BEG
「bodogFIGHT Season 1 Finale」
2006年12月2日(土・現地時間) カナダ バンクーバー アグロドーム
MFC時代から、定番のUSA×ロシア。これで4度目の対抗戦となるが、これまでの戦績は米国の2勝1分。そのドローも対抗戦としては一番規模が小さかった大会での、4戦2勝2敗というもの。それ以前の2大会では、米国が8勝1敗、5勝2敗と大勝している。
果たして、今回の大会も計8試合で、米国の6勝2敗という結果に終った。
打撃は強いが、柔術は知らない――、このようなロシア的な試合展開で敗れたのは、タラ・ラローサと闘ったジュリア・バレジコワだ。
何度も何度もマウント、バックマウントを奪われ、腕十字やチョークを仕掛けられながらもエスケープに成功し続けたバレジコワ。最後は腕が完全に逆側に曲がる腕十字でタップしたが、その戦闘意欲は見上げたものだった。
バレジコワ同様、気持ちの強さを見せつけたのが、対抗戦最終試合でトレバー・プラングレーと対戦したアンドレイ・シモノフだ。90年代末期からアマール・スロエフとともに、レッドデビル軍団をリードしてきたシモノフだが、最近は目に見えて調子を落としており、昨年から勝ち星にも見放されてきた(2戦2敗)。
しかし、この日は一度敗れているプラングレーを相手に、真っ向から殴り合いを展開。しかも、体が一回り大きいプラングレーに打ち勝つシーンが多々見られた。だが、打ち合いの後にテイクダウンを仕掛けて防がれると、ここで攻撃がストップ。テイクダウンにこだわりすぎて、ボディへのヒザやパンチで苦しめられた。
それでも打ち合いに転じると、フルパワーで向かっていくシモノフ。プラングレーが、その勢いに押されてか打撃を当てながらも、テイクダウンを仕掛けていったように、気持ちは最後まで途切れなかった。
結局、テイクダウンの攻防の差が、そのままポイントの差となり判定負けを喫したが、まだまだ老け込んでいないことを証明したファイトとなった。
米国勢で、気持ちの強さを見せたのが、第8試合に出場したマリオ・リナルディだ。
10月のADCC北米予選で99kg以上級の出場権を獲得しているATTの巨漢は、セルゲイ・カスノフスキーのヒザ蹴りで左目尻を大きくカット。それでも徹底してテイクダウンに拘り、ポジションを支配、最後まで攻めの姿勢を見せ続け判定勝ちを手にした。
敗北を喫したロシア勢には、明白な弱点がある。混戦になると、簡単にパスを許してしまう淡白な寝技、くわえて立ち技なら立ち技一辺倒という選手たち。この現象はロシア勢だけでなく、米ロ双方が寝技になると守るのみ、キープに徹するという選手が多く見られた――。
立ち技で勝負し、寝技を拒絶するという試合展開は、世界の主流になりつつあるが、それでもテイクダウン以降の技の引き出しが少ない選手が多すぎるため、エルボーがなければ物足りない(ボードッグ・ファイトではエルボー攻撃は全面的に禁止されている)という大味な試合が多いように感じられた。
試合内容や大会前の期待感という面からも、国別対抗戦のような興行スタイルは、考え直す時期にきているのかもしれない。なによりも、カナダで米ロ対抗戦の必要性はなかったのではないか。ただ、ボードッグ自体はロシア=レッドデビルとの関係は良好で、次回大会は3月3日にレッドデビルの拠点サンクトペテルスブルクで行なわれることからも、今大会で米ロ対決がその伏線として実行されたのであろう。
そのボードッグ・ロシア大会について、巷で噂になっているエメリヤーエンコ・ヒョードルの参戦だが、この日、ボードッグ・ファイトのマッチメイカーであるミゲール・イトゥラテ氏に話を聞くと、彼自身はマッチメイカーであり契約の話は詳しくは知らないとしたうえで、以下のコメントを残している。
「3月3日、ヒョードルはボードッグ・ファイトのサンクトペテルスブルク大会に出場する。M-1(レッドデビルのこと)も、ヒョードル自身も母国でのファイトを望んできた。対戦相手? ジョシュ・バーネットの名が挙がっている? 3月にはない。ボードッグはPRIDEと関係を悪化させたいわけでなく、契約上問題がないから3月の大会に出場できるよう契約した。ただ、その後はまたPRIDEで闘うことになるかもしれない。彼との契約は、我々も1試合ごと。だから、3月より先のことは分からないよ」
資金豊富なボードッグ・ファイト、色んな面で目を離せないプロモーションになってきそうだ。
ミドル級 5分×3R
○トレバー・プラングレー
判定3-0
●アンドレイ・シモノフ
同じ階級とは思えないほど、体格差が感じられた2人。シモノフも胸板は発達しているのだが、全体的にパワー負けしていた。
ヘビー級 5分×3R
○マリオ・リナルディ
判定3-0
●セルゲイ・カスノフスキー
リナルディは何度も仕掛けた腕関節で、仕留めることはできずにヒザ蹴りで大きくカット。今後は極めの強さが要求される。
ミドル級 5分×3R
○チェール・シェノン
判定3-0
●アレクセイ・オレイニキ
テイクダウン一本槍のシェノンに、ブーイングが浴びせられた。それでも1Rはテイクダウン後にアグレッシブなパウンドを見せていたが、2R以降は失速。ボードッグ・ファイト・シーズン1でMVPに選ばれ賞金50000ドルを受け取った選手とは思えない、パフォーマンスだった。
女子135ポンド 5分×3R
○タラ・ラローサ
2R1分38秒 腕十字
●ジュリア・バレジコワ
試合開始早々から、腕十字を極めかけるなどラローサが主導権を握った。打撃では優勢だったバレジコワは何とかトップを奪い返すが、その度に袈裟固めで抑えようとして、バックマウントを奪い返されたのが痛かった。劣勢な打撃戦でも前に進むアグレッシブな姿勢が、ラローサの持ち味だ。
ミドル級 5×3R
○ニック・トンプソン
1R4分59秒 チョーク
●アンサル・シャランゴフ
トンプソンの強さが目立った一戦。スタンドではギロチン、寝技でも強烈なパウンドからしっかりサブミッションで一本勝ち。次はワンランク上の対戦相手との勝負が見てみた
ライト級 5分×3R
○ウラジミール・ゼニン
1R4分26秒
●ニック・アガラー
序盤は、多彩な蹴り技を交えた打撃で優勢に立ったアガラーだったが、ラウンド終盤にパンチを受けてダウン。そのままパウンドを受け続け、ロシアに2勝目を献上した.。
ウェルター級 5分×3R
○エリック・オガノフ
判定2−1
●キース・ウィスニエフスキー
この日、初めてロシアが勝利した試合。テイクダウンとヒット率で上回ったかに見えたウィスニエフスキーだったが、ジャッジ2人はオガノフの手数を取ったようだ
ライトヘビー級 5分×3R
○マイク・パット
判定3−0
●マルトゥン・マルホージャン
距離をとって、様子の打撃のパット。テイクダウンを奪ったあとは、何も攻められないマルホージャン。対抗戦は非常に大味な一戦でスタートを切った
写真撮影&レポート=高島学
Photos&Report=Manabu Takashima
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