11月19日(日)東京体育館にて、国際空手道連盟極真会館主催『第38回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』の二日めが開催され、第37回全日本チャンピオン内田義晃(京都)が連覇を達成した。
しかしその一方で田中健太郎(川崎中原)がアルトゥール・ホヴァニシアン(アルメニア)に敗れるなど、内田以外の日本人選手がベスト8で全滅。表彰台を外国人選手が独占する結果に終わり、来年の世界大会に向けて厳しい現実を知らされることとなった。上位入賞者は以下の通り。
国際空手道連盟極真会館
「第38回オープントーナメント全日本空手道選手権大会」
2006年11月19日(日)東京体育館
開場10:00 開始12:50
<大会結果>
優勝 内田義晃(京都)
準優勝 アルトゥール・ホヴァニシアン(総本部)
3位 ディミトリー・ルネフ(ロシア支部)
4位 クリストフ・ハブラシカ(ポーランド支部)
5位 木立裕之(本部直轄浅草)
6位 別府良健(鹿児島支部)
7位 田中健太郎(川崎中原)
8位 池本 理(兵庫支部)
敢闘賞 ディミトリー・ルネフ、クリストフ・ハブラシカ
試割り賞 内田義晃(29枚)
新人賞 原田聡一郎(千葉中央支部)
11月19日(日)東京体育館にて、昨日に続いて国際空手道連盟極真会館主催『第38回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』が開催された。初日は番狂わせもなく淡々と進んだが、決勝日となる二日目では状況が一変、大波乱の連続となった。
波乱を起こしたのは今大会に11人がエントリーした外国人勢だ。初日を突破したのは11人中7人、ベスト8時点では半数を占める4人が残り、ベスト4にはなんと3人が残るという全日本史上初の異常事態に。来年に開催が決定している『第9回全世界大会』の前哨戦としては、暗雲の立ち込める結果となってしまった。
ベスト4に残ったのは2005ヨーロッパ大会優勝のクリストフ・ハブラシカ(ポーランド)、2006オールアメリカン3位で日本にて空手修行中のアルメニア人アルトゥール・ホヴァニシアン(総本部)、2006ロシア・オーヤマカップ3位のディミトリー・ルネフ(ロシア)の3人。
→クリストフの踵落としが住谷を襲う
特にクリストフは3回戦で今年の全日本ウェイト制軽重量級チャンピオン住谷統(兵庫)に下段廻し蹴りで一本勝ち、準々決勝では日本の両翼の一人である一昨年の全日本チャンピオン田中健太郎(川崎中原)から上段廻し蹴りで技ありを奪うという怪物ぶりを発揮。
ホヴァニシアンは4回戦でアレハンドロ・ナヴァロ(スペイン)との外国人対決を制し、準々決勝では昨年の全日本準優勝者・徳田忠邦(大阪南)を体重判定で下して上がってきた別府良建(鹿児島)を一蹴。
→ヨーロッパスタイルと日本スタイルをミックスしたホヴァニシアンの組手は手強い
ルネフは3回戦でベテランの市村直樹(城西下北)、4回戦で今年の全日本ウェイト制重量級準優勝の赤石誠(総本部)、準々決勝で一昨年全日本7位の池本理(兵庫=今大会では4回戦で正道会館の加藤達哉に体重判定で勝利)を破っている。
まさに世界大会を前にして総崩れ状態となってしまった空手母国ニッポンだったが、昨年の全日本チャンピオン内田義晃(京都)がこの大ピンチを救った。昨日の初日は二連覇のプレッシャーからか動きが堅かったが、しり上がりに調子を上げていき、ルネフ、ホヴァニシオンを連破して2年連続の優勝を手に。
→左からの攻撃が異常に強かったルネフ
全日本王座の海外流出が食い止められ、ホッと胸を撫で下ろした松井章圭館長は、「課題が明確に出来た。来年の世界大会を暗示するような結果になったと思います。この結果を真摯に受け止めて、日本人選手にはそれぞれの1年間、充実した毎日を過ごしてもらいたい」と、日本人選手たちに発破をかけた。
