ニュージャパンキックボクシング連盟
「Fighting Evolution VIII COUNTER THE ASIAD ATTAC」
2007年7月1日(日)東京・後楽園ホール
開場16:45 開始17:00
“神の技を持つ男”現在ムエタイの最高峰センチャイが三たび来日を果たした。タイでは強すぎるため同じ階級で相手がおらず、常に5ポンド以上(2〜3kg)のハンディマッチで試合を行っているセンチャイだが、ベストウェイトは本来56〜57kg。今回の契約体重は68kgで、対戦する石毛は三階級上のウェルター級であり、センチャイにとっても未経験の挑戦であった。
1〜3Rまではまさにセンチャイの独壇場。石毛の攻撃を全く受けることなく、ハイキックや前蹴り、ロー&ミドルキック、さらには得意の崩しなどで石毛を翻弄する。3Rには前蹴りとボディストレート、それにヒザ蹴りと徹底的にボディを痛めつけ、石毛の攻撃はイナバウアー級に仰け反るスウェーバックでかわしていく。
しかし、体格差のある相手と何度も組み合ったためセンチャイは徐々に失速。体重も65kgに無理やり増量したため、4Rにはスタミナ切れを起こした。それでも、4R途中に観客席で起こった乱闘騒ぎを横目でチラチラと見るほどの余裕ぶり。
最終ラウンドはセコンドの「これは喧嘩だ!」の声を受けて、石毛が猛ラッシュ。パンチでセンチャイを追い回し、左ストレートを2発当てた。組み付くセンチャイにはなりふり構わないヒジ、さらには頭突きまで繰り出す喧嘩殺法。攻め続けた石毛だったが、センチャイに距離を殺されて為す術がなかった。
石毛は「絶妙の距離感で攻撃が当たらなかった。パンチの当たる距離には絶対にいないし、何を当てていいのか分からない距離にいるんですよ。パンチで行くと合わせられるから足を滑らせるようなローキックで行きたかったけど、蹴らせてくれなかった。力強さよりも何もさせないバランスを感じましたね」とセンチャイの上手さに舌を巻く。
一方のセンチャイは「ムエタイの技術を見せられなかった」と控室でガックリ。「全然、満足していません。2Rに相手のヒジを蹴ってしまい、右の親指を怪我したのもあって技術を60%くらいしか出せなかった。体重差があったので4、5Rはバテてしまいましたし、増量したのでスピードが全然なかった。ウェルター級とやったのは初めてです。石毛は日本人にしては上手いし、将来のあるいい選手でしたね」と石毛の善戦を褒め、「6月29日にまた日本で試合をします。これ以上の芸術を見せるので、ぜひ見に来てください」とアピールした。
ダブルセミファイナルでは、二人の若武者が大活躍している。9・2後楽園大会でウェルター級チャンピオンの笛吹丈太郎への挑戦が決定している20歳になったばかりの健太は、大韓ムエタイウェルター級チャンピオンのイ・テウォンの強打と驚異のタフネスに手を焼いたが、4Rに2度、5Rに1度のダウンを奪って前哨戦で弾みをつけた。
もう一方のセミでは4連続KOと快進撃を続ける26歳の前田浩喜が、MA日本キックボクシング連盟のバンタム級チャンピオン岩波祐次と対戦。お互いに激しく打ち合い、蹴り合う激戦となったが、最後は前田が左ハイキックでダウンを奪い、とどめも同じ左ハイキックで岩波をKO。加熱するNJKFバンタム級戦線に名乗りを挙げた。
▼第10試合 68kg契約 3分5R
○センチャイ・ソーキングスター(タイ/ルンピニースタジアム認定スーパーフェザー級王者)
判定3−0 ※三者とも50−49
●石毛慎也(東京北星/元NKBウェルター級王者)
石毛は怪我から今年3月に復帰し、3月下旬にタイ南部の興行でKO勝利、非公式なものながらベルトを獲得した。両者は昨年7月に対戦する予定だったが、石毛の怪我で流れており1年越しの対戦となる。
1R、組んだセンチャイはいきなり石毛をコカす。鮮やかな体捌きに場内からはどよめきが起こった。前に出て右ローキックを放つ石毛に対し、サウスポーのセンチャイは回りながらかわしてのハイキックを狙う。
