↑“百発百中”のローキックを叩き込む藤松。「相手に何もさせずに勝つ」闘い方を実践する。
12月8日(土)東京・国立代々木競技場第二体育館で開催される全日本空道連盟主催『2007北斗旗オープントーナメント全日本空道無差別選手権大会 2007全日本女子空道選抜大会』の関東予選が、11月4日(日)東京・台東区リバーサイドスポーツセンターにて行われた。
全47名によって争われた今回の関東予選。1993〜1995・1997年重量級準優勝のベテラン沖見正義が2回戦、プロ総合格闘技でも活躍する久松勇二が3回戦、1997・2000年重量級優勝&1998&1999年同準優勝&2001・2002・2004超重量級準優勝の稲田卓也が同じく3回戦でそれぞれ姿を消していく中、安定した実力で勝ちあがったのはやはり“不動のエース”藤松泰通だった。
→藤松の強さは寝技にある。どの選手も警戒して乱打戦に持ち込めない。
2001年第1回世界大会重量級、2005年同第2回超重量級優勝、2002・2004・2006無差別全日本優勝に加えて第25回全日本サンボ選手権3位の実績を持つ藤松。
「打たせずに打つ」どころか「相手に何もさせずに勝つ」という“達人”を追求するため、様々な武道の研究をしている。
→「構えないのが構え」という藤松の独特な構え。その姿はまさに達人。
1回戦はシード、2回戦では腕ひしぎ十字固めを極めて完勝。3回戦と準々決勝は本戦判定5−0で勝利を収めた。昨年の無差別全日本よりはパンチや蹴りをもらう場面もあったが、危なげなく勝ち上がっての準決勝。「自分から攻めるな、攻めさせろ」というセコンドの声に従い、待ちの姿勢を貫いた同門の小林知昭には延長戦まで粘られたが、効果を奪っての優勢勝ち。
実は藤松、2回戦で右手小指を脱臼し、準決勝では相手の蹴りをもらって左脇の肋骨を折っていたという。ところが本人に言わせると「でも関係ないです。痛がるようではダメ。体に力が入っていないから痛くないんですよ」と全く意に介さない。
→東孝塾長から優勝トロフィーを受け取る藤松。次は12月の全日本だ。
決勝では2000年軽重量級優勝の能登谷佳樹と対戦。藤松がジャブ、ローキックなどをヒットさせ、投げも決めて本戦5−0であっさりと勝負を決めた。敗れた能登谷は「あれぇ〜?」と苦笑いしながら首を傾げる。なぜ自分が敗れたのか理解できないようだった。
「いろいろ分かってきました。内面的なものなんですが、“それ”を試すために出てよかったです。それをやると相手が動けなくなるんですよ。一番それができたのは決勝戦。だから相手は無意識なんですが、手が出なかったでしょう」と藤松。“それ”とは意識的なものなので説明は出来ないという。
「でも、もらってしまった。まだ探り探りやっている状態なので。完成させるためには真剣に相手が殴りかかってきてくれる状態でやらないとダメですね。そういう意味で今回試合に出てよかった。決勝戦ではだいぶ分かってきたので自分は何もしてないのに相手は何も出せなかったでしょう?」と、まるで謎掛けのようだ。
→パンチ、キック、ヒジ、頭突きに加えて投げもある空道ルール。
「相手の意識が途切れるのが分かってくるので、パンチもローキックも百発百中」という藤松の言葉どおり、確かに空振りした藤松の攻撃は全くなかった。ローキックも強烈だったが、東孝塾長が指摘したのは「前よりも突きが鋭くなった。前は確実性はあるけれどそんなに大したことがない突きだったが、今日は重さがあった」ということ。
これも藤松によれば「“それ”が出来ると結果的に重く見えるんです。でも、自分では凄く軽く出しています。力が入ってない突きなんです」と説明する。
→新たに開発されたネオヘッドギア空が一部導入された。ご覧のように以前のスーパーセーフよりも顔が見えやすくなった。
12・8無差別全日本には三連覇、通算4度目の優勝が懸っている。もちろん出場するという藤松は「もっと完成した形でやります」と、さらなる進化を遂げた“達人”戦法で臨むと語った。
なお、今回の関東大会で予選は全日程を終了。各地区予選の上位入賞者による12・8全日本無差別の組み合わせは、来週にも発表される予定だ。
●東孝塾長のコメント
「全体的にレベルは上がっている。満遍なく技が出るようになってきた。ただその分、抜群に強いというものが見えないのが心配だね。アグレッシブさとか貪欲なものが足りなかった。これは世界大会が終わってまだ2年だから仕方がないと思っている。
→マウントパンチ(寸止め)をバランスよく決めれば「効果」となる空道ルール。
