毎月GBRが取材した大会の中で、最優秀選手を決める月間MVP。2012年9月のMVPは、9月30日(日)東京・後楽園ホールで行われた『プロフェッショナル修斗公式戦 2012年 第10戦』で宇野薫(UCS)と対戦、注目の日本人対決を制して超満員の観衆を大いに沸かせた石渡伸太郎に決定!(2012年10月9日UP)
PROFILE
石渡伸太郎(いしわたり・しんたろう)
1985年2月21日、東京都出身
身長169cm、試合体重65kg
2006年3月3日、修斗でプロデビュー
2009年1月18日、「修斗伝承 05 -ROAD TO 20th ANNIVERSARY-」で小見川道大とドロー
2009年3月20日、戦極フェザー級グランプリ2009一回戦でジョン・チャンソン(韓国)に一本負け
2010年8月22日、SRCバンタム級ASIAトーナメント2010にシード扱いで二回戦から出場、フロントチョークでイ・ギルウ(韓国)から一本勝ち
2010年10月30日、SRCバンタム級ASIAトーナメント2010準々決勝で中原太陽(和術慧舟會GODS)に判定負け
2011年8月7日、パンクラスバンタム級王座次期挑戦者決定戦で手塚基伸に勝利
2011年12月3日、バンタム級キング・オブ・パンクラス タイトルマッチで井上学(U.W.F.スネークピットジャパン)を破り、第2代王者に
2012年3月11日、パンクラス バンタム級 キング オブ パンクラス タイトルマッチで赤井太志朗(NOVA UNIAO JAPAN)から勝利し初防衛
2012年9月30日、修斗で宇野薫に判定勝ち
CAVE所属
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選考理由
1、「修斗で宇野薫に勝利」
2、「超満員の観衆を沸かせる名勝負だった」
3、「国内、海外での活躍も期待される」
選考委員
Fight&Life、ゴング格闘技、YAMATOの各格闘技雑誌の編集長とGBRの全スタッフ
受賞された寺戸選手には、ゴールドジムより以下の賞品(プロカルシウム 300粒 1個、マルチビタミン&ミネラル 1個、アルティメットリカバリー ブラックマカ&テストフェン+α 240粒 1個)と、GBRより記念の盾が贈られます。
贈呈:ゴールドジム
MVP記念インタビュー
「あの歓声を聞きながら『格闘家をやっていて良かったな〜』って思いましたよ」
■「いつも通りの試合が出来ると確信した」その重要ポイントとは!?
大型で非常に強い台風17号がちょうど関東に上陸したこの日、2人の男が超満員で膨れた後楽園ホールのリング上に立つと割れんばかりの歓声で会場は揺れた。その2人の男とは、宇野薫と石渡伸太郎。2004年3月22日の川尻達也戦以来、約8年6カ月ぶりの修斗参戦となる宇野vs現役キング・オブ・パンクラシストの石渡として注目を集めたこの一戦。文字通りの激闘を制したのは石渡だった。
22戦目の石渡に対し、宇野は47戦目と石渡の倍以上の戦績を持つ。現在は37歳ながらも常にMMA(総合格闘技)のトップ戦線で活躍してきた宇野が試合をリードするかと思われたが、意外にも先に主導権を握ったのは石渡の方だった。
1R、開始早々、宇野の右インローをすかした石渡が距離を詰め打ち合いを呼び込むと、石渡のフックが宇野の顔面を捕える。腰を落とした宇野は片足タックルでダメージをごまかしたが、石渡はしがみつく宇野の頭部に何発も鉄槌を落とし一気に畳み掛けた。
石渡は、勝負のポイントがこの序盤にあった、と試合を振り返る。「1Rのゴングが鳴って、10秒ぐらいで自分が距離感を掴んだのでこれはいけるなと思いました。すぐの打撃戦で宇野選手が腰を落とす場面がありましたが、あれは自分が距離感を掴んだから当てることが出来たんです。いつもはバンタム級(61.2kg)での試合なので対戦相手はそんなに大きくはありません。自分の方が攻撃する距離感が長いという自信があるんですけど、宇野選手は70kg級でやっていた選手。体格、圧力もあるだけに距離感はどうかなと思っていたのですが、いつもと変わりなく距離感を作ることが出来たので、いつも通りの試合が出来ると確信しました」
