6月10日(日)、全日本キックボクシング連盟の2夜連続興行、『CUB☆KICKS-7』新宿大会のメインで、藤原ジムの中村高明がS.V.G.の白川裕規に勝利。第10代全日本ミドル級王座のベルトを腰に巻いた。
会場となった新宿大会で、白川は過去に参戦した2戦ともKO勝利。ともに会場を多いに沸かせて勝利していることもあって、白川本人にとっても新宿はゲンのいい会場。対する中村は、同じ新宿で過去2戦ともタイ人に斬られてのTKO負けという、自身にとってトラウマともなりかねない会場。中村は前回後楽園で決め手に欠ける闘いぶりを見せていたこともあって、白川優位の予想は崩れない一戦だったが、この一戦にかける中村の決意が、通算4度のダウンを奪っての勝利という結果を生み出すこととなった。
メインのゴングが鳴る前から、会場は白川応援団による大“白川”コール。中村の地元・富山県からも駆けつけたという中村応援団が“中村”コールで応戦する。リングサイドでは、昨日に続き小林聡GMが試合を観戦。古巣・藤原ジムの後輩、中村の闘いを見守る。
ゴングが鳴ると、スロースターターのはずの中村が一気に突進。得意技のヒザを白川に叩き込む。白川もパンチを返すが、中村は鋭いヒザとヒジで白川をダウンさせる。猛攻に中村応援団が立ち上がって歓声、白川応援団も負けるなとばかりに声を張り上げる。同ラウンド中に中村はふたたびヒザでダウンを奪い、一気に試合を自分ペースに持ち込む。
しかし、立ち上がった白川は2Rにパンチで猛ラッシュ。ヒジを繰り出して中村の右目上を斬りさくことに成功する。過去2回、新宿で黒星を喫した中村の“悪夢のヒジ”がまたしてもと思いきや、この日の中村はここからさらにパンチとヒザで3度目のダウンを奪取。ロープ際で組み合ったさいに白川が中村のアゴにバッティングを放ち、レッドカードによる減点1が宣告される。
3R、白川がペースを落とさず前に出るも、中村のヒザとパンチで左頬を大きく腫れ上がらせ、4Rを前に、インターバルではき出した口中の水が真っ赤に染まる。中村も右目上から血を流しながら、白川をロープ際に追い込みパンチとヒザでスタンディングダウンへ追い込む。最終ラウンド、4度のダウンを奪われながらも、逆転を狙って立ち上がる白川。リングサイドに両者の鮮血が飛ぶ中、試合終了のゴングが鳴らされた。
判定は41-49という大差をつけて中村の勝利。しかし、敗れてリングを降りる白川にも、試合開始前以上の大“白川”コールが飛んだ。
勝利し、ベルトを腰に巻いた中村を小林GMが労う。後輩の晴れ姿を前にした小林GMは、一瞬顔をゆがませた後抱き合って健闘を祝った。
中村は「これまで何度もくじけそうになりましたが、ここまでやってこれたのは一緒に練習してきた仲間と小林さん、そして応援してくれた皆さんのおかげです」と挨拶。
さらに「私事ですが、先月に入籍しました。今月、式をあげます。何もない自分についてきてくれると決めてくれた彼女に、ありがとうを言いたい。今日、勝てて本当に良かったです」と結婚報告。藤原ジム勢による胴上げの後、中村は新婦・直美さんをリングに導き、笑顔で勝利を告げた。
試合後、小林GMは「藤原(敏男)先生の気持ちがようやくわかりましたよ。胃が痛かったです。ストレスでヘルペスが出来ました」と、憎まれ口を叩きながらも後輩の勝利に笑顔。その上で「今のままじゃ全然、王者としての求心力が弱い。これからがスタートだと思う」と、さらなる成長を期待。
中村は「おっしゃる通りです。これからもっと内容をともなう試合をしていかなきゃいけないと思います。お客さんとの勝負にも勝てる試合をしなきゃいけないです」と謙虚に受け止めた上で「約10年、藤原ジムにいて、ずっと励ましてくれてきた小林さんに、恩返しがしたかった。小林さんの前でこういう形で獲れて良かったです」と先輩に頭を下げた。
