毎月GBRが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2012年7月のMVPは、7月21日(土・現地時間)スペイン・カナリア諸島で行われた『IT’S SHOWTIME 59』でハヴィエル・エルナンデス(スペイン)に勝利し、日本人初の世界タイトル奪取に成功した山本真弘に決定!(2012年8月4日UP)
PROFILE 山本真弘(やまもと・まさひろ)
1983年5月14日生まれ、長崎県出身
身長165cm、試合体重61kg
学生時代に空手を始め、新極真会が主催する全日本ジュニア空手道選手権大会で2度の優勝。2002年9月6日、全日本キックでプロデビューを果たす。
2005年9月、IKUSA-GP U60トーナメントで優勝。
翌年1月4日には山本元気を下し、全日本フェザー級王座を獲得する。
2007年10月、Kick Returnトーナメントで優勝し、トーナメント2冠を達成。
2009年11月、Krushライト級グランプリ2009でも優勝を果たし、国内で行われた60kgトーナメント3連覇の快挙を成し遂げた。
しかし2010年5月2日、K-1 WORLD MAX −63kgトーナメントで大和哲也に1回戦で敗れ、
同年9月26日のWBCムエタイ日本ライト級王座決定戦でも羅紗陀に、
同年12月11日のIT’S SHOWTIME世界61kg級タイトルマッチでセルジオ・ヴィールセンに敗れ3連敗を喫した。
2011年8月からは4連勝を飾り、2012年7月21日、IT'S SHOWTIME世界61kg級王座を獲得。
戦績54戦38勝(10KO)10敗6分
藤原ジム所属
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選考理由
1、「日本人初のIT’S SHOWTIME世界タイトルを獲得」
2、「対戦相手の地元スペインという不利な状況で勝利」
3、「日本人選手が海外で苦戦が強いられている中、明るい話題を提供した」
選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技、YAMATOの各格闘技雑誌の編集長とGBRの全スタッフ
受賞された山本選手には、ゴールドジムより以下の賞品(マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、GBRより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジム
MVP記念インタビュー
「欧米人に勝つためにフィジカルトレーニングとファイトスタイルを変えました」
■1年7カ月前の屈辱をバネに
ヨーロッパを拠点とする世界最大の立ち技格闘技イベント『IT’S SHOWTIME(イッツ・ショータイム)』。K-1が日本国内での活動を休止して以降、IT’S SHOWTIMEの世界タイトルこそが世界最高峰のタイトルとされていた。しかし、総合格闘技のUFC同様に、IT’S SHOWTIMEの壁は日本人選手の前に大きく立ちはだかり、佐藤嘉洋や日菜太といった日本人トップ選手でさえも勝利をあげることは出来なかったのである。
山本真弘もまた、IT’S SHOWTIMEの壁に一度は弾き返された。2010年12月11日、セルジオ・ヴィールセンの保持するIT'S SHOWTIME世界61kg級タイトルに挑戦したが、ヒザ蹴りでダウンを奪われ、3Rにヒザ蹴りを顔面にもらって流血、出血多量でドクターストップ負けを喫した。
60kg級のトーナメントを3度制し、日本60kg級最強の男という称号をほしいままにしていた山本が敗れたことは、日本格闘技界に大きな衝撃を与えた。やはり、日本は海外に大きく引き離されてしまったのか……。
だが、2012年7月21日、IT'S SHOWTIME世界61kg級タイトルに再び挑んだ山本は、新たに王者となっていたハヴィエル・エルナンデス(スペイン)を破り、日本人初のIT'S SHOWTIME世界タイトルを奪取する快挙を達成したのである。
「やっと勝つことが出来ました」と山本は試合を振り返る。「予想通りでしたね。相手の試合映像を見てタフなことは分かっていたので、きつい試合になることは予想していましたし、実際きつい試合でした」。
今回の試合はエルナンデスの地元スペインで行われた。ダウンを奪わなければ勝てない、山本は自分にそう言い聞かせていたという。
「倒すことは意識していたんですが、途中で“これは倒れないな”と思いました。前蹴りが効いていて“うっ”と相手のうめき声が聞こえたくらいだったんですが、全然倒れなくて。厳しかったですね。試合が日本で行われていたら、相手は諦めて倒れていただろうと思います。地元の選手は強いと聞いていたんですが、その通りでした。日本に来る外国人よりも、地元の外国人の方が強いと改めて知りましたね。5Rにダウンを奪った飛びヒザ蹴りはずっと練習していたものだったので、無意識に出せました。あのダウンがなかったら、ドローか負けになっていたでしょう。それほどの接戦でした」。
■試合前のとんでもないアクシデント、そして今後に関して衝撃発言!
