストレートをカウンターで入れるボタ。バンナはパンチで前へ出て、ボタを突き放しての右ハイ。左ミドル、ヒザ蹴りで攻めるが決定打にはならない。場内からは祈るような「バンナコール」が巻き起こる。バンナは左ミドル、ローで攻めるが以前のような強引さはなく、そのままゴングを聞いてしまった。勝利を確信したボタはコーナーに上って勝利をアピール。しかし、判定は29−29、29−28、28−28でドロー。
延長戦へ突入する事になったが、バンナはコーナーでうなだれたまま首を振る。そして、セコンドからタオル投入! バンナは試合前の「腕が折れても最後まで行くぜ」という宣言とは裏腹に、リングを後にした。
「グレートファイトだったよ」とボタは試合を振り返る。「バンナを倒して、やっと自分もトップクラスに入ったと実感した。5戦目にしていい結果を出せて神に感謝したい。判定は非常に僅差である事は分かっていたし、セコンドから延長があるかもと聞いていたので、気持ちは出来ていた。でも、ホッとして楽になったね」とボタ。勝因は「今までここまでした事がない、というほどの研究をしてきた。特にロー対策をしてきて、彼は外側からのローが多いと思っていたが、内側を随分と蹴られたのは予想外だった」と語り、「バンナは素晴らしい選手。今日は忘れられない闘いとなった」とバンナを称える。
そして、「私はボクシングではカウンターを狙うタイプだった。しかし、K-1に参戦するにあたってそれではダメだ、自分から前へどんどん仕掛けろと言われ、自分のスタイルを忘れてガムシャラに出て行って負けてしまってたんだ。だから今回は、自分のボクシングのスタイルで勝とうと決めたんだ」と、スタイルを本来の姿に戻した事が勝因だと語った。
バンナはノーコメントで病院へ直行。負傷は「古傷のところ」と関係者に言い残していったが、詳細は不明。
冴え渡った武蔵流!アビディを問題なくクリア
▼K-1 WORLD GP2004 開幕戦
○武蔵(日本/正道会館)
判定3−0 ※30−28、30−28、29−27
●シリル・アビディ(フランス/ブリゾンジム)
ゴングと同時にダッシュ、右ストレートを放つアビディ。それをかわした武蔵は左ミドル。以後も、アビディのワンツーに左ミドルを合わせたりと、効果的に当てていく。アビディはストレートの連打で武蔵を追い掛け回すが、武蔵はヒョイヒョイとかわして空振りを誘っていく。さらに虚を突いてのテンカオ! 空振りさせられ、ボディをテンカオと左ミドルで攻められたアビディは後半に失速していく。
2R、アビディは再び前へ出る。ハイキックの打ち合いから、アビディがパンチに出るが武蔵はヒザで迎え撃つ。空振りになるが、アビディの左フックにバックキックを合わせる新技も披露。武蔵はアビディが打とうとしたタイミングにテンカオを合わせる、武道で言う“後の先”をとって優勢。プレッシャーをかけてワンツー、テンカオ、左ボディと確実にヒットさせていく。武蔵野右フックを浴びたアビディは打ち返しに行くが、武蔵は巧みにディフェンス。左フックにはテンカオを合わせ、左ミドルもヒットさせる。
3R、やはり序盤は前へ出るアビディ。ローからフックで攻め立て、武蔵はクリンチ。アビディの左ストレートをかわして右フック、下がりながらも打ち合いに応じる。ハイキックを空振りさせての左ミドル、さらにヒザ。しかし、前へ出てくるアビディに対して、武蔵は若干ペースダウンしているように見える。相打ちで倒れる場面も数回あり、アビディのプレッシャーに疲れを感じたのか。それでも、最後は打ち合いに応じてゴングを聞き、判定勝利を得た。昨年を上回るスタミナ、という課題はクリアできていなかったものの、武蔵流は相変わらず冴え渡っている。東京ドームでも期待が持てそうだ。
ハイキック一閃!曙、マットに深々と沈む
▼K-1ルール スーパーファイト
○レミー・ボンヤスキー(オランダ/メジロジム)
KO 3R0分33秒 ※右ハイキック
●曙(日本/チーム・ヨコヅナ)
もう後がない曙は、圧力をかけてボンヤスキーをコーナーまで詰めて行き、パンチの連打。曙が勝つためにはこれしかないという戦法だったが、ボンヤスキーはスルリと抜け出してしまった。パンチの種類も蹴りもないため、ボンヤスキーがコーナーから脱出するのは雑作もない事だった。ボンヤスキーは軽快なステップを踏みながら、左右のミドルを当てていき、曙の突進を軽々とかわしていく。中盤には正面に立ち、右ローと左ミドルを連発。曙が再び押してコーナーへ行くが。ボンヤスキーは左ハイで牽制、曙は前進するも連打がもう出ない。
