極真空手道連盟 極真館
「第7回全日本ウェイト制空手道選手権大会」
2009年7月12日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館
開場10・00 開会式11:00
従来の極真空手ルールに顔面突き、ヒジ打ち、投げ、そして今回より逆技(立ち関節技)を加えた“真剣勝負ルール”による全日本ウェイト制大会は今回で3回目を迎えた。
顔面突きありのため今大会でも一本勝ちが続出、担架に乗せられて運ばれる選手もいた。
注目選手は重量級にエントリーした元キックボクシング三階級制覇&四冠王の須藤信充。プロのキックボクサーであるが、極真館城南大井町支部に昨年入門し、現在は茶帯を締めている。「減量しない本当の俺の強さを見せてやる」と宣言して臨んだ今大会、須藤は“怪物”のニックネームにふさわしいインパクトを残した。
まず1回戦、阿部直之戦では試合開始から僅か5秒、左フック一発で戦慄のKO劇。場内にどよめきが起こり、安部はしばらく立ち上がれないほどのダメージを受けた。
続く準決勝では韓国から出場した李元俊と大激戦を演じ、両者がもつれて場外へ飛び出すたびに場内からは拍手と歓声が沸き起こる。試合は延長戦までもつれこみ、真っ向から打ち合う李のパンチで須藤がグラつく場面もあったが、ついに豪腕が爆発! 開始24秒に左フックで技ありを奪うと、もう一度左フックで技ありを奪い、合わせ一本勝ち。
決勝戦は昨年の軽量級チャンピオンで、56kgという軽量ながら重量級にエントリーして勝ち上がってきた橋本幸憲との対戦。多彩な足技で須藤を苦しめ、左ハイキックもヒットさせた橋本だったが、須藤の左ミドルキックが橋本の左腕を破壊。骨折のため試合続行不可能となり、須藤が初出場で初優勝を飾った。
「空手のトーナメントは士道館のジュニア全日本大会で高2と高3の時に優勝して以来。今回の大会前に“減量しないなら俺は絶対に負けない”とか大口叩いていたから、もの凄いプレッシャーがあった。口も聞けないくらいでしたよ。今回負けたら本当に終わりだと思っていたから」と、背水の陣で臨んでいたことを試合後に明かした須藤。
「キックボクサーで極真の大会に出て優勝したヤツはいないから、俺がそれをやりたかった。でも、極真の選手は強い。決勝でやった人は56kgだったけれど、キックのフェザー級のチャンピオンとは全然ものが違う。体幹が強すぎ! ビックリしたよ。空手のレベルがどうのこうのとか言ってるキックボクサーはやってみなって。驚くから」と極真空手家の強さを認め、今後は減量のないヘビー級で活動していくと語った。
また、盧山初雄館長は来年のウェイト制大会より、海外選手たちにも門戸を開く予定であると明かし、来年はさらに激戦となりそう。昨年の同大会でデモンストレーションを行って話題を呼んだ武器術(棒術)の公式大会も、来年の春に開催すると発表し、こちらも楽しみだ。
▼軽量級(−60kg)決勝戦
○時田元樹(埼京・城北)
合わせ一本勝ち 2分25秒
●田村浩史(城南川崎/前年軽量級第3位)
決勝戦は1回戦を右鉤突き(フック)で一本勝ち、2回戦は延長戦に左上段突き(ストレート)で技ありを奪っての判定勝ちで勝ち上がってきた田村と、1回戦を最終延長(3回目)の末に3−2で判定勝ち、準決勝は延長戦で左鉤突きによる一本勝ちで勝ち上がってきた時田によって争われた。
時田はステップを使ってキックボクサーのような闘い方をするサウスポー、田村は突進型のファイタータイプ。田村がいきなり打ち合いを挑むが、開始20秒、田村の右鉤突きがヒットして技ありに。
