NPO法人全世界空手道連盟 新極真会
「第7回福岡県空手道選手権大会」
2008年8月31日(日)福岡国際センター
「最強最後の県大会」
そう言っても過言ではないだろう。今年の福岡県大会はとにかくすごいメンツが集まった。
今年のウエイト制軽量級を制した山野翔平、一昨年前の軽量級王者・菊原嘉章、第1・3回ワールドカップ軽量級王者・谷川光、第20回ウエイト制中量級王者・森健太、そして第6回世界王者・塚本徳臣とチャンピオン経験者が5人も顔を揃えた。
彼ら以外にも青柳茂瑠ら地元福岡勢も一線級の選手のほとんどが出場した。また変わった出場者としては、極真会館(松井章圭館長)のウエイト制大会で中量級ベスト8に入賞したことがある長野義徳が、兵庫山田道場の所属として出場。
かくしてミニ全日本大会とも言えるトーナメントが幕を開けた。試合を順に振り返ってみよう。
<1回戦>
強豪同士があまり当たらない1回戦では長野と内藤貴継の闘いに注目が集まった。たがいに高校生から一般部で活躍し、また同じ21歳ということもあって若手のワンマッチ的な試合となった。互いに積極的に技を出し合ったが決め手に欠け、体重判定で長野が勝ち上がった。
<2回戦>
ここで大番狂わせが連発した。第23回ウエイト制大会優勝の菊原が徳田則一と対戦したが、徳田の強烈な突きを主体にした組手に菊原はなかなかペースを掴むことができない。試合は体重判定を経て最終延長になだれ込んだ。本来、最終延長での消耗合戦こそ菊原が最も得意とする場面なのだが、ここでも徳田の猛攻を跳ね返すことができずマスト判定で徳田が勝ち上がった。
もうひとつの大番狂わせは谷川VS緑強志(緑健児代表の長男)の試合で起きた。緑は1回戦で試合開始わずか数十秒で飛びヒザ蹴りを決めて一本勝ちし、成長の片鱗を見せたが、その進化は谷川戦でさらなる真価を発揮した。
飛び込むような前蹴り、強い突き、上段ヒザ蹴りなどを谷川に臆することなく叩き込んでペースを掴んだ。谷川もクリーンヒットこそ許さなかったが、反撃するまでにいたらず。まさかの試合展開で19歳の新鋭が世界王者を喰ってしまった。
2回戦に勝ち進んだ長野は高野優希と対戦した。内藤戦と同じく互いに果敢に攻め合ったものの決め手に欠け、体重判定を経て最終延長へ。この最終延長に来て長野に失速が見られ、自分のペースをキープしたまま攻めきった高野に軍配が上がった。
シードの塚本はこの2回戦から登場。地元福岡の新鋭・池田真哉と対戦した。池田は塚本の大技を喰らわないように慎重に試合を進める。本戦後半、塚本が左上段廻し蹴りを放った。池田はスウェーバックでかわしたかに見えたが、リーチの長い塚本の蹴りは池田の頭部を完全に捉えていた。池田はその場に崩れ、塚本の一本勝ちになった。
<3回戦>
山野は3回戦で同門の竹島雅之と対戦した。竹島は緑代表の内弟子の若手として最近実力を伸ばし、昨年の関西大会でも軽量級準優勝。今大会では2回戦で同じく内弟子の若手である武内兼吾を破って勝ち上がってきた。その竹島も上り調子の山野を崩すことはできず、山野のワンサイドで試合は進みチャンピオンの貫禄を見せつけた。
菊原を破った徳田と谷川を破った緑の波乱組が3回戦で対決。谷川戦では序盤に勢いでペースをつかみ一気に押し切った緑だが、徳田に対しては最後まで流れを掴むことができなかった。逆に徳田は自分のペースを守って闘い、本戦で勝利した。
森健太は3回戦で思わぬ苦戦を強いられることとなった。森は長野を打ち破った高野と対戦したが、高野のバランスのいい組手に対し、森は地元大会でのプレッシャーのためか持ち前のアグレッシブさが鳴りを潜めてしまっている。むしろ積極性で高野の動きが上回っている場面もあった。試合は最終延長になだれ込み、最後にエンジンのかかったラッシュが決め手となり、森は辛くも準決勝に駒を進めた。
今大会中最も盛り上がった、3回戦最後の試合である塚本VS青蛯フ闘い。この両者は5月のウエイト制で闘ったばかり。この時は青蛯フ脅威の耐久力が塚本のあらゆる技を耐えきって場内を驚愕させたが、その打たれ強さは今回も健在。