左ハイキックで石毛を吹っ飛ばすが、体格差があるためさほど効果がない。回り込みながら巧みに石毛の蹴りをかわすセンチャイ、片手をマットに着けてのカポエラキックも見せる。石毛が前に出てくると前蹴りを突き刺し、石毛を中に入らせない。石毛はヒジを立てて入っていこうとする。
2R、センチャイは前蹴りを多用して石毛を突き放して距離を作り、ミドル&ローキック。胴タックルのように組み付いて石毛を投げ飛ばす。さらには何度もハイキックをヒットさせるが、やはり軽量の悲しさか、石毛を後退させることも出来ない。石毛は左ローで前に出て行くが、センチャイは近づけさせない。
3R、センチャイは左前蹴りと左テンカオ、そして左ボディストレートと石毛のボディを集中的に攻める。左ハイキックも放ってくるので、石毛は気を抜けない展開が続く。石毛が組み付くと、何と飛びつくようにして上からヒジを振り下ろす! 石毛はフックやハイキックを繰り出すが、センチャイは見事に仰け反るスウェーで鮮やかにかわしていった。
4R、ゴングと同時にダッシュした石毛がまだコーナーにいたセンチャイへ左フック! が、これは空を切る。大量の汗をかき、明らかに疲れが見えるセンチャイ。石毛はハイキックをもらいながらも前に出て、右インローを連打。さらに左フックを放つがセンチャイはスウェーでかわす。左ミドルを的確に当てていき、石毛をなかなか近づけさせない。
このラウンド中、観客席で客同士の乱闘が始まり、センチャイはそちらを気にしながらチラチラと見ながら闘う余裕を見せる。
5R、石毛は右インローを蹴りながら前に出る。センチャイは下がりながらも左ミドルと左ハイキックで応戦、前に出た石毛に左ハイを決めたが、石毛はやはり下がらない。明らかにスタミナが切れたセンチャイは胴タックルを連発、石毛はこれに対してなりふり構わずヒジを振り回し、なんと頭突きまで繰り出して注意を受ける。
フルラウンド闘い終えると、センチャイは「ムエタイの技術が見せられなくてごめんなさい」とマットに膝を着いて四方へ向かって頭を下げる。センチャイが各ジャッジ1ポイント差での勝利となったが、これだけの体格差がありながら3Rまでほぼ完封したのは、やはり“神技”だといえるだろう。
●石毛のコメント
「相手のフェイントひとつひとつに反応すると攻めが出ないので、相手の蹴りに対して前へ出るしかなかった。とりあえず右インローを蹴れとセコンドに言われたんですが、その前にジャブを打つと蹴れる距離にはいないんです。一歩前に出ると一歩下がるという感じで。絶妙な距離感ですよね。
4Rから止まってくれたんでやりやすかったけど、パンチの当たる距離には絶対いないんですもん。アタチャイと練習した時に距離感が違うと思ったんですが、それと同じです。向こうが前蹴りで来るのは分かっていたので合わせようと思ったんですが、出来なかった。日本人は倒そうという意識でやってるけど、向こうは触れればいいくらいの感覚でやってるから違いますよ。
パンチは喰らったけど倒されないし、ハイキックもこれは大丈夫と思って距離を潰しに行きました。距離が何を当てていいのか分からない距離にいるんですよ。パンチで行くと合わせられるから、足を滑らすような蹴りで行きました。速い選手には滑らせる蹴りが有効なので。でも、蹴りたいけど触りもしなかった。
試合中は何をしたらいいのかいっぱい悩みましたね。さんざん練習してきたワンツー→左ミドルとか、左ストレートが当たる距離にいないので出せないし、距離を潰しに行ったら前蹴りを合わせられるし。くっつきに行くと上手く前に出られてクリンチされるし。レフェリーが止めてくれないし(笑)。
最後は蹴りが当たらなくて、もっとレフェリーが早くブレイクしてくれればいいのにって思ってました。こっちがヒザを蹴れない場所にいるし、ただ組んで休んでいるだけなので凄く悩みましたね。同じ体重じゃ勝てないでしょう。再戦? クリンチなしのK-1ルールならやります。
最初に組んだ時はタイのフェザー級トップ選手よりも弱いと感じたんですが、力強さよりも何もさせないバランスを感じました。判定には納得しています。タイならもっと差がついたでしょう。打倒ムエタイをもっとやりたいですね。最後はセコンドに“喧嘩だ”と言われて、ヒジをなりふり構わず出していったし、頭もぶつけました。喧嘩に乗ってくるタイ人とやりたいですね。やっぱりヒジありの方が面白いです」