各試合の内容は以下のとおり。
▼準々決勝第1試合 本戦3分、延長2分2回まで
○クリストフ・ハブラシカ(ポーランド)
判定5−0 ※右上段廻し蹴りで技あり
●田中健太郎(川崎中原)
開始早々、クリストフの左フックが田中の顔面に。どっしり構える田中はクリストフの突きに合わせて突きの連打を返し、下段廻し蹴りにつなげていく。クリストフはロングのパンチから前蹴り。田中は接近して下段廻し蹴りから突く。田中の右内股蹴り、クリストフが突きを打ち返して膝蹴り。
田中は捌いて右下段廻し蹴り、突きの連打から下段廻し蹴りへ。しかし、田中の突きの引き際に合わせて繰り出されたクリストフの右上段廻し蹴りが炸裂! 膝を突く田中! 技ありが入る。そして、その直後に終了の太鼓。判定5−0でクリストフが勝利、田中が敗れるという大番狂わせとなった。
▼準々決勝第2試合 本戦3分、延長2分2回まで
○アルトゥール・ホヴァニシアン(総本部)
判定4−0
●別府良建(鹿児島)
体格で圧倒的に上回るホヴァニシアンは、左の下突きと左中段廻し蹴り。時折、上段をフェイントして脅かし、下突きへ。
ステップを駆使して何とか懐に入ろうとする別府だったが、ホヴァニシアンはどっしりと構えて別府を追わず、入ってくるところに前蹴りや下突きを合わせる。
両者に手を合わせての攻撃で注意が入った。ホヴァニシアンは駄目押しとばかりに今度は別府を追って行き、左下突きの連打から踵落とし、そして左上段廻し蹴り! 判定4−0でホヴァニシアンが準決勝進出を決めた。
▼準々決勝第3試合 本戦3分、延長2分2回まで
○ディミトリー・ルネフ(ロシア)
判定5−0
●池本 理(兵庫)
かなりの体格差がある。足を使って距離を取り、入るタイミングをうかがう小兵の池本。
ルネフは左下突きを出しながら追っていき、左中段廻し蹴りで追撃、池本も前蹴りを返し、下突き。ルネフは前へ出て左下段廻し蹴りから左下突き、追われる池本はカウンターの踵落しで応戦する。
しかし、それに構わずどんどん追っていくルネフの左ロー、右ローで池本が腰を落とす! 右ローで動きが止まってしまう池本。ルネフは池本を追っていって下突きと右下段廻し蹴り。
パワーで押しまくるルネフに、池本は抱きつくのが精一杯だった。判定5−0でルネフが勝利。
▼準々決勝第4試合 本戦3分、延長2分2回まで
○内田義晃(京都)
判定4−0
●木立裕之(本部直轄浅草)
両手を広げて大きく構える内田。内田の膝蹴り、木立も下突きで反撃するが、内田は微動だにせず大きく構えて圧力をかけていく。
ラスト、木立が思い切って飛び込み、下突きのラッシュを繰り出す! 内田も右ローを連打、木立が足を上げ始める。
終了間際、内田が膝のラッシュから右の上段廻し蹴り! これが木立の頭部をかすめる! 判定4−0で内田が勝利した。
▼準決勝第1試合 本戦3分、延長2分2回まで
○アルトゥール・ホヴァニシアン(総本部)
判定5−0
●クリストフ・ハブラシカ(ポーランド)
外国人同士の準決勝となった。体格的にはホヴァニシアンが優る。クリストフの突きに対してホヴァニシアンは蹴り技主体。クリストフの突きを体で捌きながら、左右の下段廻し蹴りを叩き込み、左右に動いてクリストフに突きの照準を定めさせない。
クリストフが突いてくると右下段廻し蹴り。ホヴァニシアンは後ろ廻し蹴りなどの大技を見せながら右下段廻し蹴り、クリストフは突きで入り込んで行くが、右下段廻し蹴りをもらってしまう。ラスト、突きでも打ち合うホヴァニシアンがクリストフを押す。判定は5−0でホヴァニシアン。上がっている旗を見渡して大喜びするホヴァニシアンだった。第22回のギャリー・オニール以来、全日本大会で9年ぶりに外国人が決勝進出!
