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            選考理由 
              1、「ルンピニースタジアム認定フェザー級3位&2008年ムエタイMVPのウティデートにKO勝ちの快挙」 
              2、「結果だけでなく試合内容も年間最高試合候補」 
              3、「現在7連勝、前回もムエタイ現役ランカーにKO勝ち。打倒ムエタイに大きな期待がかかる」 
              「歴史的快挙!梅野源治が激闘の末、ムエタイMVPをヒジ打ちで完全KO」の試合レポート 
             
            
              
                PROFILE 
                梅野源治(うめの・げんじ) 
                1988年12月13日、東京都出身 
                身長178cm、体重57.15kg 
                2007年11月11日、M-1でプロデビュー 
                2008年12月21日、ラジャダムナンスタジアムで2RKO勝ち 
                2010年3月21日、ノラシンに敗れ無敗記録が9でストップ 
                同年5月8日、ルンピニースタジアムで2RKO勝ち 
                同年7月19日、裕・センチャイジムに判定勝ちでWPMFスーパーバンタム級王座に就く 
                同年9月26日、エッガラートKBAに判定勝ちでWBCムエタイ日本同級王座に就く 
                同年11月14日、コムパヤック・ウィラサクレックに判定勝ちでM-1フェザー級王座に就く 
                2011年7月18日、ラジャダムナンランカーのカイチョンをローで3RKO 
                同年9月11日、ムエタイ2008年MVP&ルンピニーランカーのウティデートをヒジで4RKO 
                戦績:18戦17勝(8KO)1敗 
                PHOENIX所属 
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            ■タイ人に負ける日本人は、ムエタイのことが何も分かってない 
             その瞬間、ディファ有明に破裂音のような歓声が「ワッ!」と沸き起こった。日本キックボクシング界に彗星のように突如として現れた22歳のホープが、ムエタイ現役ランカーをヒジ打ちでマットに沈めたのだ。 
              日本キックボクシング界永遠のテーマである打倒ムエタイ。偉大なる先人たちがこのテーマに挑み、ムエタイの牙城を崩すことに成功した例もあるが、多くのキックボクサーたちは500年の歴史を誇る立ち技最強格闘技ムエタイの高く厚い壁に跳ね返されてきた。その壁を“ジャパニーズ・ムエタイ・スター”梅野源治が切り崩すことに成功したのである。 
            「ウティデートは何百戦もやっているから、相手が何をしたら嫌がるかも分かっていて、俺の攻撃が効いても一切顔に出さないし、スピードも速くて試合の流れの作り方も上手かった。1と2Rは出来るだけ省エネで戦って、一番差がつきやすい3Rからスタミナを一気に使い始めるんです。俺に押され始めてもラスト20秒くらいでちょっと前に出て攻撃して、ポイントをイーブンに戻すとか、スタミナの使い方や試合の進め方とかが上手かったですね。あと、技のチョイスも巧みでした。俺がパンチで突っ込んで行ったら前蹴り、また前蹴りが来るかなと警戒してパンチで突っ込んで行ったら今度はヒジがカウンターで来るという」 
             ウティデートは、現在ムエタイ界の頂点に君臨する帝王センチャイ・ソー・キングスターに勝って2008年ムエタイ最優秀選手(MVP)に選ばれた名選手。タイのムエタイを見る層なら誰もがその名を知っているスーパースターだ。そのテクニシャンを相手に、梅野はどう戦ったのか。 
             「奥足へのローキックが効いたんです。でも、タイ人の強い選手は絶対に下がらないんですよ。逆に効いたらどんどん前へ出てきて、こっちが蹴れないようにしてしまう。そこで焦ってしまってはダメなんですよ。ローに合わせてパンチ、ローをキャッチしてパンチを出すようになってきたので“これは効いている証拠だな”と思いました。だから俺も下がらないで、すぐに攻撃を返したんです。 
             タイ人に負ける日本人は、ムエタイのことが何も分かってないんですよ。日本人みたいに1Rと2Rにガンガン行っても基本的に差はつかない。向こうもピンピンしているし、テクニックで差がつかないようにしてきて、省エネでスタミナを温存しているんです。でも、日本人は早く倒そうとして最初から100%で行くから、絶対に3Rからスタミナの差が出てくる。タイ人はそこから圧力を強めてきてポイントを取り、5Rは逃げ切るんです。それが俺は分かっているから、1Rと2Rはスタミナを使わないけれど、ちゃんと強く大きく当てる時は100%の力を使って当てます。当たらない攻撃を100%で打ってもただ疲れるだけで無駄でしょう? みんな無駄な攻撃が多すぎるんですよ」 
            ■コーチ陣に対しての絶対的な信頼感が梅野を強くした 
             梅野の強さの秘密をひとつ挙げるとすれば、コーチ陣に対しての絶対的な信頼感がある。加藤督朗PHOENIXジム会長を筆頭に、ウアンとビンという2人のタイ人トレーナーが梅野を作り上げた。 
             「タイ人トレーナーとマススパーをやっても、ミドルキックが速すぎてスネブロックが間に合わないんです。それじゃあ今度は腕で受けながらパンチを打っても、前蹴りをやられて当たらない。つまり、ただガンガン前へ行っても当たらないんですよ。だったら、勝つためには反応を良くするしかないし、テクニックを覚えるしかないと思いました。俺はただ、トレーナーの言う通りに練習しているだけで、特別なことはしていません。アドバイスをしっかり聞いて、自分で理解するだけです。 
             例えばミドルを蹴った時に『もっと速く蹴れ』と言われるんです。でも、俺は全力で蹴ってるつもりなんですよ。これ以上速く蹴るなんて出来るのかと思うんですけれど、やらないと強くなれないのは分かる。遅い、弱いって言われてイライラすることもあります(笑)。しかし、実際にタイ人トレーナー2人は凄く速く蹴るんですよね。どうしてそんなに速いんだって聞くと、自分たちも小さい頃は弱かったし、遅かったと言うんです。それじゃあ、俺も毎日練習して強くなるしかないなって思いました」 
              梅野は初期の段階で2人のタイ人トレーナーから「全ての技が出来ないと勝てない。相手によって使い分けろ」という教えを受けた。 
            「日本人だったら首相撲が出来ない、何もテクニックを知らないから圧倒的に勝てるって言われたんです。だったら、俺は首相撲を使って日本人に勝とうと思ったんですよ。ほとんどの選手が、自分はパンチが得意だからパンチだけしか練習しないとか、あれが苦手だこれが出来ないと言って自分の得意なことばかり練習するでしょう。それじゃあ勝てないですよ。それは勝てない練習です。得意なことは強くて当たり前なんです。それを伸ばしつつ、ほかの部分も伸ばして行かないと。 
               
