ブルテリア
「PRO JIU-JITSU X Grand Prix 2006」
2006年3月18日(土)愛知・Zepp Nagoya
開場17:00 試合開始18:00
発展、普及を続ける日本の柔術界が、本家ブラジルの高い壁に、跳ね返された。
格闘技界で日本のブラジルと称される静岡県浜松市に拠点を持つ格闘ショップ「ブルテリア」が主催するプロ柔術X(エックス)。昨年の3月5日に行った第1回大会でレオナルド・サントス、マルコス・バルボーザらの実力者を招聘し、技術・興行の両面で高評価を得ている。
Zepp名古屋というプロ柔術興行にとって大箱で開かれた第2回大会も前年同様、本場の実力者が来日を果たした。
CBJJが主催するムンジアルと並び、ブラジリアン柔術界の二大派閥CBJJOが開く世界大会=コパドムンドのペナ級王者フーベンス・シャーレスと同組織のブラジル国内大会(=コパドブラジル)を制しているシセロ・コスタが、大会の軸となるペナ級8人トーナメントに出場。
世界のトップへチャレンジした日本勢も寝技柔道家=小室宏二、さらに渡辺孝、和道稔之、桑原幸一、福住慎祐と創世記から日本の柔術発展を支えてきた黒帯ばかりだ。
スーパーファイトには修斗世界ミドル級チャンピオン青木真也、TAISHO、植松直哉ら、総合シーンで活躍してきた選手も参戦。
来日組、国内勢に負けじと、目立っていたのが、日系ブラジリアンパワーだ。浜松在住のジョン・バチスタ・ヨシムラはトーナメント1回戦で小室を相手に6−0で完封勝利。磐田に自らのアカデミーを構えるマウリシオ・ソウザがTAISHOから2度マウントを奪うなど、20−0で圧勝するなど、ラテンの乗りの声援をバックに大会第三勢力として、大いに気を吐いた。
トーナメント戦は桑原と渡辺を下したシャーレス、和道&ヨシムラから連続一本勝ちを収めたコスタ、本命の二人が決勝に駒を進めた。結果、シャーレスが、リバーサルのアドバンテージ一つ差という際どい勝負でコスタを下し、大会を制した。
VSブラジル勢で一矢報いたのは、青木だ。テイクダウンでポイントを奪い、磐石のディフェンスで勝利。しかし、会場全体からブーイングとブラジル・コールを浴び、ブラジル勢の勢いを払拭するには至らなかった。
絶対的な自分の勝利のバターンを持ち、かつ勝利のパターンが崩れても持ち直すブラジル勢。その壁は、日本が成長する以上の早さで頂を高くし続けているようだ。
▼第1試合ペナ級トーナメント1回戦 10分1R
○フーベンス・シャーレス(ブラジル/TT柔術/2005年コパドムンド黒帯ペナ級優勝)
4分04秒 送り襟絞め
●桑原幸一(グラスコ/2004年全日本茶帯ペナ級優勝)
ブラジル勢が強さを見せつけたトーナメント戦。世界王者フーベンス・シャーレスは、引き込んだ桑原幸一をパス、バックを奪い送り襟絞めで一本勝ち。
▼第2試合ペナ級トーナメント1回戦 10分1R
○渡辺 孝(パレストラ新潟/2005年コパ・ドゥマウ黒帯ペナ級優勝)
15−0
●福住慎祐(名古屋ブラジリアン柔術/2003年国際マスター&シニア茶帯ペナ級優勝)
唯一の日本人対決となった渡辺孝と福住慎祐の一戦は、テイクダウンと上からの攻めに加え、ガードワークにも長けてきた渡辺が15−0で圧勝。
▼第3試合ペナ級トーナメント1回戦 10分1R
○ジョン・バチスタ・ヨシムラ(BJJAJ/2006年コパ・ドゥマウ黒帯無差別級優勝)
6-0
●小室宏二(RJJ・足立学園/2005年ブドーチャレンジ70s級準優勝)
講道館への就職が決まり、今後プロ活動にどのように関わっていくのか注目される柔道家=小室宏二は、ジョン・バチスタ・ヨシムラにリバーサルを3度決められ、0−6で劣勢に。得意の腕関節=コムロックからの腕十字を凌がれてしまう。バチスタがしっかり足を結ぶクローズドガードの態勢をとると、袖車を狙ったがこれも極めきれず万事休す、予想外の1回戦敗退に。
▼第4試合ペナ級トーナメント1回戦 10分1R
○シセロ・コスタ(ブラジル/バルボーザ柔術/2005年コパドブラジル黒帯ペナ級優勝)
5分28秒 腕ひしぎ十字
●和道稔之(アカデミアAz)
ブラジル国内王者シセロ・コスタは、日本でのネームバリューは決して高くないが、その実績通りの強さを和道稔之戦で見せつけた。テイクダウンからパスガード、絞めを狙いつつ、腕を固定しそのまま腕十字。天才の異名を持つ和道だが、成す術なくタップをするしかなかった。
▼第5試合スーパーファイト黒帯プルーマ級 10分1R
○ホベルト・マツモト(ブラジル/マツモト・デラヒーバ柔術/2006年コパ・ドゥマウ プルーマ級GP優勝)
4分11秒 三角絞め
●木部 亮(アライブ小牧/2005年カンペオナート茶帯プルーマ級優勝)