宇野を相手に、数秒で自分の距離感を作り試合を組み立てる。まるで達人のようだが、「それは誰しもが出来るものなので(笑)。僕は常に距離感に重点を置いていて、距離感を考えるようになってからは負けていないですね(2011年5月3日の赤井太志朗戦以降、宇野戦までの5戦は負けなし)」
石渡は普段パンクラス・バンタム級(61.2kg以下)で戦っており、宇野はDREAMフェザー級(65kg以下)のため体重ハンディがある。今回は修斗ライト級(65kg以下)での対戦であったために、体格差は試合にどこまで影響したのだろか。
「いつもより重たいウェイトで試合に臨みましたが、別に体が重くて蹴りが出ないとかの影響はありませんでした。ただ、3Rに僕がスタミナ切れをしたんですけど、その原因が体格差だったのかなと。今まで試合中にフラフラしたことはあったけれど、最近では久しぶりに相当疲れましたね」
宇野は、寝技で組んだときのバックに回るプレッシャーが凄く、石渡が上になっても抑え切れないなど、宇野独特のうまさを感じたという。「いつもだったら寝かして休めばいいんですけど(笑)。寝かすことまでは出来ても抑え込む自信はなかったのであまりタックルにいかず打撃戦が多くなりましたね」と試合展開を分析する。
石渡がジャーマンスープレックスを出せば、宇野も必殺のスリーパーで反撃。打ち合いでもお互いに1歩も譲らないエキサイティングかつスピーディーな展開に会場の大歓声が止むことはなかった。
「歓声はずっと聞こえていました。だから、もっと盛り上げようとバスター(=スープレックス)を仕掛けたりして、それで疲れた部分もあった。格闘技の聖地・後楽園ホールで超満員、それも自分がプロデビューして最初にプロのキャリアを積んだ修斗のリングで、相手はしかも宇野選手……色んな要素がある中で、あの歓声を聞きながら『格闘家をやっていて良かったな〜』って思いましたよ」
■二団体のチャンピオンを倒してこの階級では石渡が一番強いと言われたい
石渡が所属するCAVEの廣田端人がSTRIKEFORCEに上がるなど、日本のトップ選手が海外に戦いの場を求めているが、石渡の気になる今後とは。
「次のことは何も考えていないですけど、宇野薫という大きな壁を乗り越えたことで自信になりましたし、ステップアップしたことは間違いありません。今すぐに海外に行くという気持ちはあまりないので、まずは国内。試合後、パンクラスの酒井正和代表がリング上で『今後はバチバチやっていきたい』と他団体との対抗戦を掲げた通り、これからパンクラスは色んな団体との絡みが出てくると思います。強い選手がまだまだいることは知っているし、修斗、DFEEPのチャンピオンを倒してこの階級では石渡が一番強いと言われたい」
今後パンクラスのタイトル防衛戦も予定されており、今のところパンクラス・バンタム級1位の手塚基伸が挑戦者として有力だろう。
「パンクラスの防衛戦はあまりやりたくないです(苦笑)。自分が一度勝っているし、その後の実績を見ても開きがあって、何でやらないといけないんだと思ってしまいます。実際にやれば接戦にはなると思いますけどね」
日本最強を目標に掲げた石渡の次なる獲物は果たして誰か。MMAのレジェンド越えを果たし大きく成長した石渡が、台風のごとく今後の日本のMMAをかき回すのか。
関連リンク
・ゴールドジム Web site
・試合レポート「山上が一本勝ちで初防衛!石渡は大激闘の末に宇野を破る
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