11月13日(日)神奈川・横浜文化体育館で今年2度目のビッグマッチ『THE OUTSIDER 第19戦』を開催するリングス代表・前田日明。今大会では5月大会に続いてロシア勢の参戦、初の試みとなるブラジリアン柔術軍団との対抗戦、3大タイトルマッチなどが行われる。前田代表が注目する今大会の見どころ、ロシアを始めとするリングス・ネットワークの動き、そしてUFCに対する発言も! 気になる部分をあますところなく聞いた。(2011年11月9日UP)
PROFILE
前田日明(まえだ・あきら)
1959年1月24日、大阪府出身
少林寺拳法、無想館拳心道空手(二段)を経て、77年7月に新日本プロレス入門
8月25日、山本小鉄戦でデビュー
81年12月、カール・ゴッチと出会いマンツーマンの特訓を受ける
2度のUWF旗揚げを経て91年5月11日、リングスを旗揚げ
99年2月21日、アレキサンダー・カレリン戦で引退
02年に第一次リングス活動停止
05年3月、HERO'Sスーパーバイザーに就任
08年1月21日、不良を対象としたアマチュア格闘技大会「THE OUTSIDER」を旗揚げ
リングス代表
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■俺が注目しているのは熊澤伸哉、アパッチ小次郎、MASATO
ーー今回の横浜大会もトリプルタイトルマッチ、日本vsロシア対抗戦、ブラジリアン柔術軍団対抗戦と内容盛りだくさんです。前田さんが注目しているポイントとその理由を教えてください。
「まず、俺が注目しているのは熊澤伸哉君(ブラジリアン柔術軍団対抗戦でヘンリ・カキウチヴォルベリンと対戦)。彼はパンクラス経由でいろんなプロモーションの大会に出場して、外国人の有名なヤツともやってるんだよね。でも石垣島在住なのでチャンスがなくて埋もれていて、試合をやらないともったいないと思ってね。まだ30歳だからもう一花咲かせることが出来るんじゃないかな。
練習はしているけれど試合をする機会がなく、試合間隔が空いている部分での不安はあるけれど、試合をやって行く内にどんどん調子はよくなっていくと思う。今回、ブラジリアンと当ててみてどんな感じか見てみたいね。いい勝負をすると思うよ」
ーーそれで今回、初参戦でブラジリアン柔術軍団対抗戦に抜擢したんですね。前田さん推薦選手という扱いですか?
「推薦というか、気になる選手なんだよ。今のレベルがどうなっているのかは分からないので、ヘンリ・カキウチヴォルベリンが試験官になるね。彼とやってどれくらい出来るのかを見てみたい。3〜4大会前から沖縄の選手がアウトサイダーに出ているんだけれど、本土の連中と比べるとみんな基礎体力がしっかりしている。バランスが良くて足腰がしっかりしていて、見た目はそんなにごっつい感じはしないけれど、組み力が強そうだね」
ーーそう言えば、奄美大島や沖縄の選手が最近のアウトサイダーでは活躍していますね。
「いい選手が多いね。ボクシングでも世界チャンピオンになるのは沖縄出身の選手が多いでしょう。格闘技に向いているところがあるんだろうね。
次にアパッチ小次郎(右写真)。彼との出会いは、俺がHERO'Sのスーパーバイザーをやっている時に、北九州で不良ばかりを集めた天下一武闘会という大会をやっているとの噂を聞いて見に行ったんだよね。
その時にいいと思ったのが、アパッチと毛利元就の子孫ということで話題になった毛利昭彦。それでHERO'Sに出そうと思って、まずは毛利君をオープニングマッチに出して次はアパッチだと思っていたら、窓口になっていた人と連絡が取れなくなってしまい、それから3〜4年経ってしまったんだよ。
それでアウトサイダーを立ち上げる時にやっぱり気になって、あちこち探してやっと連絡がつくようになった。もしあの時、試合をさせていたら活躍できただろうなと思うと申し訳ないし、もったいなかったと思うよ。アパッチはガッツもスキルもあるし、センスの良さを感じさせる。試合で経験してそれに対処していく能力があるからね」
ーー年齢が35歳ですと一戦一戦が勝負になりますね。
「そうだね。35歳だともうアウトサイダーの枠には規定で出られないので、今回はプロフェッショナルワンマッチという形にしたんだよ。他に、個人的にはMASATO(右写真左側の人物)に注目していて、コイツの面魂(つらだましい=強い精神、気迫の溢れている顔つき)がいい。ブラジリアン柔術軍団対抗戦のソルジャーボーイ一樹vsチアゴ・シオカワも面白くなりそうだね。
あと、庵野隆馬はプロボクサーを目指すと言っているので、これが最後のアウトサイダーになるかもしれない。その他、暴走族の総長とか初参戦の選手がどれだけやるか。うかつにものを言うと、みんなすぐその気になるので言えないんだよね(笑)」
■ロシアとブラジリアン柔術軍団はまだ第一弾にすぎない
ーーロシアとの対抗戦ですが、前回は惨敗を喫してしまいました。今回はどうでしょう?
