大道塾総本部の人気クラスである土曜ビジネスマンクラスを率いる東京大学総合文化研究科教授・松原隆一郎師範代(四段)の著作「武道を生きる」が出版された。
“武道とは最強の社会資本なり!”武道人生を体現する著者ならではの観点で著された一作。
<目次>
武道ブームと武道離れ
1 伝統〈武道〉の形成(伝統「武道」・柔道確立への道―遠景の「大日本武徳会」と
「高専柔道」)
2 現代「武道」の展開(「武道」現代化への模索
道場はいかに維持されるのか―武道の外的条件
社会体育としての武道の展開―武道の内的条件)
3 武道を生きる(私の武道体験 それぞれの柔道・空道)
<書籍データ>
「武道を生きる 日本の現代 17」
価格 2,415円(税込)
松原隆一郎 (著)
単行本 288 ページ
出版社:NTT出版
ISBN:4757141084
<著者文>
世に多くの武道論があるが、技術についてのみならず、武道が社会においていかなる役割を果たすのか、つまり社会体育としての武道について論じたパイオニアは嘉納治五郎であった。嘉納の「武道観」は武術・体育・修心の三項目からなっており、それによって武道は日本社会の発展に寄与するものだとみなしている。
ところが柔道を中心とする競技志向の武道界は、礼法や少年への教育に力を注ぐものの、中高年になってから白帯で入門する人に敷居を低くするという意味での「生涯スポーツ」をあまり目指してはこなかったし、ルール外の現実について考える武術の視点も強調しなくなった。百年後に創始された大道塾では、フルコンタクトでの当て身がさほど危険ではないこと、スーバーセーフ面が開発されたことなどの新興武道の経験から、武術面での配慮から独特の競技ルールを生み出した。それのみならず、町道場として、年齢や職業の差を超えて人々が集う空間を提供している。
「社交」を社会の基盤ととらえるのが近年の社会論の傾向であるが、本書では、日本において学校や企業だけではなく武道場での「社交」が江戸から現代に至る日本の近代化を推し進めた原動力だったととらえ、柔道や空手など伝統派武道だけでなく空道がそうした社交の場を提供している(すべきである)ことを、歴史・現実・塾生の声を元に、日本最大の武道である柔道との比較において描くものである。
<大道塾 東孝塾長推薦文>
今そちらこちらで“武道理論家”や“学識経験者”の武道への発言が相次いでいるが、中には体現者の言語アレルギーへの陥穽を付いた、到底承服できない“脳内達人”がかなりいるように見受けられる。著者は中学から柔道を始め6年間の修行の後、名誉段のない大道塾で全くの白帯から実力で4段位まで獲得した「本物の武道体現者+理論家」である。中でも同感したのは@柔道の練習法で、「打ち込み」と「乱取り」を繋ぐ稽古法がない」、またA「選手個々人の個性(身長、体重、反射神経、性格など)が違うのだから、Aに良い技、タイミングが必ずしもBにいいとは限らない」などなど、著者の慧眼を感じさせるくだりが随所にある、同好の士なら是非座右に置きたい本である。
|