柔道などでもそうだが、大きな大会の後はそういうものが下がるもの。今は2年後の世界大会へ向けての助走のようなものだと思っている。今回、予選に出てない選手もまだいっぱいいるから、これから出てくるんじゃないか。
藤松は前よりもパンチというか突きが鋭くなった。あいつの戦法である転がして勝つという基本は変わっていないが、今まで確実性はあっても大したことがなかった突きが重くなっている。ああいう相手には一、二発もらっても乱打戦をやらないとダメ。藤松の術中にハマってしまっている。藤松は1日中試合のことばかり考えているようなヤツだから、その執念の差だね。
藤松がやるような寸止め系の突きを覚えるのも一つの手だね。ああいう突きなら寸止め系にやる人はいっぱいいるから。藤松はそれに横の動きが加わっているけれども。寝技をやっている選手はいるけれども、寸止め系の技の練習をやっているヤツはいないから、ひとつの可能性として他の選手もやってみるのも手かもしれない。
予選が全て終わって感じたのは、空道としての試合の形が完成しているということ。極端な例で言えば、寝かされたら終わり、というような選手がいない。ただ、全日本はやはり藤松が優勝候補かな。みんな研究しないと勝てない。藤松は寝技が強いから打撃はあまり注目されていないが、あの突きもひとつの技と思って練習しないと毎回同じことをやられるよ。
→3位の小林は右ハイキックで2回戦を一本勝ち、3回戦でも有効を奪った。
今回はスーパーセーフに変わるネオヘッドギア空を一部導入したけれども、今までと全然違う。まず着けている選手自身の視界が広くなるし、顔面カバーが球体でなくなったことで顔がよく見えるようになった。それにパンチが当たった時の音が大きいので迫力があるね」
↑山本“KID”徳郁似の宮沢はまだ19歳。巨漢を倒した攻撃力は将来が楽しみ。
北斗旗関東地区予選と同時開催された「第44回関東地区交流大会」では、将来が楽しみな新鋭が現れた。一般白帯の部なのでまだ初心者クラスなのだが、この日、最も場内を沸かせたのが19歳の宮沢貴志だ。
宮沢は決勝戦で身長180cm、体重102Kgの巨漢・佐藤光一と対戦。宮沢は168cm、63Kgなので身長差12cm、体重差はなんと39Kg! 誰の目にも宮沢不利と見えたのだが、宮沢は回り込みながら強烈な突きをボディにめり込ませ(大道塾では黄帯までは顔面パンチなし)、佐藤の巨体をくの字に。
さらにミドルキック、ボディへの突き連打で畳み掛けて有効を奪い、ハイキックを連発するなどして大暴れ。体格差を跳ね返して判定で勝利を飾り、優勝を遂げた。これには東孝塾長もビックリ。
宮沢は坊主頭に細眉、色黒と今風なルックスで、鋭い眼光も山本“KID”徳郁を髣髴させる。顔面パンチに投げ、頭突き、関節・絞め技も加わる空道ルールの試合に出るまではまだ時間がかかりそうだが、順調に伸びてくれば楽しみな存在だ。
全日本空道連盟
「2007北斗旗全日本空道無差別選手権予選・第44回関東大会及び交流大会」
2007年11月4日(日)東京・台東区リバーサイドスポーツセンター
開会式10:30 開始11:00
■北斗旗予選(所属/体力指数=身長+体重/年齢)
1位 藤松泰通(総本部/178+80/27歳)
2位 能登谷佳樹(草加/175+75/37歳)
3位 小林知昭(総本部/175+84/36歳)
4位 稲田卓也(横浜北/181+85/35歳)
5位 キーナン・マイク(成田/187+91/30歳)
6位 吉澤雅宏(八王子/188+94/40歳)
7位 前田陽介(渋谷/180+78/28歳)
8位 青木政樹(浦和/169+70/34歳)
特別賞 中島秀昭(大宮/168+77/33歳)
特別賞 上野 正(総本部/163.5+69/44歳)
■女子予選
1位 前原映子(久喜/207/26歳)
■交流戦
▼一般白帯の部
1位 宮沢貴志(大宮西/168+63/19歳)
2位 佐藤光一(佐久/180+102/24歳)
▼一般青帯
1位 中村知大(早稲田/168+67/19歳)
2位 三木善靖(早稲田/182+95/18歳)
▼一般黄帯
1位 八幡義一(新宿/177+75/31歳)
▼一般緑帯
1位 日高 進(行徳/181+81/33歳)
2位 乙川順二(大宮西/170+65/32歳)
全日本空道連盟
「2007北斗旗全日本空道無差別選手権大会
2007全日本女子空道選抜大会」
2007年12月8日(土)東京・国立代々木競技場第二体育館
<テレビ放映>
GAORA「格闘KING」=http://www.gaora.co.jp/kakutogi/index.html
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