時田は待ちの姿勢で田村の下段廻し蹴りに連打を合わせていく戦法をとり、左上段突きからの右鉤突きを決めて2度目の技あり、合わせ一本勝ちを奪って初優勝を飾った。
RESULT
優 勝 時田元樹(埼京・城北)
準優勝 田村浩史(城南川崎/前年軽量級第3位)
3 位 大熊裕幸(埼京・城北)、菊地陽太(さいたま中央/前年軽量級準優勝)
▼軽中量級(−65kg)決勝戦
○田中晶典(さいたま中央/前年軽中量級第3位)
合わせ一本勝ち 2分25秒
●中川裕介(城南羽田)
思い切り振り回す左鉤突きとバックブローでガンガンと攻めて行くファイタータイプの田中は、1回戦で右鉤突きで技ありを奪って5−0の判定勝ち、準決勝は回転裏拳打ち(バックハンドブロー)と左鉤突きで技あり二つを奪っての合わせ一本勝ちで決勝へ進出。
もう一方のブロックからは蹴りを多用して上手く距離をとって闘い、1回戦は延長戦で判定4−0、準決勝は本戦判定4−0で勝利を収め、中川が勝ち上がってきた。
田中が20歳、中川は21歳と若手同士の決勝戦。田中はガードを高く上げた独特の構えで下段廻し蹴りから思い切った左右の鉤突きを振り回していく。中川が下段廻し蹴り、田中が上段廻し蹴りで蹴りと突きの応酬を繰り広げる中、田中が上段逆突き(左ストレート)で技ありを獲得。
続いて突きで攻めて行く田中が打ち気になった中川に回転裏拳打ち! これで中川がグラッときたため技ありとなり、田中が二十代対決を制した。盧山初雄館長は「勇敢な闘いで絶賛に値する」と田中を褒め称えた。
RESULT
優 勝 田中晶典(さいたま中央/前年軽中量級第3位)
準優勝 中川裕介(城南羽田)
3 位 田中浩二(草加/前年軽中量級第3位)、眞島忠(幸手)
▼中量級(−72kg)決勝戦
○北澤真也(城南川崎)
判定4−0
●高山忠士(城南川崎)
1回戦で鮮やかな胴廻し回転蹴りを決めて技あり、続いて右鉤突きで合わせ一本勝ちを奪い、準決勝でも左目上をカットしてドクターストップでの一本勝ちを奪った高山。回転系の蹴り技や飛び技を多用し、異彩を放つ。
その高山と決勝戦で対峙したのは、1回戦を判定4−0で勝ち、準決勝では僅か9秒で左中段廻し蹴りからの左上段突きで一本勝ちを収めた北澤だ。
北澤は左下段廻し蹴りを狙い撃ちし、高山の蹴りに軸足蹴りを合わせて何度も転倒させる。実は高山が準決勝で下段を蹴った際に、足を痛めていたことを見抜いていたのである。高山は捨て身の胴廻し回転蹴りを放ち、飛び上がってのスーパーマンパンチを繰り出すなど足をかばって奮戦したが、突きが大振りとなってしまい下段を合わされ、37歳の北澤が初優勝を飾った。
RESULT
優 勝 北澤真也(城南川崎)
準優勝 高山忠士(城南川崎)
3 位 梅寺孝(川崎元住吉)、山田義浩(所沢)
▼軽重量級(−80kg)決勝戦
○コンスタンティン・シドコフ(ウクライナ)
一本勝ち 34秒
●水谷 玄(大阪北摂)
同階級を二連覇し、5月に開催された『全日本新空手道選手権大会』重量級でも優勝している優勝候補筆頭の菊地が、準決勝で一本負けするという波乱が起きたこの階級。
その菊地を破ったのは、真剣勝負ルール初のアジア以外からの挑戦者となったウクライナのシドコフ。1回戦でも延長戦の末に左鉤突きで一本勝ちを収めており、準決勝の菊地戦では危うく失格負けとなるところだったが(菊地を倒した直後、ガッツポーズをしてしまったため=ガッツポーズが小さかったことと初出場のためルールを認識していなかったことから厳重注意扱いとなった)連続一本勝ちで決勝へ駒を進めた。