塚本の必殺技であるヒザ蹴りをアゴや顔面に5、6発貰ってもなに喰わぬ顔で反撃。塚本の中段下段の攻撃はまったく効いていなかった。本戦はなんと青蛯ノ1-0で旗が挙がる。
なおも攻撃を受けきる青蛯ノ塚本は左上段廻し蹴りを頭部に叩き込む! この一撃で青蛯ヘ体ごと横に倒され、技ありとなった。しかし、青蛯ヘ一瞬で立ち上がると再び塚本に反撃を開始。塚本は冷静に技を捌いて再び左上段廻し蹴りを決め、巻き込むように青蛯倒し、合わせ一本となった。
<準決勝>
準決勝第1試合は山野と徳田の同門対決。好調同士の対決となったが、やはり山野が頭ひとつ抜けていた。徳田も粘って本戦を2-0に抑えたが、延長では山野の強さがより際立つ。延長4-0で山野が徳田を下し、決勝へと駒を進めた。
準決勝第2試合は塚本VS森。塚本が試合後に「一番疲れたのは青蜷。一番攻めにくかったのは森戦」と語ったように、森戦では上段ヒザ蹴りなど大技を出す場面が少なかった。
5月に対戦したばかりの両者。「健太に技を読まれている気がして大技を出せなかった」と塚本が語った通り、森自身も前戦と比べ冷静に闘うことができたと試合後に振り返っている。しかし冷静になった分、塚本の読みの動きに技を出す前に潰されてしまったという。
塚本は前蹴りや内廻し蹴りで攻め、森は下段中段の廻し蹴りで対抗した。試合は最終延長になだれ込む接戦となり、最後は4-1で塚本が制した。
<決勝戦>
決勝の塚本VS山野は実に身長差20cm、体重差18kgという体格差の中で行われた。塚本は上段ヒザや胴廻しなどの上段系の技を振りながら、的確に中段ヒザを決めていく。結果的には本戦4-0で塚本が勝利したが、山野は体格差のハンデにひるむことなく、正面から塚本と打ち合った。ウエイト制王者となってわずか3ヶ月だが、山野には王者の風格が備わりつつある印象を受けた。
原点回帰か? さらなる進化か?
変貌する塚本の組手
塚本の組手が3ヶ月前のウエイト制から大きく変貌していた。ここ数年の塚本はヴァレリーの影響を受けて下段カカト蹴り、いわゆるヴァレリーキックにこだわり、これを軸に中段ヒザ、上段ヒザを決めに使っていた。
今回の塚本はヴァレリーキックをほとんど使うことなく、前蹴りを多用し、中段ヒザや内廻し蹴りで崩して上段ヒザ蹴りや左上段廻し蹴りを決め技に使っていた。このスタイルは塚本が第6回世界大会から33連勝を重ねていた時代の組手に酷似している。
また減らしていた体重も数kgではあるが増加していた。原点回帰を思わせたが、塚本はこの組手の変化は新たな発見が要因だっと語る。「最近使っていなかった上段廻し蹴りですが、蹴り方に新しい発見というか気づいたことがあったので試してみました」
ヴァレリーキックをあまり使わなかった点に関しては、「あの蹴りを封印したわけではなく、間合いに応じた攻撃を心がけた結果です。まず前蹴りを丁寧に蹴って攻めていこうと考えました。あとこの間ヴァレリーに会った時に、もっと足を使った方がいいというアドバイスをもらったので、それを心がけました」と語った。
増量した体重に関しても塚本なりの考えがあった。「最近は『鍛錬』の『練』の方にばかり目がいっていたので技の精度や体の柔らかさにとらわれて『鍛』がなかった。やはり体を鍛えるということは基本で重要なことなのでこれを研究して、単なるウエイトトレーニングではなく、空手式のウエイトトレーニングというか鍛錬法を研究して今やっています。全日本大会まで続ければもっと体にカチッとはまってくるんじゃないかと思います」
ワールドカップの最終選抜戦となる全日本大会まであと2ヶ月。さらに変化した塚本が見られることを期待したい。
RESULT
優 勝 塚本徳臣(世田谷杉並支部)
準優勝 山野翔平(福岡支部)
第3位 徳田則一(福岡支部)
第4位 森健太(福岡支部)
第5位 緑強志(福岡支部)
第6位 竹島雅之(福岡支部)
第7位 高野優希(世田谷杉並支部)
第8位 青柳茂瑠(福岡支部)
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