●センチャイのコメント
「勝ったとは思うけど満足していない。ムエタイのテクニックを100%出せなかったから。2Rに相手のヒジを蹴って右の親指を怪我しました。今日は60%くらいしか出せなかった。体格差があったので、スタミナが切れて4、5Rはバテましたね。65kgに増やしたのでスピードが全然出ないし…。
ウェルター級とはやったことがありません。タイではハンディは5ポンドまでなので。石毛は日本人にしては上手い。将来性のある選手です。たくさん石毛のビデオを見て研究してきました。投げは相手の体が大きかったので、出来ませんでしたね。いつも60kg以下でやっているので体が動きませんでした。
フランスで4月に試合をして以来の試合です。タイではほとんど試合を組んでもらえないので…。今は落ち込んでいます。満足していない。29日にまた日本で試合をするので、これ以上の芸術を見せます。70kgくらいまでなら出来ますけど、芸術を見せるのは難しい」
▼第9試合 67kg契約ヒジなし 3分5R
○健太(E.S.G/ウェルター級1位)
判定3−0 ※50−44、50−43、49−43
●イ・テウォン(韓国/大韓ムエタイウェルター級王者)
9・2後楽園で笛吹丈太郎の保持するウェルター級王座への挑戦が決定した、現役大学生キックボクサーの健太。1週間前に20歳になったばかり、挑戦者決定戦を含め二連続1RKO勝ちと波に乗っている。対するイ・テウォンは大韓ムエタイウェルター級王者で10勝8敗2分と7勝(3KO)2敗1分の健太よりも倍のキャリアを持つ。
相手が韓流キックボクサーということもあり、健太は『冬のソナタ』のテーマ曲にヨン様風のメガネをかけ、空を見上げながらの入場。これには観客だけでなく、対戦相手のイも苦笑い。
1R、頑強な体から繰り出す猛烈な左右フックで襲い掛かるイ。特に右フックが強そうだ。ボディブローへ繋ぐコンビネーションも見せる。イの勢いに序盤は圧倒された健太だが、パンチをブロックしてイの打ち終わりに右ローを返していく。後半は右ストレートも繰り出し、余裕が出てきた。
2R、強打を振り回すイに健太はジャンプしての右のパンチから一気にラッシュ。右ストレートから右ロー。この右ローが面白いように決まり、イは左足をかばうためサウスポーとなる。イもパンチのコンビネーションで応戦するが、健太はパンチから右ローで確実にダメージを与えていった。
3R、前ラウンドと変わらず右ローと右ストレートをヒットさせていく健太に対し、イはボディを執拗に狙い撃ち。健太の動きがやや止まる。健太が右ローでイの膝を折り、左右フックで攻めれば、イも左フックを強振して打ち合いを演じる。
4R、右ローで痛めつけられるイは突進して左右のフックで打ち合いを挑む。これに対して健太の右ストレートが炸裂! タフなイからようやくダウンを奪う。コーナーへ詰めてパンチ、ヒザで畳み掛ける健太は左右の連打から顔面へのヒザ蹴りでスタンディングダウンを追加。一気に仕留めにかかった健太だったが、イはゴングに救われた。
5R、健太は右ストレート、イは左フックで猛然と打ち合う! 驚異的なタフネスで襲い掛かるイに健太はバテ気味だが、それでもローとパンチを打ち返して激しい打ち合いといなり場内もヒートアップ。健太は右ストレートからボディへのヒザ蹴りでダウンを追加すると、再び打ち合ってKOを狙いにいく。
しかし、タフなイは最後まで耐え抜き、判定決着となった。イはさすがに精根尽き果てた表情でロープに突っ伏し、健太も疲れを隠しきれなかったがスクワットと腕立て伏せのパフォーマンス。大差の判定で健太がタイトルマッチ前哨戦を勝利で飾った。
▼第8試合 交流戦 54kg契約 3分5R
○前田浩喜(インスパイヤードモーション/NJKFバンタム級2位)
KO 3R2分42秒 ※左ハイキック
●岩波祐次(渡辺/MA日本バンタム級王者)