「ロシア勢はみんなプロ志望なので、今回も勝ったら来年のリングス興行に出場させようと思っている。でも、今回は日本が勝ちに行くカードだよ。日本側はZSTからもP'LABからも参戦するし、これくらいのレベルの日本人とロシアの連中がどれくらい出来るのかというのを見てみたい。
クラット・ピターリ(右写真右の人物)と対戦するRYOは、いいものを持っているのにムラがあるんだよね。意外と神経質で、試合前にのまれてしまうことがある。ZSTの小谷直之君とやらせた時も、コイツだったら一矢報いて面白い試合になるだろうなと考えて組んだのに、最初からのまれてしまって何も出来なかった(1R1分で小谷がTKO勝ち)。何も出来ないというより、何もやらないで終わってしまったんだよ。今回は本人が発奮して“次はロシアとやらせてください”と言ってきたので期待しているけれどね」
ーー前田さんから見て、ロシア勢の強さはどういうところですか?
「まず基礎体力がしっかりしていること。ロシアはソ連邦時代の名残がまだあって、地方のどんな小さな町や村に行ってもちゃんとしたスポーツ施設や体育館がある。今もあるかどうかは分からないけれど、国家スポーツ省というのがあって、オリンピックや世界選手権で金メダルを取るために置いてある省庁なんだよ。
それで子供は5〜6歳でいろんな運動をさせる国家カリキュラムが決まっていて、その名残がまだあって学校教育の中で同じカリキュラムを使っていたり、柔道もボクシングもキックボクシングもあって、最近はクラブ制の総合格闘技も増えてきている。基礎体力を作るいろんな遊びのような運動方法があって、それを子供の頃からやっているから基礎体力がしっかりしているんだろうね」
ーー技術も学校の体育で教わっているんですかね?
「ある程度はね。サンボなんかは日本の相撲や柔道のように、学校の授業にある」
ーーアウトサイダーに来るロシア勢の特徴はありますか?
「道場長がロシア特殊部隊スペツナズ出身で、一度パンクラスにも参戦している人なんだよ。技術的にはそんなに凄いとか上手いというのはないけれど、スパーリングを見ていると相手の思うように組ませないし、思うようにポジション取りをさせない。こういう技が出来るという以前の問題で、仕込みの部分が凄く上手いんだよね。相手に仕込ませないで自分を仕込む、というような。だから相手はやりにくいと思うよ。それと極め力が強い。親の仇みたいにえげつない追い込みするからね」
ーーブラジリアン柔術軍団対抗戦に出場するブラジル人は、前田さんが自ら視察に行って選抜してきたとのことですが。
「そう。2つの道場を見たんだけれど、ひとつはどちらかと言えば柔術の道場でも打撃に重点を置いていて、もうひとつは日本人のオーナーが世界チャンピオンを現地スカウトしてきてインストラクターにしている道場で、そのためか寝技のレベルはこっちの方が高かったね」
ーーヘンリ・カキウチヴォルベリンはDEEPに出場していますが、他の2名もプロで通用するレベルではないですか?
「いや、今回はまだ第一弾だよ。経験の少ないアウトサイダーの選手に、いきなり強いのを当てるわけにはいかない。日本人を育てていかないといけないからね。頑張ったら何とかなるんじゃないかってくらいのレベルの相手を当てないと。ただ、ロシアの場合はあれでも一番下の連中を連れて来たんだけどね」
ーーあれで一番下なんですか?
「そうなんだよ。道場の方からは…………
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