ADCC JAPAN
『ADCC JAPAN 関東大会』
2007年1月28日(月)東京・新宿スポーツセンター柔道場
開始12:30
▲アドバンスド各級の優勝者。上段左より66s級:西林浩平、無差別級:マテウス・イリエ・ネオキ、94s級:秋本駿一、83s級:大類宗次朗。下段、女子71s+無差別級:高橋洋子、71s級:八隅孝平、77s級:北岡悟、女子65s級:竹下嘉奈子。(61s級優勝の嶋田錠二は、時間の都合で大会途中に帰宅の徒についた)
「日本人無差別級王座の誕生」を合言葉に、昨年9月に発足されたADCC JAPAN。ブラジリアン柔術、和術慧舟會、パンクラス、修斗、スマックガール、AACC。競技、プロモーション、ジム間の壁を崩し、発足された同組織にとって、2007年は非常に大切な年となる。
5月4日に米国ニュージャージーで開幕する世界サブミッションファイティング選手権大会に向け、3月25日に一次予選(新宿コズミックセンター)、4月15日に最終予選(北沢タウンホール)大会が控えている。
→技を仕掛けられている最中なら、スラムが認められているADCCルール。冷やっとする場面も何度か見られた。
世界を目指す選手たちに、少しでもADCCルールに慣れてもらうため、関東、関西、九州、東北大会を予選までに開催することを決定した。「ROAD TO ADCC THE WORLD」、その第一弾となる関東大会が、新宿区スポーツセンターに90名以上の参加者を集めて開催された。
▲豪快なリフトアップを狙う北岡。とにかく自信に溢れていた
▼Aマット第34試合 77s級決勝
○北岡悟(パンクラスism)
2−0
●豊永稔(フリー)
今大会で一番の激戦区。今大会の無差別級で優勝したマテウス・イリエ・ネキオ(ピュアブレッド大宮)、日本人で初めてグレイシー柔術世界大会(青帯)で優勝している磯野元(慧舟會東京本部)、パンクラス・ネオブラッドトーナメント優勝の山田宗太郎(パラエストラ松戸)など、実力者揃いのトーナメントで、決勝に進出したのはパンクラスの一本勝ち製造マシーン北岡悟と総合から退き数々のプロモーションで、レフェリーやジャッジで活躍する豊永稔の2人だ。
準々決勝からの登場となった両者。豊永は、最初の試合で西川純也(GRABAKA)を後三角で下す。準決勝の大田洋平(A−3)戦ではテイクダウンを奪うと、長い手足を利用した大田のリバーサルや関節技を凌ぎ、2−0で勝利し決勝へ。
一方、北岡は緒戦となった山田との試合ではアキレス腱を、準決勝の遠藤亮太郎(Aスクエア)戦ではギロチンを極め、強さを見せつけた。
決勝戦は、引き込みなどマイナスポイントのみ試合開始からスコアされるため、両者とも慎重な立ち上がりとなった。互いに立ちレスリングで勝機をうかがうなか、北岡がカンヌキの状態から反り投げを決めて、サイドを奪取。
→北岡は一本への拘りも強く、自然、試合も緊張感が高いものとなる
まだポイントが加算されない前半戦だが、この投げで豊永は右腕を負傷してしまう。その後も北岡の攻勢が続き、試合が後半に入ると、テイクダウンを奪い2Pを先制。その後も果敢にアキレス腱固めを狙うなど、終始攻め続けた北岡が優勝を決めた。
北岡が優勝した77s級は、JAPAN TRIALで一次予選が免除される特別推薦枠4名+次点2名のうち、3名が出場を辞退したことによって、特別枠が一席空いる状態。関東大会を含めた地方大会のパフォーマンスで、最後の枠が決定することになっている。
この日のパフォーマンスを見る限り、北岡がその座を射止める可能性は十分に高い。しかし、当の北岡は最初から特別枠に選ばれなかったことが不満だったことを述べ、「自分にとって、アブダビは魅力的だけど、一番の目標ではないです」と言葉を続けた。
2月28日にパンクラスで総合の試合を行なうことも決定しており、プライオリティは総合格闘技。「2月の試合が終らないと、なんともいえませんが、どちらにしても3月の一次予選は出られない。その辺りのこともあって、今日、出ました」という北岡。弘中邦佳、中村K太郎、杉江アマゾン大輔、そして一次予選を突破した選手とともに、最終予選でもぜひ彼の勇姿を目にしたいものだ。
▲71s級決勝。八隅は果敢に攻め続け、かつ相手にポイントを許さなかった
▼Aマット第32試合 71s以下級決勝
○八隅孝平(パラエストラ東京)
0−-1
● スティーブ・マグダレノ
