↑追う気がないのか、追い足が足らないのか。このままでは、いつまでも不人気王者だ
「Ultimate Fighting Championship 65 BAT INTENTIONS」
2006年11月18
日(土)米国カリフォルニア州サクラメント ARCOアリーナ
▼第8試合UFC世界ヘビー級選手権試合5分×5R
○ティム・シルビア(米国)
判定3−0(50−45、49−46、49−46)
●ジェフ・モンソン(米国)
5R、なかなか距離を詰めない王者ティム・シルビアと、挑戦者ジェフ・モンソンに容赦のないブーイングの嵐が、ARCOアリーナに詰め掛けた15000人の観客から浴び続けた。
UFCが初めてイベントを行ったサクラメント、NBAのサクラメント・キングスが本拠地とするARCOアリーナは、全米で最も騒々しい応援で有名らしい。
そんなサクラメントのファンにとって、UFC世界ヘビー級選手権は最大級のブーイングの対象となった。試合開始当初、ファンの声援を集めていたのは、組技が得意なモンソンだ。
寝技勝負を決め込んでいた挑戦者は、序盤からテイクダウン狙い。タックル一本槍でなく、体を低く滑り込ませながら、片足をつかんで体を回転し、スイープを仕掛けるなど、ATTで磨いた柔術的なムーブをようやくMMAでも発揮できるようになってきた。
→モンソンは、寝技だけではMMAでは王者にはなれないことは、百も承知しているだろう
しかし、王者とは身長、リーチとも大きな差があり、しっかり潜りこむことができない。
またシルビアは、寝技に付き合う気はなく、テイクダウンをディフェンスすると、すぐに距離をとって立ち上がる。そのうえ、打撃戦でも積極的に打ち込まないのだから、観客のブーイングもうなずけるというもの。
3R、ようやくテイクダウンに成功したモンソンだが、ガードをとったシルビアのヒジで目の周りを大きく腫らしてしまう。その後、シルビアが下から蹴り上げてきた機会に乗じて、担ぎからパス。再びシルビアが立ちあがろうとするが、ギロチン・スイープで再びトップをキープするなど、ようやく挑戦者がペースを掴んだ。
と思ったのもつかの間、4Rに入ると、モンソンが明らかにダウン。上を取られ、アームロックを仕掛けられてしまう。何とか上を取り返したが、今度はシルビアの非常に仕掛けの遅い、三角絞めの餌食になりかける。
→シルビアの三角絞め――、かなり珍しいシーンだ
完全に動きのとまってしまったモンソンが必死で拳を振るい、テイクダウンを狙った最終R、少しでもラッシュをかければ試合を終らせる方向に持っていけるというのに、それでも距離を取り続ける王者。
大差の判定勝ちと結果と、大ブーイングという観客の反応に、王者シルビアは「ADCC世界王者に、自分の寝技があれだけ通用したのは満足だ」とコメントを残した。
↑思いもしない一本負けに、タップ直後の三島の表情は……
▼第5試合ライト級選手権試合5分×3R
○ジョー・スティーブンソン(米国)
一本 1R2分07秒 ※ギロチンチョーク
●三島☆ド根性ノ助(日本)
復活したライト級にいよいよ日本人選手が出場した。
三島☆ド根性ノ助、かつて修斗や武士道で活躍し、五味のライバルと目されていたベテランが、心機一転、米国で活路を見いだすか注目された一戦。
→いきなり豪快な反り投げを見せたが、スティーブンソンは「三島の投げは不十分だ」と切って落とした
スヌーピーの縫い包みを手に入場した三島に、一瞬、呆気に取られた米国の観客たちだったが、すぐに場内はTUFで人気者になったスティーブンソンへの声援一色に。三島にはブーイングも起こる。
試合開始早々、反り投げでテイクダウンを奪った三島。上々の滑り出しに見えたが、スティーブンソンの左腕がしっかり三島の首に巻きついている。肩、首、顔とすぐに真っ赤になった三島は、最初のピンチをスラムで切り抜けた。
その後、一気にパスを狙うが、またもスティーブンソンの左腕が首に巻きついてくる。二度目の試みは苦もなく脱した三島は、パウンドを落とし、今度も左へパス狙い。
