10月2〜4日(現地時間)ハンガリー・ブダペストで開催された極真館ハンガリー支部/総本部監修『第2回全世界ウェイト制空手道選手権大会』。組織や派閥を超えて全ての極真を名乗る団体に門戸を広げた形で開催された同大会を終え、帰国した極真館・盧山初雄館長。11月3日に開催された『第7回オープントーナメント全日本空手道選手権大会』の試合終了後、世界大会の総括を述べた。
盧山初雄(ろうやま・はつお)
1948年3月31日、埼玉県出身
1963年、極真会館の前身である大山道場に入門
下段廻し蹴りを得意としローキックの盧山と恐れられた
第5回全日本空手道選手権優勝、第6回3位
第1回全世界空手道選手権準優勝
極真空手道連盟極真館館長 |
■日本は今のようなバラバラの状況ではいけない
ーー第7回全日本大会総括で盧山初雄館長は「日本の実力は世界に劣っている。世界は完全に日本を凌駕している」と断言し、「今日は日本人選手がかろうじて優勝しましたが、勝って兜の緒を締めよの言葉どおり、日本の選手は世界に追いつけるように死にもの狂いで稽古に励んで欲しい」と警鐘を鳴らしましたね。
「彼(優勝した藤井脩祐)は世界大会に出て、実際に世界の強豪と対戦して勝てなかったんですから。それは彼が一番よく分かっているはずです。ただ、彼が全日本大会で日本が優勝しなければいけないという使命感のみで頑張ってくれたことは充分に評価します。と言うのは彼は右手の靱帯が切れていまして、突きが出来ない状況だったんですよ。大会が終わったら手術をすると言っていました。そういうコンディションの中で優勝できたというのは彼の精神力。これは素直に評価したい。
しかし、実力は世界に到底及ばないことは彼自身も分かっているし、我々もそれは充分に認識しているつもりでいますから、これを皮切りにもっともっと頑張ってもらいたい。特に再来年は無差別の世界大会をハンガリーでやりますから、その時に日の丸が揚がるように……あと2年ありますから。
次の世界大会へ向けては極真だけでなく、他のいろんな流派の組織・団体を問わず参加していただいて切磋琢磨していただきたい。本当に私はそれを望んでいます。それに我々が一役買うことが出来ればいいと思っています。
それともう一つは、数年前からロシアでは統一極真の大会を開いているんです。ハンガリーもそうでしたが、日本が世界をコントロールできないような状況がすでに生じています。そこで私は日本がもっともっと求心力を持ってもらいたいと思うし、日本は日本で今のようなバラバラの状況ではいけないんじゃないかと。世界は半分日本を見捨てているようなものなんですよ。世界は世界でその流れが出来つつありますから。その中で我々はもう一度、日本の極真の各団体が完全に一つになれるわけはないですけれども、出来ればハンガリーでやったような大会を開催できればいいなと私は常に思っています。
そのためには時間がかかるし、いきなり“私たちがやるからみんな集まれ!”というわけにはいきません。しかし、割れたコップは元に戻らなくても、少なくとも接着剤で体裁だけは取り繕うことが出来るんじゃないかなと私は思っているんですね。そのための準備段階、いわゆる信頼関係を取り戻すためにはある程度時間がかかるかもしれませんけれど、ハンガリーで出来てロシアで出来て、日本で出来ないわけがないと思っています。
一石を投じるために私自身が汗を流して努力をさせていただこうかなと思っています。日本がすでに世界から置いてけぼりを食っているんですよ。そういうことに日本はもっともっと気付いてもらいたいと思うし、私自身もハンガリーで痛切に感じました。残念なことですけれどもね。日本はすでに実力でも世界に及ばないし、日本がいつまでも空手母国だとふんぞり返っている時代ではないんですよ。
日本が世界に対して求心力を持つためには、やはり日本が一つになり、世界に発信できるようなものを持たなくてはならない。実力では負けても精神力であるとか、武道の精神であるとか、本当のものを世界は貪欲に求めていますから。実力で日本は勝てないまでも、日本に何を求めているか。相手を尊敬する心であるとか、武道の精神であるとか、そういうものを日本はこれから世界に教えていかないといけないし、出来れば日本の選手が世界の選手以上の実力を持ってもらいたい。それを心から望んでいます」
■フルコンタクト棒術の大会も開催
ーー来年の極真館の展開としてはどんなことを考えていますか?
「来年はまずルクセンブルグでヨーロッパ大会が行われます。再来年にはハンガリーで無差別の世界大会が行われます。極真館としては今のこの状態で粛々とやっていかなければいけないかなと思っています。派手なパフォーマンスは考えていません。ただ日々努力。その積み重ねだと思っていますから、これからも真面目に空手に取り組む姿勢は崩さないつもりです」
ーー春のウェイト制大会は真剣勝負ルールで行うのですか?
「そうです。ただ、代々木第二体育館は工事の都合で来年は使えないんです。本当は6月か7月にやりたかったんですが、来年は4月か5月の始めに埼玉県の会場でやりたいと思っています。それにはロシアのセルゲイ・オシポフ(ロシアを代表する空手選手。2005年極真館第1回全世界ウェイト制重量級優勝。2002年の極真会館パリ国際大会の決勝戦ではエヴェルトン・テイシェイラに上段廻し蹴りで一本勝ちしている)が出るということをロシアでは発表しているので、我々もぜひ出てもらいたいと思います」
ーーえっ、あのオシポフが顔面突きありのルールでやるんですか!?
「はい。ぜひ出たいとのことなので、実現することを我々も望んでいます。今回の世界大会に行きまして、スティーブ・アーニールはもちろんのこと、ジョン・ブルミンやいろんな団体の代表と会いましたけれども、私に対してとても期待をかけていただいているんです。それはとてもありがたいことですし、それ以上の使命を感じましたね。やはり彼らは組織を一つにしてもらいたい、そして強いもの、素晴らしいものを作ってもらいたいと望んでいます。
ジョン・ブルミンは極真館が顔面ありのルールで試合を始めたことに関して、とてもよい顔をしていたんですよ。素晴らしいと。彼も選手を送りたいという話をしていました。我々はショーアップされたプロの格闘技団体ではなく、武道のルールで相手を尊敬する気持ちを持つ。その中で真の強さを決めたいという気持ちでいます」
ーー昨年、模範試合を行ったフルコンタクト棒術の大会も開催すると聞きました。
「もちろんやります。世界に普及させるためには型だけではなく、競技としてやらなければいけないと思っていますから。その中でいいものが出来上がってくるでしょう。乞うご期待ですね」
(2009年11月3日、第7回オープントーナメント全日本空手道選手権大会終了後に収録)
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