なんと四連続KO勝利、その内3試合が1RでKOという“倒し屋”っぷりを発揮している前田。90年代前半の名キックボクサー山本アキラ会長が育てた、層の厚いNJKFバンタム級のホープである。対するは他団体MA日本キックのチャンピオン岩波。他団体のチャンピオン相手に三連敗を喫しているだけに、ランカー相手のこの試合は落としたくないところだ。
1R、序盤から激しくローを蹴り合う両雄。サウスポーの前田は岩波が前へ出てくるタイミングに合わせての左ハイキックも狙い続ける。パンチとローでアグレッシブに攻める岩波だが、前田の左ハイキックがビュンビュンと飛んでくるため気の抜けない展開。
2R、ハイキックを狙ってくる前田に岩波はヒジ&ヒザ。勢いに乗る岩波がローから右ストレートを狙い、右がヒットする。前田は回り込んでの左ロー。しかし、岩波が右ハイキック、右ミドルキック、ヒザとどんどん攻め続け、バックキックまで繰り出す。
3R、前ラウンドで優勢に立った岩波が右ミドル、右ストレートで一気に打ち合いに出る! それを回り込みながらかわしていく前田、勢い込んで攻め続ける岩波。しかし、攻めに気をとられすぎたか岩波がバランスを崩したところへ、前田が回り込んでの左ハイキックを連発! 左ハイの連射砲に岩波がグラつく。
岩波の右ハイをかわした直後、前田の鋭い左ハイキックがモロにヒット! 強烈なダウンから立ち上がった岩波だったが、前田の左ローでバランスを崩し、左ストレートから再度の左ハイキックで仰向けにぶっ倒れる! 前田が5連続KO勝利と記録を伸ばした。
▼第7試合 交流戦 63.5kg契約 3分5R
△ソンクラー・センチャイジム(タイ/センチャイ/元BBTV、WPKFフェザー級王者)
ドロー 判定1−1 ※50−48、50−49、50−50
△藤原王子(J-NETWORK/J-NETWORKライト級2位)
1R、サウスポーのソンクラーはゆったりとしたリズムから左ローキック、左ストレートへ繋げて行く。同じくサウスポーの藤原が前へ出てくるとロープを背負い、じっくり見ながら左フックから右フック、藤原が下がるとヒジを飛ばす。
2R、パンチでソンクラーをロープ際へ追い詰めていく藤原。ソンクラーはガッチリとブロックを固めて左ローを蹴る。パンチから必ずローへ繋げるソンクラー。
3R、やはりパンチで前へ出て攻める藤原だが、ソンクラーはブロックを固めてクリーンヒットを許さない。ジャブを突いて逆に藤原をコーナーへ追い詰めての左ロー、さらにヒジ。ソンクラーは手数が少なく、藤原がやや押し気味。
4R、疲れが見えてきたソンクラーは組んでのヒザ蹴りを多用し、藤原はロー&パンチ。ソンクラーはそれをブロックしての左ロー、ジャブからヒジ。藤原をコーナーへ詰めてヒジを振りまくる。
5Rになるとソンクラーは逃げ切りの消極的な戦法。藤原がパンチで攻めようと入ってくると組み付き、前蹴り、ロー、ジャブで距離をとる。藤原は距離を詰めていくも攻めきれず、最後に飛びヒザ蹴りも放ったが、ソンクラーを捕らえることが出来ず。両者とも決め手に欠け、三者三様のドローとなった。
▼第6試合 ライト級ランキング戦 3分5R
○大和哲也(大和/同級3位)
TKO 5R0分35秒 ※タオル投入
●ガンバ黒田(OGUNI/同級5位)
▼第5試合 フェザー級ランキング戦 3分5R
○カピラ前澤(GANGA/同級5位)
判定3−0 ※50−48、50−48、50−47
●国分省吾(OGUNI/同級7位)
▼第4試合 70kg契約 3分5R
○守屋拓郎(町田金子/ミドル級8位)
KO 5R2分22秒 ※右ローキック
●古川照明(インスパイヤードモーション/ウェルター級3位)
▼第3試合 ライト級 3分3R
○牛若丸(拳友会)
判定3−0 ※30−29、30−29、30−28
●とし(OGUNI)
▼第2試合 ヘビー級 3分3R
○敏センチャイジム(センチャイムエタイ)
判定3−0 ※30−29、30−28、30−29
●篤志(ブリザード)
▼第1試合 ライト級 3分3R
○畠山隼人(E.S.G)
判定3−0 ※三者とも30−28
●鷹緋杜(GANGA)
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