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▲GSPが完全無防備のヒューズの顔面をパウンドで追い打ちすると、レフェリーが試合を止めた |
「Ultimate Fighting Championship 65 BAT INTENTIONS」
2006年11月18 日(土)米国カリフォルニア州サクラメント ARCOアリーナ
<試合結果>
▼第9試合 UFC世界ウェルター級選手権試合 5分5R
○ジョルジュ・サンピエール(カナダ)
TKO 2R1分25秒 ※レフェリーストップ
●マット・ヒューズ(米国)
※ヒューズが王座防衛に失敗、サンピエールが新王者に。
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▲GSPのローキックで、ペースを乱されたヒューズ |
5月にホイス・グレイシー、9月にBJ・ペンを下し、今や世界最大激戦区UFCウェルター級戦線にあって不動の地位を築いたと思われていたマット・ヒューズが、その王座から陥落した。
ペンにベルトを奪われた時期もあったが、01年に王座に就き、UFC至上最も防衛戦を多く闘ってきたパウンド・フォー・パウンド=ヒューズを下したのは、カナダのジョルジュ・サンピエール(=GSP)。
GSPは2004年10月に一度、ヒューズの王座に挑戦している。この時、彼はバックスピンキックをヒットさせ、先にテイクダウンを奪うなどヒューズ圧勝という下馬評を覆すファイトを展開。最後はアームロックを腕十字で切り返され一本負けを喫したものの、この一戦でGSPは、実力者としての評価を完全なものとした。
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▲試合を決めたのは左ハイキックだった |
本来は9月に行なうGSPにとって2度目の王座挑戦だったが、事前に体調不良で回避。ヒューズがペンを相手に激闘の末、防衛を果たした試合を観客席から眺め、満を持してのこの日を迎えた。
試合はGSPが序盤から支配した。切れのいいジャブ、要所を締めるように放たれるインロー。ヒューズの出鼻を挫くようなハイキックと、どんどんプレッシャーを与えていく。
途中、2度ほど蹴りがローブローと判断され試合が中断(「2度目は足だったが、急所に響いた」とヒューズが会見で発言)したが、GSPのペースは変わらない。
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▲高々とUFC世界ウェルター級チャンピオンベルトを掲げる、新王者GSP |
ヒューズの右ローを掴み、今回も王者が得意とするテイクダウンを先に奪う。パウンドを数発入れるが、寝技にはそれほど固執せず、ヒューズが立ち上がろうとすると、そのままスタンドを選択。
その後もGSPのパンチで、ヒューズが腰から崩れ、パウンドで追い討ちを掛けた瞬間に1Rの終了のホーンが鳴るなど、王者がGSPの打撃で翻弄された最初の5分間だった。
このところ、大一番になると(ホイス戦以外は)、序盤に苦戦し逆転勝ちを収めているヒューズ。1R終盤のダメージの回復具合が心配されたが、そこは問題がなかったようにパンチを繰り出す。しかし、GSPの足払いで転がされ、組み付いてもテイクダウンができない。
そして、ついにその瞬間はやってきた。
GSPが足元を見て、視線を下げたままで左ハイキックを放つと、これがヒューズの顔面を打ち抜いた。
キャンバスに仰向けになった王者に、GSPは強烈なパウンドを打ち込むと、ヒューズの目は宙を彷徨う。
続けざまに左右のパウンドを落とすGSP、ここでレフェリーが試合をストップ。GSPが、不動の王者ヒューズを完全な形で、王座から引き摺り下ろした。
極真空手で培った軸のぶれない打撃、ロシアから移住してきたコーチに手ほどきを受けたレスリング、そしてBTTからヘンゾ・グレイシーに所を移し学ぶ柔術。穴のない、そしてテクニカルなイメージを持つ王者は、オクタゴンに新しいチャンピオン像を構築しそうだ。
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▲前王者は、会見で引退を否定。「まずは、この試合のテープを見るよ」(ヒューズ) |
爽やかすぎる笑顔で、腰にUFCのベルトを巻いたGSPの初防衛戦は、早くも確定しており、2月のスーパーポール・ウィークに、ラスベガスでTUF4ウェルター級戦線を勝ち抜いたマット・セラが闘うこととなっている。
「だから、もうヘンゾのところでは練習できない。僕らはいい関係だったけど、試合をするんだから。でもエキサイティングな試合になるだろう」と、早く王者らしいコメントを残したGSPは、ヒューズに対して「今でも一番強かった選手。まだ1勝1敗、また闘うことになる」と発言。
共同会見に同席していたヒューズは、新チャンピオンを称え、自らは噂されている引退を否定した。
世界で最もコンペティティブなUFCウェルター級戦線、12月13日のUFNではディエゴ・サンチェス×ジョー・リッグス戦を初め、同階級のカードがズラリと並ぶ。
新王者は、かつてヒューズがそうだったように、毎試合が最強のチャレンジャーとの対戦となる。
写真撮影&レポート=高島学
Photos&Report=Manabu Takashima
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