世界空手道連盟 士道館
「第28回士道館杯争奪ストロングオープントーナメント
全日本空手道選手権大会」
2008年10月12日(日)東京・ディファ有明
予選開始11:00 本戦開始14:00
▲グローブ空手の部 無差別級を圧倒的な強さで制した上原
今回で28回目を迎えた士道館空手の全日本大会『ストロングオープントーナメント』。この大会で行われるフルコンタクト空手の部はつかみ・引っ掛け・投げ・関節技を認め、リングで試合を行うという異色のルールを用いていることで知られている。
今大会にはフランスやドイツなど、国内道場以外の海外選手がトーナメントにエントリー。フルコンタクト空手の部と昨年からスタートしたグローブ空手の部の二つのルールで、それぞれ軽・中量級と無差別級のトーナメントが行われた。
その中で最も大きなインパクトを残したのはグローブ空手の部 無差別級に出場した上原誠(士魂村上塾)。上原は今年K-1トライアウトに合格し、7月にK-1アジアトーナメント出場の抜擢を受けている日本ヘビー級期待のホープだ。1回戦で上原は一本勝ちこそ逃したものの、大藪英司(士道館三重支部)から左フックでダウンを奪い快勝。準決勝では吉沢大(士道館大澤道場)を右ロー数発で、決勝では宮原康介(日進会館)をわずか7秒バックキック一発でマットに沈めて、貫禄の優勝を遂げた。
その他、マハラジャン・モハン(士魂村上塾)とシャルパンティエ・ジラルド・マティアス(士道館フランス支部)が、それぞれグローブ空手の部 軽・中量級とフルコンタクト空手の部 無差別級で連覇を達成。フルコンタクト空手の部 軽・中量級ではベテランの山本隆治(士道館橋本道場)が3年ぶりの優勝を果たした。大会レポート詳細は以下の通り。
<グローブ空手の部 無差別級>
優勝 上原誠(士魂村上塾)
準優勝 宮原康介(日進会館)
3位 吉沢大(士道館大澤道場)
ソルステン・クロンズ(士道館ドイツ支部)
昨年の同トーナメントで優勝を果たし、今年7月にK-1出場の経験を経て連覇を目指した上原だったが、実はK-1でのパク・ヨンス戦で左目の眼窩内壁を骨折しており、「治療期間が3カ月でほとんど練習できず、ぶっつけ本番」(上原)の状況だったという。
しかし上原は1回戦から磐石の強さを見せ付けた。今年40歳を迎える“鉄人”大藪英司(士道館三重支部)から左フックでダウンを奪い、その後もパワフルな右の蹴りで大藪を圧倒。一本勝ちこそ逃したものの、幸先のスタートを切る。
そして「1回戦が終わって体が慣れてきた」という上原は、準決勝で吉沢大(士道館大澤道場)を右ローキック数発でマットに沈めて、堂々の決勝進出を果たす。
その上原と決勝戦で対戦したのは他流派の宮原康介(日進会館)。準決勝ではソルステン・クロンズ(士道館ドイツ支部)に、パンチで技ありを取り合う壮絶な試合の末に敗れた宮原だったが、クロンズの負傷欠場により、繰り上がりで決勝へ駒を進めた。
ここまでの試合で気迫のこもった試合を続けてきた宮原を上原がどう攻略するかが注目されたが、上原は試合開始直後に「相手が構えた瞬間に狙っていた」というバックキックを一閃!