                俺も始めたばかりの頃はパンチが得意で、蹴りも首相撲も苦手でした。でも、蹴られたらカット出来ないし、組まれたらどうしたらいいかも分からない。だから全部の技を使えないと勝てないと気付きました。ズバ抜けたものを持っていることは必要だと思いますが、そのズバ抜けたもので勝てなかったら、ほかのもので勝負するしかないでしょう。それが1個か2個しかないから、日本人は何でも出来るタイ人に勝てないんですよ」 
             今回のウティデート戦のオファーが来た時、不安になった梅野は2人のタイ人トレーナーに相談した。すると2人は口をそろえて「大丈夫。今のお前ならウティデートに勝てる」と答えた。その言葉を聞いて梅野は「2人が大丈夫って言うなら大丈夫なんだな。俺は勝てる」と信じきったという。強い信頼感があってこそのエピソードだ。 
            ■今後の梅野はさらなる高みを目指す 
             フェザー級の現役ランカー、しかもタイのスーパースターに勝ったことは、本場タイの新聞でも大きく報じられた。これによって梅野の名はタイでも知られるようになり、次に梅野と戦うタイ人はさらに警戒してくるだろう。今後、さらに厳しい戦いが待っているであろう、梅野の今後とはーー。 
             「タイのプロモーターの方から、ラジャダムナンスタジアム、WPMF、WMCのタイトルマッチをやらせてくれるという話が来ました。俺は会長とウアンとビンが決めたことに“やる”と返事をするだけです。タイトルマッチをやれと言われればやるし、ランカーとやれと言われればやるだけですね。 
               
               とにかくタイ人の強いヤツとやった方が、みんな盛り上がると思う。俺の強さを分からせるためには、タイ人の強いヤツとやるのがちょうどいいですね。弱いヤツとやっても自分が伸びないし、勝っても当たり前じゃないですか。日本人とやると、ウアンとビンが『お前は相手を選んでいるのか? そんなにラクをして勝ちたいのか』って言われるから嫌なんですよ(笑)。 
               
               俺が目指しているのはあくまでもルンピニーとラジャダムナンのチャンピオン。たまたま運よくKOしてチャンピオンになった、なんて言うのは求めていません。実力で獲りたいから、タイ人が本気になって来てくれるのは大歓迎ですね。 
             批判する人は何をしても批判するじゃないですか。例えば今回にしても、ウティデートは練習してないんじゃないかとか、どうせナメていたんだろうとか。今度タイトルマッチに挑戦する石井宏樹選手にしても、あれはライト級より重いので層が薄いからタイトルマッチが出来るんじゃないかとか、協会の力が強いからとか言ってるヤツらがいますよね。でも、ラジャのタイトルを獲ったら本当に凄いことですよ。 
               
                それでもねたむヤツはねたむし、認めないヤツは認めない。そういうヤツらには言わせておけばいいんですよ。分かっている人は分かっているし、認める人は認めるんです。結果を出すことが全てですからね。それでも認めないって言うのなら、そういうヤツは放っておけばいい。 
             ウアンとビンに言わせると、俺はまだまだバランスが悪いし、蹴りも遅い、首相撲のテクニックもまだまだ全然足りないそうです。あとはキャリア。だから練習して試合をして、また練習するというのを繰り返して行けば、タイの強いレベルのヤツらと戦えるぞって。俺はトレーナーの言う通りにやっていくだけですね。『大丈夫、お前はチャンピオンになれる』と言われているので、大丈夫だって思っています」 
              梅野の次戦は11月13日(日)東京・ディファ有明で開催される『M-1ムエタイチャレンジ RAORAK MUAY FAINAL』にて、WPMF世界スーパーフェザー級タイトルマッチに挑むことが決定した。相手はデッカモン・ヒマライジム(タイ)。7月のカイチョン、9月のウティデート戦に続き、ムエタイの牙城をさらに切り崩すのか、注目される。 
               
                         
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