――初めて小林聡GMとじっくり話す機会があったそうですが、どんなことを話されたんですか?
「僕に言ってくれた言葉で嬉しかったのは『石川くんは全日本キックに必要な人間だよ』っていう言葉でした。もちろん前後の会話があってですけど、そのタイミングがすごくボクに染みるタイミングで言ってくれて。あと『オレは藤原ジムの卒業生みたいなもんだから、前田(尚紀)とか(山本)真弘のことは心の底では応援するけども、あいつらのセコンドにつくことも、ミットを持ったりすることもこれからはない』という話をしていました。
普通ならジムを辞めても後輩のセコンドについたりが当たり前だけど、小林さんは『それはオレのやり方じゃない』って言っていましたね。『普段一緒に練習していないのに、セコンドにつく権利はない』って。それは正論なんですけど、それが正論じゃないOBもいるじゃないですか。どちらが正しいではなく、それが小林さんのスタイルなんだなぁと思いました。
だから『藤原ジム出身だけど、オレは石川くんが必要だったらいろいろ応援するような力の貸し方をしてあげるから相談してこいよ』って言ってくれたんですよね」
――それはどういうシチュエーションだったんですか?
「ターザン山本!さんの誕生日会で、本当に初めてゆっくりといろいろお話をしたんです。帰りのタクシーで初めて2人きりになったんですよ。そのときに小林さんが、少しずつ少しずつ不器用な言葉で言ってくれたんで。『ああ、本当に言ってくれてるんだろうな』と思って。すごく嬉しかったんです」
■ラジャを見に行って「つまんねぇな」って
――「ラジャで試合をすることに不安はまったくない。初タイ、初ラジャ、まったく不安はありません」と記者会見では言っていましたが、幻想などは持っていないんですか?
「幻想を作り始めたら終わりだと思うんですよね、ボクの場合。作るとどんどん大きく作っちゃうんで。だからIKUSA GPに行ったときと同じように、遠足だと思ってます。勝負に行くための遠足ですけどね、もちろん」
――タイにプライベートで行ったことは?
「プライベートでラジャダムナンには2回行ったことがあるんですけど、ムエタイを見にというよりは、友だちと一緒に行ったんでスッゴクつまんなかったんですよ(笑)。真剣に見たら面白いんだろうけど、友だちと見てたらつまんない。ずーっと抱き合っていて、ワイクーも長くて。それで友だちは飽き始める。そしたら、僕も飽き始める(笑)」
――ああ、観光の一環だったんですね。
「プライベートで行ったときは『つまんねぇなぁ』って思って(笑)。面白くないですよ。だって一興行で10試合くらいあるじゃないですか、ラジャって。“ムエタイ”が好きな人が見たら全部面白いんだろうけど、“格闘技”が好きな人が見たら面白い試合なんて2、3試合ですからね。下手したら1、2試合。面白い試合が無いときだってありますから。
そんなところに幻想を持っちゃ……ダメってわけじゃないけど、現にアレが世界で一番立ち技のレベルが高いわけだから否定はしないけど、そこに幻想は作っちゃいけない、って思っていますね」
――石川選手もヒジ、ヒザを得意としていますが、ムエタイとはまた違うって言ってましたね。
「違いますよね。藤原会長もそう言ってくれました。『日本人独特の』と。それがどういうことかっていうのは、あまり自分でも分からないんですけど。タイ人に習ったヒジ、ヒザじゃなくて、なんとな〜く昔、ウチのジムにいたタイかぶれのおじさんに教わって。『ああ、こういうことなんだあ』と思って。そうしたら何となく上手になっていったって感じなんですよ。
それで自分のタイミングとか距離感がつかめるようになって。僕はパンチの才能が天性で無いように、ヒジの才能は天性であるんだな、と。昨日(山本)優弥とも話してたんですけどね(笑)。まあ、こういうことは、ムエタイというものをすごく認めた上で言ってますけどね。切れ味じゃ絶対勝てないし」
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