2月のコパ・ドゥマウ、プルーマ級トーナメントで優勝したホベウト・マツモトは、トーナメント出場の打診を受けたものの体重差を考慮し、これを固辞。木部亮とプルーマ級スーパーファイトに挑んだが、何と1・3sオーバーで、試合場に。
試合開始直後に、テイクダウンを奪われたが、ここからがガードワークを身上とするマツモトの独壇場。得意の"左右どちらからも仕掛けることができる"三角絞めの体勢に入ると、足を組み替えフィニッシュ。体重オーバーには納得できないが、納得のテクニックを披露した。
▼第6試合スーパーファイト黒帯65s契約 10分1R
○マウリシオ・ソウザ(ボンサイ/2006年コパ・ドゥマウ プルーマ級GP準優勝)
20−0
●TAISHO(チームバルボーザジャパン)
マルコス・ソウザの実兄マウリシオを対戦したTAISHOは、テイクダウン、パス、マウントを続けて奪われるなど、20Pを献上。MMA引退後の柔術家人生のスタートに、自らの手で白星という花を添えることはできなかった。
▼第7試合ペナ級トーナメント準決勝 10分1R
○フーベンス・シャーレス(ブラジル/TT柔術/2005年コパドムンド黒帯ペナ級優勝)
4‐0
●渡辺 孝(パレストラ新潟/2005年コパ・ドゥマウ黒帯ペナ級優勝)
準決勝第1試合はシャーベスが、リバーサルとテイクダウンでポイントを奪う。渡辺は長い手足を利したパス狙いで、シャーベスの足をたたんでいくが、巧みなガードワークに最後までポイントを奪えず、そのまま試合終了。
女子黒帯柔術家=愛香夫人との間で、第一子誕生を控えている渡辺。世界大会は見送るようだが、ブラジル勢と比較しても遜色ない強さを見せつけており、順調に増える日本人黒帯柔術家のなかでも、実力は抜きん出ている。敗れてなお、私生活の充実とともにさらなる飛躍が期待できる試合内容であった。
▼第8試合ペナ級トーナメント準決勝 10分1R
○シセロ・コスタ(ブラジル/バルボーザ柔術/2005年コパドブラジル黒帯ペナ級優勝)
6分40秒 送り襟絞め
●ジョン・バチスタ・ヨシムラ(BJJAJ/2006年コパ・ドゥマウ黒帯無差別級優勝)
もう一つの準決勝はブラジル国内のトップ柔術家コスタが、日本で黒帯を巻いた日系パワーの雄ヨシムラを圧倒。パスから襟をしっかりホールド。バックマウントを伺いながら、ヨシムラが立ち上がる動きに合わせ、襟を掴んだ部分を支点に前方へ回転。華麗な動きから送り襟絞めを極めタップを奪った。
▼第9試合スーパーファイト黒帯無差別級 10分1R
○ペドロ・アキラ(ボンサイ/2005年ドゥマウ・オープン黒帯ペサード級優勝)
2−0
●植松直哉(クロスポイント/プロ柔術GI-06ワールドトーナメント準優勝)
ワールドクラスの強豪アンドレ・ガゥバォンと対戦予定だった植松直哉は、ガゥバォンのビザ取得トラブルに伴う、来日不能により、日系パワーの一翼を担うペドロ・アキラと対戦することに。10s以上体重差のある相手に、果敢に投げをしかけたが、逆にテイクダウンを奪われ0−2で敗北。
4月の第2週にロサンゼルスで行われるパンナム選手権に照準を合わせる植松は、順調な仕上がりに確かな手応えを感じているようであった。
▼第10試合スーパーファイト黒帯無差別級 10分1R
○青木真也(パラエストラ東京/2005年ブドーチャレンジ77s級優勝・修斗世界ミドル級王者)
2−0
●マルコス・ソウザ(ブラジル/ボンサイ/2005年コパドブラジル黒帯メイオペサード級優勝)
スーパーファイトに出場した青木真也は、一階級上のブラジル王者マルコス・ソウザと対戦。いきなり立ちヒジ関節を見せると、小外刈りでテイクダウンポイントを奪う。その後は対戦相手の足関節を狙いつつ、ソウザの動きを完全に封じ込め、2−0で快勝。
テイクダウンに強いソウザを相手に、平然と腰高の姿勢のまま、その仕掛けを切り続け、ブラジル人サポーターのブーイングにも全く動じなかった青木。心身ともに快調さを支える芯の強さを見せた勝利だった。
▼メインイベント ペナ級トーナメント決勝 10分1R
○フーベンス・シャーレス(ブラジル/TT柔術/2005年コパドムンド黒帯ペナ級優勝)
アドバンテージ 1−0
●シセロ・コスタ(ブラジル/バルボーザ柔術/2005年コパドブラジル黒帯ペナ級優勝)
決勝のブラジリアン対決は、相手の動きを警戒し動きの少ない展開に。担ぎからパスを狙うコスタに対して、シャーレスが足関節狙いから立ち上がりトップに。ここでリバーサルのアドバンテージを奪い、そのままタイムアップ。ポイントを奪う巧みさ、極めの強さ、堅守、そして勝機を逃さない勝負強さ、世界王者らしい全局面での強さを見せつけたトーナメント優勝を果たした。
(写真&レポート提供=高島学)
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