中村は「精神的に自分を追い込もうと思って」あえて試合の1ヶ月前に入籍、試合後に結婚式を設定。「これに負けたら、キックボクサーとしての未来はないと思った。負けたらどのツラを下げて式に出ればいいんだと思ってました」と安堵の表情をみせた中村に対して、小林GMも「俺も、どのツラを下げて余興をやればいいのかと思っていた」と同調。ともに最高の形で式へ出席できることを喜んでいた。
後輩の勝利には笑顔を見せた小林GMだったが、大会全体の内容については「昨日(9日大会)のほうが、いい試合が多かったですね。今日の3回戦の試合とかは、正直、5Rじゃ見せられないし、見たくないと思う」と、厳しく総括。
「全日本の選手より、フリー選手のほうが倒しにいく姿勢がある。(残念ですか?)そうですね。残念です。もっと倒しにいって欲しいです」と、GMとして選手たちにさらなる奮起をうながしていた。
また、この日は7月29日後楽園大会でキックデビューする新空手の精鋭たちがリング上で挨拶。リングに登場した瀧谷翔太・卜部弘嵩・園山翔一は全員18歳、もう1人の新空手王者・大前力也も22歳。若き王者たちの闘いに期待が集まる。
全日本キックボクシング連盟
ALL JAPAN KICKBOXING 2007
「CUB☆KICK'S-7」
2007年6月10日(日)東京・新宿FACE
開場17:30 開始18:30 観衆 700人(超満員札止め)
<全試合結果>
▼メインイベント(第8試合) 第10代・全日本ミドル級王座決定戦 3分5R・延長1R
○中村高明(藤原ジム/全日本ミドル級1位)
判定3-0 ※49-41、49-42、49-42
●白川裕規(S.V.G./全日本ミドル級3位)
▼セミファイナル(第7試合) CROSS BOUT 58kg契約 サドンデスマッチ3分3R延長1R
○水落洋祐(はまっこムエタイジム/全日本フェザー級6位)
判定3-0 ※29-28、29-28、29-28
●木村敬明(レグルス池袋/J-NETWORKフェザー級1位)
▼第6試合 全日本バンタム級ランキング戦 サドンデスマッチ3分3R延長1R
○ウエンツ☆修一(スクランブル渋谷)
判定3−0 ※30-28、30-27、30-27
●手塚豊(JMC横浜GYM)
▼第5試合 ライト級3分3R
△鈴木真治(藤原ジム)
判定1-0 ※29-29、29-29、30-29
△翔太(S.V.G.)
▼第4試合 ヘビー級3分3R
○シング・心・ジャディブ(インド/パワーオブドリーム)
判定3-0 ※30-28、30-28、30-28
●悠羽輝(和術慧舟會)
▼第3試合 スーパーウェルター級3分3R
△亜紀斗(はまっこムエタイジム)
判定1−0 ※30-29、30-30、30-30
△藤元洋次(NSG)
▼第2試合 フェザー級3分3R
△永野裕典(和術慧舟會DUROジム)
判定0-0 ※30-30、30-30、30-30
△甲野裕也(S.V.G.)
▼第1試合 フェザー級3分3R
○遠藤智久(スクランブル渋谷)
判定3−0 ※30-26、30-26、30-26
●讃井浩二(はまっこムエタイジム)
▼オープニングファイト第2試合 ライト級3分3R
○西山洋介(光ジム)
判定3-0 ※30-26、30-25、30-26
●藤川晃徳(NSG)
▼オープニングファイト第1試合 ウェルター級3分3R
○古屋一樹(光ジム)
判定3-0 ※30-28、29-28、29-28
●小榑基能(はまっこムエタイジム)
|