迎え撃ったのは1回戦を右鉤突き三連打で一本勝ちを飾り、準決勝は相手のドクターストップで不戦勝となった大阪北摂支部長の水谷。第3回全日本大会(体重無差別)で4位になっている強豪である。
王座を死守するため果敢に打ち合いを挑み、右鉤突きをヒットさせた水谷だったが、出会い頭にシドコフの左上段突きをカウンターでもらい、一本負け。シドコフが34秒で勝利を収め、海外勢の強さを見せ付けた。
RESULT
優 勝 コンスタンティン・シドコフ(ウクライナ)
準優勝 水谷 玄(大阪北摂)
3 位 山本康洋(愛知県/前年軽重量級第3位)、菊地 先(さいたま中央/前年軽重量級優勝)
▼重量級(80kg超)決勝戦
○須藤信充(城南大井町)
判定5−0 ※橋本が左腕骨折で試合続行不可能のため
●橋本幸憲(城南川崎/前年軽量級優勝)
注目のキックボクサー須藤は1回戦で僅か5秒の一本勝ち、準決勝では昨年の第3位・李と対戦した。両者は最初からド迫力の打ち合いを展開し、場内には拍手とどよめきが起こる。お互いに鉤突きを振り回して一発KOを狙い、李は下段廻し蹴りも放っていく。
須藤の左上段廻し蹴りに李は下段廻し蹴りで応戦するが、須藤の重い攻撃をもらって右頬が大きく腫れあがり、ドクターチェックを受ける。それでも李は真正面から須藤と激闘を展開。
しかし、延長戦に入ると開始から24秒、ついに須藤の上段逆突きが炸裂! これが技ありとなる。逆転を狙って鉤突きで襲い掛かる李に、須藤は下がりながらの下段廻し蹴り、場外まで追い詰められた須藤は突きを振り回し、両者の闘志に場内が大いに沸くが、1分45秒、李が入ってくるところに須藤の下段廻し蹴りからの左上段鉤突きがヒットし、合わせ一本勝ちとなった。
大会を通じてのベストバウトとなったこの一戦に、盧山初雄館長は「李選手と須藤選手の熱い闘いはこの大会が続く限り語られる試合だと思います」と賞賛の言葉を送った。
李とのタフな試合を制した須藤は、決勝戦へ進出。決勝の相手は、昨年の軽量級王者ながら重量級にエントリーしてきた橋本である。須藤は170cm、橋本は168cmと身長に大きな差はないが、体重は須藤が89kg(試合時は90kgを超えていたという)に対して橋本は56kg! なんと33kgもの差があった。
1回戦と準決勝を共に試割り0.5枚差で勝ち上がってきた橋本は、それまでのどっしり構えてひたすらカウンターを狙う闘い方ではなく、須藤の強打を封じるために下段後ろ廻し蹴り、後ろ蹴り、上段後ろ廻し蹴り、上段廻し蹴り、上段前蹴りと大技を連発。その一発、左上段廻し蹴りが鮮やかに須藤の頭部を捉えたが、軽量の悲しさか須藤は構わず向かってくる。
須藤も左中段廻し蹴り、左上段廻し蹴りと蹴り技で応戦し、左右の鉤突きを豪快に振り回していくが、突きはことごとく橋本のボディワークでかわされていく。また試割りに持ち込めば、1回戦と準決勝同様に0.5枚差で勝利を奪うことが出来たが……この時、橋本にはすでに異常が起きていた。
本戦が終了したところで主審が異常に気付き、ドクターチェックが行われたところ、なんと須藤の右中段廻し蹴りをブロックした際に橋本の左腕が骨折していたことが判明したのだ。これにより、判定がとられて5−0で須藤が優勢勝ち。戦前の公約通り、「減量しない本当の須藤信充」の強さを見せ付けた。
RESULT
優 勝 須藤信充(城南大井町)
準優勝 橋本幸憲(城南川崎/前年軽量級優勝)
3 位 李元俊(韓国)、金承R(総本部/前年重量級準優勝)
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