▼準決勝第2試合 本戦3分、延長2分2回まで
○内田義晃(京都)
判定5−0
●ディミトリー・ルネフ(ロシア)
決勝進出を目論み左下段廻し蹴りを蹴っていくルネフ、内田はどっしり構えて右下段廻し蹴りを返す。。両者とも決勝を目前にして慎重なためか、見合う時間が長い。静から動へ。「せりゃあっ!」と裂ぱくの気合いを発して内田が突きの連打! 「来いよ!」とでも言わんばかりに気合いを発して挑発する内田に、ルネフ気合いを発してけん制し合い、突きを交わす。
左の強い下突きを繰り出していくルネフに内田は左上段廻し蹴り、そして突きの連打でルネフを下がらせる! 場内の手拍子に合わせて膝蹴りと突きの連打!
内田の猛攻に場内は大歓声だ! 判定は赤い旗が5本、内田がホヴァニシアンの待つ決勝戦進出を決めた。
▼3位決定戦 本戦3分、延長戦2分2回まで
○ディミトリー・ルネフ(ロシア)
判定5−0
●クリストフ・ハブラシカ(ポーランド)
ロシアVSポーランドによる3位決定戦、ルネフはクリストフの突きを捌いて右の下段廻し蹴りを狙い撃ち、強烈な下突きへと繋げていく。クリストフがストレートの突きを叩きつけ、下段廻し蹴り。ルネフの踵落しは空振り。
両者に押しの注意が与えられる。それを図のように激しく突き合う両者、勢いはパワーに優るルネフにある。左右に動きながら下突きをラッシュするルネフに、クリストフは防戦一方。判定は5−0でルネフの勝利。
ルネフは雄叫びを挙げ、両拳を突き上げてガッツポーズした。
▼決勝戦 本戦3分延長2分2回まで
○内田義晃(京都)
延長2回 判定3−0
●アルトゥール・ホヴァニシアン(総本部)
気合いと共に試合場に走りこんだホヴァニシアン、内田はゆっくりと歩を進める。開始の太鼓が鳴っても構えて見合う両者。お互いに上段へ蹴り、下段を蹴り合う。見合う両者、激しい火花が散る。内田の突きに上段廻し蹴りを狙うホヴァニシアン。かと思えば右の蹴りを中段と下段へ振る。内田は左内股蹴りから右下段廻し蹴り。ホヴァニシアンが突きから下段廻し蹴り。再び見合いとなり、ホヴァニシアンが突きから上段廻し蹴り、内田は足払いでホヴァニシアンを転倒させる。ホヴァニシアンは突きから上段廻し蹴りへとラッシュ、ラストに突きの激しい打ち合い! どよめきとため息が漏れ、判定は0−0で延長戦へ。
ホヴァニシアンが右下段廻し蹴りと中段廻し蹴り、内田は左の突きで飛び込んで右下段廻し蹴り。両者は構えたまま対峙。ホヴァニシアンが攻めれば、すぐに内田が返す。内田の突きに右下段を合わせるホヴァニシアン。突き合いから胸を合わせて激しく睨み合う両雄! ホヴァニシアンが突きで前に出て右下段廻し蹴り、内田も下突きと右のヒジ! 手数でややホヴァニシアンが上回ったかに見えたが、旗判定は全員が引き分け。
再延長戦の2分間、両者どっしりと構えて睨み合う。ホヴァニシアンの右ロー、内田の左の突き。ホヴァニシアンは下突きから下段廻し蹴りでラッシュ、内田も突きを返していく。突きで前に出る内田! ホヴァニシアンもパンチとヒジで押し返す。至近距離でのヒジの応酬から、内田は膝蹴りでラッシュ! 右上段廻し蹴り、そして突きで押していく。そして飛び蹴り! ここで終了の太鼓が鳴った。
旗判定は赤・内田に二本! 主審の磯部師範は……赤! 内田が日本の王座を崖っぷちで死守! 世界大会を翌年に控えて大ピンチに見舞われた日本だったが、内田が二連覇で面目を保つという劇的な幕切れとなった。
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