2度目の挑戦で勝てた理由、それは「今回は一番練習しましたし、絶対にベルトを獲ると懸けていました。これで負けたらもうあとがないと自分を追い込んでいた」からだと山本は言う。
ヴィールセンに敗れたことで、山本は欧米人とのフィジカルの差を痛感した。「初めてタイ人以外の外国人と対戦して、同じ体重でも身体の圧力が違うと思いました。元々、装備しているものが全然違うんです。日本人なら61kgだろうが63kgだろうが対して変わりませんが、欧米人は明らかに違う。そこでウェイトトレーニングを本格的に始めました。今まではほとんどやっていなかったんです。全身を満遍なくウェイトで鍛え、そのあとはダッシュと走り込みをやってスピードを落とさないようにしました。そこでガラッと変わりましたね」。
さらに、ファイトスタイルもチェンジした。山本と言えば高度なディフェンステクニックを駆使して相手を空振りさせるアウトボクシングが持ち味だったが、アグレッシブに攻める要素を増やしたのだ。
「今までは相手の攻撃をよけていたんですが、よけると返しの攻撃が遅くなるんですね。そこですぐ返せるようにブロッキング(腕などで相手の攻撃を受ける)を増やしたんです。受けてすぐに攻撃を返すことを意識して、より攻撃的なスタイルにしました。最初はチグハグだったんですが、TURBO戦(2012年3月25日)から自分の中でしっくりとハマるようになったんです」
今回の試合前にはとんでもないアクシデントもあった。日本からバルセロナへ飛び、ホテルで一泊する予定だったのだが、ホテルからの迎えが来なかったため空港で一夜を明かしたのだという。「計量の前々日で、空港の中は寒かったから風邪をひくんじゃないかと心配でした。でも、英語もスペイン語も喋れないので、諦めてバッグを抱えて空港のベンチで寝ました」。そんなアクシデントに見舞われながらも、現地でコンディションをキープ。試合中も全く緊張しなかったという。
日本人初のIT'S SHOWTIME世界タイトルを奪取し、世界の頂点に立った山本。しかし、今後のことを聞くと予想外の答えが返って来た。
「これから先は、ヴィールセンとはもう1回やりたいと思っています。自分が変わるきっかけだったので、もう一度やってどう変わったかを確認したいですね。それで“終わり”です。特にもうやりたいことがないので」
でも、と山本は続ける。「IT'S SHOWTIMEがグローリーに買収されたじゃないですか。グローリーが61kg級を設けてくれるのであれば欧米人選手とはやってみたいですね。ガッチガチに攻めてくるような相手となら。そのためにこの1年半やってきましたから。それがないならもういいかなって思っています」
山本が再び世界の舞台に立つことはあるのだろうか。海外で勝てる数少ない日本人選手の一人として、その雄姿をまだ見続けたいとファンも思っているに違いない。
●IT’S SHOWTIME 今大会再放送予定:(2012.7.21 スペイン大会)
8月18日(土)9:00〜 J SPORTS 3
〜最強打撃格闘技〜IT’S SHOWTIME スペシャル 2012最強格闘技最前
8月18日(土)11:00〜J SPORTS 3
関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「日本人初の快挙!山本真弘が世界タイトルを奪取
」
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