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■川端選手には気持ちの勝負で負けたくない。でもその前にあるのは技術の勝負。

――70kgトーナメント開幕戦が近づいてきましたが、いつもどういった形で追い込む練習をしているのですか?

「1カ月前まではミットもやりますけど、数は少なくなりますね」

――今日のスパーリングを見ていると、かなり激しくやっているようにも見えたのですが、試合が近づいてくるともう少し軽くなる感じですか?

「うちのスパーリングは基本的に強く打ち込むようなスパーリングはやらないんですよ。時には激しくなるときもありますけど」

――ヘッドギアをつけてバチバチにやるようなスパーリングもしない?

「そうですね。ヘッドギアは会員員さん用でプロの選手は使わないです」

――試合まで約2週間です。今のコンディションはどうですか?(取材日は11月初旬)

「ここ2日ぐらいで、1年に1回ひくかひかないかの大風邪を引いてしまいまして、今日も薬と痛み止めとかを飲んで練習に来ました。そろそろ薬が切れてきて辛くなってきたんですけどね(苦笑)。でもこんなに熱がある状況でもここまで動けているので、練習で体力的な部分を詰めていって、当日までにコンディションを上げていけば問題ないと思います」

――基本的にいつ頃まで詰めた練習はしているのですか?

「一週間ぐらいまでです。後はコンディションを見て徐々に減らしてもらっています」

――試合が決まってから、改めて対戦相手の川端健司選手のビデオは見ましたか?

「決まった時も見てますし、時間がある時には見るようにしています。2試合ぐらいしか映像がないので、出来ればもうちょっと見てみたいんですけどね」

――どういった印象を受けましたか?

「危険な武器を持っているのは分かりましたので、それをもらわないようにする対策と、後は自分の練習で集中的にやっている武器をどう当てていくか、ということになります。コーチの大江慎さんの指示通りにいけば問題ないと思いますけど」

――川端選手は根性があってタフなイメージがあります。

「日本人対決なんで、気持ちの面でもやっぱり負けたくないです」

――日本人対決だと燃えるものがあると?

「そうですね。僕はタイ人とも結構対戦してるんですけど、日本人選手の方が気持ちが分かりやすいですね。タイ人だと何を考えているのかわからないところがあるんで」

――気持ちと気持ちのぶつかり合いの試合になりますか?

「それは限界に達してからあるものなので、まずは技術の勝負になります。作戦の面で、相手を上回っていければいいかなと思います」

――最近はどういった部分に主に力を入れて、強化して練習しているのでしょう?

「大江さんは試合ごとに強化する武器を変えて練習に取り入れてくれるんですね。そこで今回は蹴りを重視してやっているんですよ」

――スパーリングでその蹴りは上手く使えていますか?

「今はちょっと疲れが溜まっている状況なので、実際に切れた蹴りなの分からないんですよ。この状況で詰めていって、疲れが抜けてくると、それが分かってくると思いますね。今は追い込みと風邪が重なって体力的にもきつい時期ですけど、あともうちょっとなんで頑張ります(笑)」

■9月の泰輝戦は負けたら辞めるつもりで覚悟で戦った

――記者会見では「首の皮一枚でつながっている」と言ってましたが、あれはどういった心境からきたものだったんですか?

「僕の場合、年齢的に若くなく、もうベテランの年になっているので、ここで一試合一試合勝っていかないと、次につながっていかないと思うんです。僕の後ろには若い選手がいっぱい控えているので、負けたらもう終わりという心境で一試合一試合をやっています。7月のカノンスック戦では、自分の心に慢心もあったし、向こうの技術もあって逆転KO負けしてしまいました。

 9月に同じ相手と組んでもらってリベンジというチャンスをもらったんですけど、ピンチとチャンスは裏表ですよね。あそこでリベンジ出来れば次につながるわけですけど、もしあそこで負けていたら同じ相手に2回も負けて、しかも自分からお願いした試合で負けるわけですから、もう選手として価値がないという風になってしまいますよ。だから9月の泰輝(カノンスック)戦は、本当に選手を辞めるぐらいの覚悟でやったつもりです。フリーの選手として全日本キックさんに上げさせてもらっている面もありますし」

――では7月にカノンスックに敗れて、9月にリベンジを果たすまで精神的にきつい状況だったのですか?

「きついといえばきついですよね。そういうことしか考えてなかったですから」

――7月の試合の時には、セコンドの大江さんが試合が終わった直後に「もういいよ」って感じですぐに控え室に戻ってしまったのが印象に残りました。

「あの試合の内容だったらしょうがないです。これだけ親身になって教えてもらっているのに、試合になると指示通りに動いていないわけですから。自分がコーチの立場で考えてもそうだと思います。早速、次の日から練習でしたよ(苦笑)」

――大江さんから、あの時の試合後に何かアドバイスはありましたか?

「技術的なものではなく精神面の弱さですね。4月に大輝選手に勝って『慢心があの試合にモロに出た』と言われました。自分でもそう思います」

――再戦ではその精神面の弱さはクリアできたと思いますか?

「普通にジムにミット持ちで小遣い稼ぎにきているタイ人選手は苦しくなったら逃げてあきらめるかもしれないけれど、カノンスックの場合はJMCに選手として雇われてきているタイ人ですよね。もし僕との再戦に負けていたら、タイに返されて家族を養えなくなるというプレッシャーの中で戦っていたと思います。後半はその気迫に押されて下がってしまった場面がありましたし、7月の課題をすべて克服できなかったですね。結果、勝ちは勝ちましたけれど、内容は押される場面も多かった」

――次の試合では払拭したいという気持ちはありますか。

「そうですね。試合は毎回勉強になるので、そうなるように練習しています」

――実は望月選手は今回のトーナメントに出る日本人の中で一番年上なんですよね。競技人生を考えても大きなチャンスとなると思います。

「出場選手はみんなチャンピオンクラスだし、強い。僕が1月に負けた山内選手も反対ブロックにいますし、勝ち進んでいけば、リベンジできるチャンスもあるでしょう。でももし1回戦で不甲斐ない負け方でもすれば、上に上がっていくチャンスは今後少なくなると思います」

――逆ブロックからは誰が勝ち上がってくると思いますか?

「賞金がかかっているんで、タイ人ですかね。腐ってもサムゴーじゃないですか(笑)。実際に200万がもらえると思うと、ちゃんと減量してくるでしょうし。希望では全日本の看板を背負って山内選手に上がってきてもらいたいです。山内選手のことは尊敬してますし、決勝戦でリベンジして優勝できればと思います」

――全日本キックにおいて望月選手は、大輝選手や山内選手とライバル関係に見られいてますが、その二人について望月選手はどんな感情を持っているんですか?

「実は僕、一度闘った選手は自分の中で親友みたいになるんですよ。対戦相手に勝つために辛い練習を乗り越えて試合をする。試合を乗り越えると、相手も家族みたいに思えてくるんです。だから会場で会っても対戦相手とは普通に話しますし、頑張って欲しいと思います」

――選手としてはその二人をどう評価してますか?

「大輝選手は攻撃力がありましたね。僕は試合中に痛いと思うことがないんですけど、大輝戦では攻撃が痛いなと思いました。この前はクンタップ選手に負けてスランプ気味だと思いますけど、素質的には抜群だと思います。もし復活してきたら、一番怖い存在ですよね。山内選手はリベンジしなくちゃいけない選手です。僕はもう一回やれば勝てる相手だと思っていますけど。トーナメントという部分では石毛(慎也)君にも注目してますね」


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