これが宮原のボディに突き刺さり、宮原はその場にうずくまって悶絶! 上原が試合時間わずか7秒という秒殺KO勝利で連覇を達成。K-1ファイターとしての力の差を見せ付けた。
→やや分かりづらいが、これが上原が決勝で見せたバックキック
大会後、「今日は力の差を見せたかったし、本当は全試合を合わせて30秒で終わらせる予定でした(笑)。1回戦はKO出来なかったですけど…決勝は7秒で勝ったんで、挽回できたんじゃないですか」とトーナメントを振り返った上原。
K-1に出たことで「精神的にも、技術的にも、考え方も変わりました」という上原は「12月のK-1横浜アリーナ大会に出たいですね。もし出られんだったら、KOで勝ちます」とK-1再出撃を宣言。さらに「来年もK-1で戦いたいし、一生無敗のままで終わらせます!」と堂々と語っている。
▲写真奥左より準優勝の宮原、優勝の上原、3位の吉沢、クロンズ
<グローブ空手の部 軽・中量級>
優勝 マハラジャン・モハン(士魂村上塾)
準優勝 町田光(士道館橋本道場)
3位 藤松正人(士道館児玉道場)
望月秀一(士魂村上塾)
モハン・ドラゴンのリングネームでキックボクシングの舞台で活躍するマハラジャン・モハン(士魂村上塾)が連覇を成し遂げた。
モハンは2回戦で櫻井大志(士道館ひばりヶ丘道場)を本戦判定で下すと、準決勝では藤松正人(士道館児玉道場)を手数の多さで押し切って本戦判定で勝利を収める。
そして決勝戦ではミドルキックを主体とした町田光(士道館橋本道場)の戦い方に苦戦を強いられたモハンだったが、延長戦に入ると準決勝と同じように前に出る圧力と手数の多さで町田を圧倒。町田のテクニックを封じ込めて優勝を果たした。
このように結果はモハンの連覇に終わったが、決勝でモハンと対戦した町田が21歳。ベスト4に勝ち残った藤松と望月秀一(士魂村上塾)が23歳と、20代前半の選手が躍進する結果になっており、今後の彼らの活躍に期待が集まる。
▲写真奥左から準優勝の町田、優勝のモハン、3位の藤松、望月
<フルコンタクト空手の部 無差別級>
優勝 シャルパンティエ・ジラルド・マティアス(士道館フランス支部)
準優勝 大藪英司(士道館三重県支部)
3位 根間好弘(フリー)
バニ・ヨアン(PANKIDO FRANCE)
昨年優勝のマティアスは190cmの長身を活かした攻撃が武器の選手。2回戦では鈴木華哉(士道館大澤道場)に奥足へのローキックを効かせて判定勝利、準決勝では根間好弘(フリー)のボディに左ミドルを突き刺して一本勝ちし、決勝に駒を進めた。
逆ブロックではフルコンタクトとグローブの両トーナメントにエントリーした“鉄人”大藪英司(士道館三重県支部)が大活躍。
2回戦で今大会の最高齢選手55歳(!)の塚川義行(楠誠会館)に腕十字固めで一本勝ちすると、準決勝では海外勢の一人であるバニ・ヨアン(PANKIDO
FRANCE)をベテランとは思えない手数の多さで圧倒し、左ボディで技ありを奪っての勝利を収める。
決勝戦でも大藪は一気に距離を詰めてパンチとインローで攻め込んでいくのだが、マティアスがそこにカウンターのヒザ蹴り! 序盤はこれをもらっても前に出続けた大藪だったが、マティアスのヒザ蹴りで2度の技ありを奪われて勝負あり。マティアスが連覇を達成した。
▲写真奥左より準優勝の大藪、優勝のマティアス、3位のヨアン、根間
<フルコンタクト空手の部 軽・中量級>
優勝 山本隆治(士道館橋本道場)
準優勝 シャウィット・アメット(士道館総本部)
3位 三明優亮(士道館横山道場)
近藤有一(士道館士誠塾)
3年ぶりの王座返り咲きを目指す山本は2回戦の三浦克仁(三浦道場)戦、準決勝の三明優亮(士道館横山道場)を飛びヒザ蹴りで一本勝ち。
大きな弾みをつけて決勝戦のリングに上がった。決勝戦の相手は前蹴り、ミドル、首相撲(掴んでからのヒザ蹴り)とムエタイのような戦い方で勝ち上がってきたシャウィット・アメット(士道館総本部)。
試合は左ミドルとテンカオで前に出るアメットが有利に試合を進めるという展開が続く。しかし山本もローとボディへのパンチでアメットの動きを止めて左ハイキックを当てていく。
本戦では決着がつかず延長戦に入ると、ロー、ミドル、前蹴りを駆使するアメットに対し、山本は組んでからの投げを多用する。
これで試合のペースを取り戻した山本は、再延長戦で距離を取ろうとするアメットを後退させて、声を出しながらインロー、左ボディから右ローと怒涛のラッシュ! 手数と前に出る圧力でアメットに反撃の隙を許さず、見事に王座返り咲きとなった。
→なんとまだ13歳の三明(右)! しかし結果は3位入賞となった。
また優勝した山本と準決勝で対戦した三明はまだ13歳の中学生! 山本に敗れはしたものの、2回戦では井上伸也(士道館総本部)をヒザ蹴りで攻め込み、見事な勝利を収めており、ポテンシャルの高さを見せた。
▲写真奥左より準優勝のアメット、優勝の山本、3位の三明、近藤
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