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大宮司進、石川直生、大月晴明を撃破し、全日本キック60kgトーナメントを制した真弘。ここまで対日本人戦績無敗、山本元気を倒した実績も考えれば、全日本キック最強を証明したと言っても過言ではない。しかしベルトを獲ってからの真弘はタイ人相手に苦戦が続くなど決して順風満帆ではなかった。6月のタイ遠征でどん底を味わってから、全日本キックの頂点に登りつめるまで。真弘がその道程を振り返った。


■タイ遠征の悔しさがあったからこそハードな練習も踏ん張れた

――トーナメント優勝おめでとうございます。一夜明け会見で真弘選手は「ホッとしました」と優勝した感想を話していましたが、うれしさよりも安心の方が大きかったんですか?
「そうですね。試合が終わったその日はうれしい方が大きかったんですが、一日経ってみると『終わったな』って感じになりました。やっぱり僕にとっても一大イベントだったんで、ホッとしました」

――この3カ月間はかなり集中して過ごしていたわけですね。
「試合以外に練習でもいいテンションで続けられましたし、ここで優勝するのとしないとでは全然違いますからね」

――真弘選手がチャンピオンになったのが05年1月4日。あれからトーナメントで優勝するまでの間、なかなか評価されることがなくて、悔しい時期を過ごしたんじゃないですか?
「そんな時期もありましたね(苦笑)。何で自分よりも弱い選手の方が取り上げられるんだろうとか、大口叩いた方が得なのかなと思ったり。それで今回はちょっとヒール役になろうと思って、思った言葉を全部口に出してみたんですよ」

――そんな真弘選手にとって今回のトーナメントは、自分の実力を満天下に知らしめるいいチャンスだったんじゃないですか?
「はい。このメンバーを全員喰ったら、自分の強さを認めざるを得ないだろうと思ってました」

――実際に開幕戦の大宮司戦からかなり集中して戦っているなという印象を受けましたよ。
「今回は心技体のすべてが高い状態だったと思うんですね。大宮司戦からその状態で試合が出来て、そのままの流れで決勝まで行ったという感じです」

――今まではどこか心技体の中で欠ける部分がありました?
「今でもそうなんですけど、自分は心が弱いところがあって、コンディションも調子もいいのに、心が上ずってしまって、ガタガタな試合をすることも多い。乗っている時はいいけど、乗っていない時は駄目。僕はそれが試合だけでなく、練習にも出ちゃうタイプなんです。今回は乗った状態のまま練習が続けられていい結果を残せたんですけど、これからはそういう気持ちの波をなくすことが課題ですね」

――練習や試合において気持ちを大事にしている選手は、何か目的を達成すると次のモチベーションを探すのに時間がかかるパターンが多いんですが、真弘選手もチャンピオンになってから気が抜けてしまった感はありました?
「『だれてるぞ』とか『気が抜けてる』と言われることはありました。自分では気付かなかったことで、周りの人に注意されて見直すことが出来たんですけど」

――そのどん底の時期が6月のタイ遠征だったと思うのですが。
「そうですね。あとは去年、タイ人に連敗して怪我していた時期も苦しかったですね」
※06年はワンロップ、ダーラタイに負けた後、眼窩底骨折により半年間の欠場

――何やっても上手くいかない時期でした?
「練習では調子よく動けているのに、それが上手く噛み合わなくて」

――タイ遠征では試合後に報道陣の前で悔し涙を流していたじゃないですか。普段はあまり感情を表に出さない真弘選手だけに驚きました。
「基本的に負けると落ち込むタイプなんですよ。人一倍負けず嫌いですし」

――しかも小林聡さんや藤原会長からは「これが現実だ」とキツい言葉があって。
「でもそれに対して悔しいという気持ちはなかったですね。逆にそう言ってもらえるということは、まだ期待してもらっているわけですし、絶対にこの壁を乗り越えてやろうという気持ちになりましたから」

――あの時の悔しさがあったからこそ、今回のトーナメントで優勝できたという部分はあります?
「はい。あれだけ悔しい想いをしたんで、練習がハードになった時にはあの日の悔しさを思い出して、もう一歩踏ん張ることが出来ました」



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