2000年にADCC世界大会に出場している八隅、その年の日本予選では今をときめく五味隆典に勝利している。このところ、総合+道衣有りでは思うような結果を残していない八隅だが、今月に入り待望の第一子の誕生もあり、ここはグラップリングで実力者として地位を獲得したいところ。決勝の相手となったマグダレノは、昨年のGiグラップリングにも出場している東京在住・米国西海岸を代表するグラップラーだ。
両者、レスリング出身者らしくスピーディーな立ち技の攻防となった。八隅が徐々に優勢となると、マグダレノは引き込み、これで−1Pに。自らガードを取ったマグダレノだが、そこからこれといって攻め手もなく、八隅の担ぎと脇差しからのパス狙いを阻止するのに精一杯。バックコントロールからチョークを狙うなど、攻め続けた八隅がポイントこそ奪うことはできなかったが、終始攻勢に試合を進め勝利を収めた。
「攻めてこない選手は難しいです」という八隅。レスリング出身で柔術を知る、そして総合を闘ってきた勝負度胸を持つ彼は、アブダビ・ルールのスペシャリストになる資質を持っているが、残念ながら予選出場はあまり考えていないという。理由はADCCの階級制度だ。今回のように普及を目指したADCC JAPANの大会では小刻みにクラス分けがなされているが、予選は世界大会と同じ、10s以上開いた5階級で行なわれる。
もし、彼が日本予選に出場すれば、66sでは減量が難しく、77sでは一回り以上大きな選手と戦わなければならない。「1カ月、仕事を休めば66sにすることもできますけど、それは無理ですから」という八隅。実力があっても世界を諦める選手も少なくない――、世界大会そのものの課題といえるだろう。
▼Aマット第33試合 66s以下級決勝
○西林浩平(GRABAKA)
延長 3−0
●若林次郎(パラエストラ東京イースト)
若林は、71s級で優勝した八隅同様に00年の世界大会に出場し、日本勢で唯一2回戦に進出したベテランだ。西林には、昨年8月のノーギ・アマ全国大会決勝で敗れており、リベンジ戦となる。
サンビストらしく、準決勝はヒザ固めで勝利している若林、柔術やレスリングがベースの動きとなることが多いグラップリング界で、サンビストらしい動きを見せる貴重な存在でもある。決勝戦でも足関節から、瞬時に狙いを腕に定めた関節技を繰り出すなど、抜群の存在感を見せた。が、同時に上を取ってもパスを狙う位置をとれないなど、修正すべき点が残っており、なかなか勝利につながる展開を作れない。
一方の西林は、まずは首を制してから、足をフックさせてバックマウントを狙うが、若林もこれを阻止し、勝負は延長戦へもつれ込んだ。すぐにタックルを仕掛けた若林だが、西林がこれを潰し、バックへ。西林はまず足一本を胴に絡ませチョークを狙いながら、もう一方の足のフックを試みる。上と下からプレッシャーをかける西林に対し、若林はとうとうバックマウントを許す。そのまま勝利を掴んだ西林。日本予選最大激戦区となる66s級でも、一目置かれる存在となるに違いない。
このほかのアドバンスドの優勝者は、61s級が嶋田錠二(パラエストラ八王子)、83s級が大類宗次朗(SKアブソリュート)、94s級は秋本駿一(和術慧舟會)、そして無差別級がマテウス・イリエ・ネキオ(ピュアブレッド大宮)となっている。
なお、65s級に玉井敬子(巴組)、竹下嘉奈子(慧舟會東京本部)、71s級に高橋洋子(巴組)、林美香(レンジャー品川)がエントリーした女子アドバンス。65s級では、竹下がフェースロックで玉井を破り優勝。
→竹下のえぐいフェースロックが極まる。玉ちゃんこと玉井はグラップリングでは元気がない
71s級は、高橋がプロレス技STFで林を下した。この4名が参加した無差別級の優勝は高橋。緒戦で竹下を2−2のイーブンながらレフェリー判定で下し、決勝戦では、玉井を腕十字で下した林と再戦となり、ここでも上をキープして、腕がらみで一本を奪い2階級制覇となった。
→高橋洋子が71s級決勝で見せたSTF。先に足をフックしてからの仕掛けは、リアル・プロレス技だ
今後、ADCC地方大会は2月4日に関西大会、18日に東北大会、25日に九州大会が行なわれ、日本予選に突入する。
写真撮影&レポート=高島学
Photos&Report=Manabu Takashima
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