2R、前へ出てくる曙に左ミドル、レバーブローとボディを攻める。飛びヒザ蹴りは曙のボディに命中、その後は右ローで2度も曙の足をくの字に曲げる。この辺りから、ボンヤスキーの攻撃は首から下に集中し始める。ミドルとローを蹴り分けて、曙を揺さぶる。曙はボンヤスキーの右ハイを腕で跳ね飛ばし、コーナーへ詰めるが追って行けず、場内からは落胆のため息が漏れる。もう一度、ボンヤスキーをコーナーに詰めた曙だが、ボンヤスキーはやはりスルリと脱出。左ハイ、左フック、さらに飛びヒザ蹴りを二連発。
3R、ボンヤスキーは真っ直ぐ入ってくる曙に右ボディストレート、左フックからの右ストレート。そして、右ローで曙の体を傾かせると左フック。腕を曙の目の前で交差するようにして視界を防ぎ、右手で曙の頭を下げながらの右ハイキック! これがズバリと決まり、曙の巨体は崩れ落ちた。曙は病院へと向かった。
ノーガードしまくりセフォーが天田を翻弄
▼K-1 WORLD GP2004 開幕戦
○レイ・セフォー(ニュージーランド/ファイトアカデミー)
判定3−0 ※30−28、30−29、30−28
●天田ヒロミ(日本/TENKA 510)
開始と同時に場内は「セフォーコール」。その声援にこたえるかのように、セフォーは左フックがヒットすると一気に打ちに行く。天田も待ってましたとばかりに打ち合いに応じるが、セフォーはこれを両手ダラリのノーガードで華麗に避けてみせる。セフォーはノーガードで天田のパンチを誘い、それをかわしての左フックを当てていく。まさに蝶のように舞い、蜂のように刺す。天田は何度も打ち合いを挑もうとするが、その度にノーガードでかわされ、逆にパンチを入れられてしまう。セフォーはいつも以上に、パンチが見えているようだ。
2Rになると、セフォーのノーガード戦法はますます冴え渡る。天田がパンチで詰めようとしても、スイスイとパンチを避けてしまう。天田のパンチの間隙を縫っては自分のパンチを入れ、天田に左ヒザ蹴りをもらうとすぐに右フック。ジャブから左フック。そして天田が打ち返してくると、またもからかうようにノーガードでパンチを避けまくる。
3R、天田は攻めていくが、セフォーは相変わらずパンチが良く見えている。当てさせずに、当てる。試合中に観客席に腕を上げてアピールするほどの余裕。天田の方を見ずに、パンチを避ける。天田の顔は腫れ、空振りによる疲れも見え始めた。しかし、セフォーは最後までノーガードで楽々とパンチをよけ、余裕をたっぷりとアピールして勝利を決めた。
頭脳を使ったベテランの妙技でホースト勝利
▼K-1 WORLD GP2004 開幕戦
○アーネスト・ホースト(オランダ/ボスジム)
判定3−0 ※30−28、30−29、30−28
●グラウベ・フェイトーザ(ブラジル/極真会館ブラジル支部)
上体の厚みが増し、以前の線の細さを感じさせないグラウベ。試合前の宣言どおり、蹴りを多用してハイキックでホーストをけん制する。序盤、ホーストはフックからローの対角線の攻撃をしていたが、中盤からはショートの連打を多用し始める。こうすると、やはりグラウベは顔面攻撃に不慣れな面が見え、顔面をブロックして下がってしまうのだ。グラウベを亀のように丸めさせたところでホーストはローキック、わざと大きなスイングのパンチを出してもローへと繋げて行く。
2R、左フックを皮切りにパンチで攻め、得意のレバーブローを放つホースト。組んでヒザ、離れ際にフックとベテランの妙技でグラウベを翻弄する。グラウベもローを中心に蹴りを出していくが、ホーストを捕らえることがなかなか出来ない。終盤、右ハイが綺麗な形で決まったかに見えたが、ホーストは肩口で受けてすぐに反撃に転じた。
3R、パンチで勝負に出たグラウベに、ホーストの左フック。グラウベはローから左フックで前へ出るが、すぐにホーストが押し返してレバーブロー。グラウベの蹴りにパンチを合わせ、終盤はグラウベの周りをグルグルと回るようにして右ローキックの集中打。パンチを出すとまずガードをとるグラウベは、ホーストの回転に遅れるため、ローの餌食になってしまった。淡白な内容ではあったが、ホーストが自分に比べればグリーンボーイの経験しかないグラウベを、老獪な技術と戦略で翻弄した一戦だった。
アーツ、安全運転でマクドナルドを返り討ち
▼K-1 WORLD GP2004 開幕戦
○ピーター・アーツ(オランダ/チーム・アーツ)
判定3−0 ※30−29、30−29、29−27
●マイケル・マクドナルド(カナダ/フリー)
素早いパンチのコンビネーションで攻めるマクドナルドに、コツコツとローキックを返していくアーツ。右フックから左ロー、左ジャブから右ミドルとマクドナルドを揺さぶっていく。右ミドルからの左フックをもらうと、すぐに組み付いてマクドナルドのリズムを寸断するアーツ。1R終了間際、打ち合いに出たマクドナルドが左フックをクリーンヒットさせるが、アーツも右ハイで切り返す。