→ここから、背中をそるように力をこめ、三島の体が下になる
しかし、足を左へするのと同時に、頭が右に入ってしまい、三度目のギロチンが待っていた。
スティーブンソンが、背中をそるように思い切り力を入れると、三島はここでタップ。思いもしない、短時間の一本負けとなってしまった。
ケージを利用されたわけでも、日本で経験できないヒジを落とされたわけでない。三島の得意とする寝技のなかで、思っても見なかった2分少々での一本負けは、三島だけでなく、日本の総合格闘技関係者がUFCの奥の深さを知るきっかけになる、そんな敗北かもしれない。
↑タイトル戦線に生き残りをかけたミアー(右)だが、打撃では全く歯が立たなかった
▼第6試合ヘビー級5分×3R
○ブランドン・ベラ(米国)
TKO 1R1分09秒
●フランク・ミアー(米国)
後のない元ヘビー級王者ミアー、コブラカイへ移籍してヘビー級タイトル戦線サバイバル・マッチに挑んだ。
→“キックの帝王”ロブ・カーマン直伝の首相撲からのヒザ攻撃
が、柔術ではロイド・アーヴィンに、キックはロブ・カーマンに師事するベラのパンチを浴び試合開始早々からピンチに見舞われる。さらに首相撲からのヒザで大きなダメージを受けたミアーは、前のめりに倒れながら、タックルへ。この試みも、簡単にかわしたベラがパウンドの連打でTKO勝ち。
「僕の憧れの対象に勝てた」というベラのマイク、涙が似つかわしくないほど一方的な勝利だった。ベラはこれで、次期ヘビー級挑戦者に内定か? 一報、一時代を築いたミアーだが、いよいよ後がなくなったか。
▼第7試合ライトヘビー級5分×3R
○ドリュー・マックフィールド(米国)
TKO 1R4分07秒
●アレッシオ・サカラ(イタリア)
ボクシングで優勢だったマックフィールドだが、逆にサカラのヒザから打撃で苦しめられる。それでも強烈な左フックをヒットさせると、サカラが無防備に引き込み、そこへパウンド連打。ミレティッチの新鋭が勝利した。
▼第4試合ウェルター級5分×3R
○ニック・ディアズ(米国)
TKO 2R2分27秒
●グレジソン・チバウ(ブラジル)
お膝元で、大声援を受けるディアズだが、ノヴァウニオンからATTへ移りUFCデビューを果たしたチバウがいきなり、バックを奪い、腕関節を狙うなど攻め込む。このピンチも飄々と受け流し、反撃に転じたディアズは上を取り返してパウンドの連打。2Rに入ると、一気に動きが悪くなったチバウは、寝技でケージ押し込まれ、パウンドを受けながらレフェリーのストップの声を聞いた。
▼第3試合ヘビー級5分×3R
○アントーニ・ハードンク(オランダ)
TKO 1R3分15秒
●シャーマン・ペンダーガースト(米国)
ヒザ蹴りをテイクダウンで崩したパンダーガーストだが、ボス・ジムのハードンクがしっかりハイガードで防御。スタンドに戻りハードンクが渾身の力を込めてローを見舞うと、何とこの一発でペンダーガーストが大の字にダウン。ローキック一発で、立つ気配も見せない珍しいKO劇となった。
▼第2試合ライトヘビー級5分×3R
○ジェームス・アーヴィン(米国)
TKO 2R2分36秒
●へクター・ラミレツ(米国)
1Rを打撃で圧倒的に支配したラミレツだったが、2Rに地元サクラメントのご当地ファイター=アーヴィンがカウンターの右ストレート一発で逆転。ヒザ立ち状態で、パンチをもらう1Rのピンチを脱しての大逆転勝利だ。
▼第1位試合ヘビー級5分×3R
○ジョー・オブライエン(米国)
判定3−0
●ジョシュ・ショックマン(米国)
延々と続いたテイクダウン、インサイドガードからのコツコツ・パンチ、そしてブレイク。テイクダウンを決め続けたオブライエンだったが、もちろん観客席からは大ブーイングを浴びせられた。
写真撮影&レポート=高島学
Photos&Report=Manabu Takashima
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