2R、フックとミドルの速いコンビネーションで攻めるマクドナルドの空振りを誘って、右ローを確実に入れていくアーツ。ワンツーを放ち、前へ出てきたマクドナルドを捕まえて左のヒザをボディへ突き刺し、ダウンを奪った。アーツはワンツーからロー、ワンツーから首ヒザと基本どおりの動きで攻め、深追いはしない。しかし、右の合い打ちの後、マクドナルドの右ハイキックがヒット、逃げるアーツに右フックを追撃、マクドナルドは失われたポイントを取り戻そうと一気にパンチで出て行くが、勢い余って転倒してしまう。この時の右フックでアーツは左目上から出血。
3R、アーツはワンツーとロー。マクドナルドが左フックで入ってきても打ち合いには応じず、ジャブとミドルで離れて闘う。マクドナルドの前進をジャブとミドルでさえぎり、ダウンのポイントを守りきった。アーツが12年連続のドーム進出を決めた。
超・大番狂わせ!最軽量ガオグライが優勝候補下す
▼K-1 WORLD GP2004 開幕戦
○ガオグライ・ゲーンノラシン(タイ/伊原道場)
延長1回 判定2−1 ※10−9、9−10、10−9
●アレクセイ・イグナショフ(ベラルーシ/チヌックジム)
“K-1GPには魔物が住んでいる”この言葉を、久しぶりに思い出した。毎年優勝候補に挙げられながら、なかなか王座に手が届かないイグナショフ。今年こそ…との意気込みで臨んだが、なんとK-1GP史上最小(身長・体重全て含めた体格で)のムエタイ戦士に不覚をとった。
両者が向かい合うと、その体格差にどよめきが起こる。ガオグライはイグナショフのハイを体が反り返るほどのスウェー、パンチはダッキング、ローはスネでカットと素早い身のこなしでかわしていく。前蹴りを多用し、前蹴りをフェイントにしてパンチを入れていく。右へ回るときは逃げに徹し、左に回ると左ミドルを入れて組み付き、すぐに右フック。そしてブレイクを待つ。当てては離れる、ヒットアンドウェーも使いこなし、イグナショフに手を出す機会を与えない。
2Rにはイグナショフが捕まえに行くが、クリンチが多くイエローカードが掲示される。ガオグライはブアカーオばりの顔面への前蹴りも放つ。回りながらのヒットアンドウェー、無理して連打を放たずに一発ヒットさせては組み付く、と巧みな闘いぶりを見せる。
3Rにはワンツー、左ミドルで攻める姿勢のガオグライ。しかし、イグナショフが打ち気に出ると組み付き、またはステップで逃げると打ち気をそらしていく。元々、自分から攻めるタイプではないイグナショフは手数が圧倒的に少なく、空振りさせられる事も多い。終了のゴングが鳴ると、勝利を確信したガオグライは両手を広げて勝利をアピールしたが、30−29で勝利を支持したのは1名のみ。他は30−30で延長戦へ突入となった。
延長戦、イグナショフのパンチを掻い潜っての左ロー、顔面への前蹴りと攻めるガオグライ。打ち合いに出ようとしたところで、イグナショフの左ヒザが股間を直撃、ガオグライは悶絶。イグナショフにイエローカードが掲示された。再開後も、ヒットアンドウェーとクリンチを巧みに使い分けるガオグライ。最後も左ミドルをヒットさせ、ゴングが鳴ると再び勝利をアピールした。判定はなぜかジャッジ1名がイグナショフを支持したが、ガオグライの文句なしの技術勝ちだった。
剛力を封じたサモアンフック!
▼K-1 WORLD GP2004 開幕戦
○マイティ・モー(アメリカ/シャークタンク・ジム)
KO 1R2分58秒 ※3ノックダウン
●ゲーリー・グッドリッジ(トリニダード・トバゴ/フリー)
同じ怪力のパンチを持っているとはいえ、パンチングスピードは段違いでモーの方が上。一発狙いのグッドリッジとは違い、モーはジャブを放って狙いをつけ、フックへと繋げて行く。この繋ぎが速い。直線のジャブから曲線のフック(しかもオーバーハンドと普通のフックを使い分けている)が速いコンビネーションで来るため、やはり打撃にはまだ不慣れなグッドリッジは対応できないのだ。
また、豪腕まかせのグッドリッジがフックを放つと上体が流れてしまうのに比べ、モーは返しのパンチも速い。回転力にも差があり、グッドリッジが勝つためには、まさに一発の破壊力に賭けるしかなかったといえるだろう。
1R、右ロングフックからの左フックでモーはダウン先取。グッドリッジの中途半端なスピードの左フックに右フックを返してパンチングスピードの差を見せつけて2度目のダウン、最後は右アッパー→左フック→右フックと連続して叩き込んでトドメを刺した。
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