NPO国際空道普及委員会/全日本空道連盟/大道塾総本部
「2009北斗旗 第三回世界空道選手権大会・決勝日」
2009年11月15日(日)東京・国立代々木競技場第二体育館
開会式10:30
RESULT
▼-230級
優 勝 コリャン・エドガー(ロシア)
準優勝 中村知大(早稲田準支部)
3 位 平安孝行(中四国本部)
4 位 高橋 腕(新潟支部)
戦前、「この階級は日本が死守したい」「最も日本が王座を獲れる可能性のある階級」と評されていた最軽量級。それは2005・2008春全日本軽量級優勝の高橋腕、2006・2008秋・2009全日本軽量級優勝の平安孝行というツートップを擁していたからである。特に高橋の評価は高く、歴代王者たちが口を揃えて優勝候補に名を挙げていた。
しかし、結果は予想外の展開に。平安は準決勝にて第二回世界大会同級優勝のコリャン・エドガーに後ろ廻し蹴りで一本負けを喫し、高橋は準決勝で新鋭の中村知大に敗れるという大波乱。
決勝はエドガーVS中村となり、空道母国ニッポンの威信は中村に託された。
中村は早稲田大学に在学中の21歳、空道経験はまだ2年で初段の一歩手前である1級の腕前。これまで全日本大会での優勝経験はなく、当初は決定選手・リザーバー・強化選手と三段階ある日本代表候補の中でも、優先順位が最も低い強化選手から代表に繰り上がったという選手でまさにダークホースだ。
中村の仲間たちが歌う早稲田大学の応援歌に対抗して、ロシア人応援団による大ロシアコールが鳴り響き、決勝は異様な盛り上がりの中で始まった。
右フックを空振りしただけでも場内からどよめきが起こるパワフルなエドガーに、サウスポーの中村はタックルで突っ込んでいくも上になったのはエドガー。
中村の右ミドルをキャッチしたエドガーはすぐに右フックを叩き込み、これがあやうく効果になりかける。エドガーが右ミドルから組んでのヒザ蹴り、中村もヒザ蹴りで応戦すると、エドガーは肩車で中村を軽々と持ち上げて投げ、グラウンドでボディへのパンチを見舞う。
組んでのヒザから投げでテイクダウンし、中村が寝技に持ち込もうとすると、エドガーは両足で中村の頭を挟み込んでディフェンス。これで2度まで許されるグラウンドの攻防がなくなり、終了間際にはエドガーが連打からの右フックをヒットさせる。
決勝戦ルールにより延長戦へ突入すると(有効2か効果3がなければ自動的に延長戦)、中村は組んでのヒザで勝負を懸けるが投げられる。中村のミドルキックをキャッチしたエドガーはなんとキャプチュード(前田日明が得意としていた足と首を抱えての後ろへの投げ)!
バックブローをかわして中村がタックルに入るが、エドガーは寝技に持ち込ませない。
空振りしながらも左右フックで前に出るエドガーに下がる中村、組みに行くとエドガーは道衣を掴んで引っ張っての崩し技からハイキック! これで中村が倒れついに「効果」が入る。ポイントを取ったからか、下がるエドガーに中村がタックルに行ったが時間切れ。23歳のエドガー(前回優勝時は19歳)が判定5−0で二連覇を達成した。
RESULT
▼-240級
優 勝 アブドゥルケリモフ・シャミル(ロシア)
準優勝 田中俊輔(吉祥寺支部)
3 位 我妻 猛(角田支部)
4 位 堀越亮祐(総本部)
まだ24歳ながら空道歴10年、ロシアではインストラクターを務め、2006・2009ロシアカップ優勝&2008欧州大会−240級優勝という実績を誇るシャミルがスピードを活かした闘い方で旋風を巻き起こした。
2回戦で田中洋輔(早稲田)、準々決勝では第二回世界大会中量級準優勝の実績を持つ青木政樹(浦和)、準決勝では2008春全日本中量級&2008第1回アジア大会同級優勝の堀越亮祐と日本代表を総なめにし、決勝戦へ進出したのだ。
日本最後の砦となったのは2008秋・2009全日本中量級優勝の田中俊輔。かつて大道塾四天王の一人と言われた飯村健一の弟子で、DREAMの青木真也と共に練習し、寝技は今成正和に習うという恵まれた練習環境におり、キックボクシングの試合も2戦経験している。準々決勝では2009ロシアカップ準優勝のズロピン・アンドレイ(ロシア)を破り、準決勝では2007全日本中量級優勝の我妻を下しての決勝進出となった。
シャミルは今大会で多用しているワンツーからのハイキック、田中は前蹴りを多用して離れた距離で闘う。
田中の左ミドルをキャッチしたシャミルがグラウンドへ行くが、田中はクロスガードで寝技時間制限を待つ。立ち技に戻ると田中は掴んでのパンチとヒジ。シャミルもパンチで応戦して本戦終了。
自動延長に突入すると、シャミルは強烈なワンツーで前に出て、田中が前蹴り。ワンツーからの左ハイキックをヒットさせるシャミル。ワンツーで攻め込むと田中が飛びヒザ蹴りを返してくるが、かるくかわしての右フックを見舞う。ヒザ蹴りに行くため組んだ田中にシャミルは掴みからのパンチを連発、田中が離れて前に出ようとした瞬間、シャミルの左ストレートが炸裂! 田中は大の字となり、シャミルが一本勝ちで初優勝を飾った。
RESULT
▼-250級
優 勝 ケリモフ・シャンハル(ロシア)
準優勝 アレクセイ・コノネンコ(ロシア/東北本部)
3 位 ストレチェンコ・オレクサンダー(ウクライナ)
4 位 ケレカサエフ・ラスラン(ロシア)
第二回世界大会軽重量級3位の実績を持つ笹沢一有(中部本部)が準々決勝でストレチェンコ・オレクサンダーに敗れ、そのオレクサンダーを準決勝で葬ったのが第二回世界大会優秀のケリモフ・シャンハルだった。シャンハルは26歳、ロシアではインストラクターを務めている。
決勝で迎え撃つは2004・2007・2009全日本軽重量級優勝&第一回世界大会同級準優勝という安定した実力を誇るアレクセイ・コノネンコ。同じロシア人だが、日本での生活が長く今回は本人の希望もあって日本代表の立場での出場となっている。
シャンハルは思い切ったワンツーで踏み込み、コノネンコはインロー。動きの軽いシャンヒルの飛び込み様の左フックがヒットするが、コノネンコもすぐに足払いでシャンヒルをコカす。シャンヒルは組み付いてのヒザ蹴り、突然両足タックルに切り替えてテイクダウンするも、コノネンコは道衣を掴んでディフェンス。
圧力を掛けて前へ前へと出て行くシャンハルは、飛び込んでの右フックでコノネンコを転倒させ、効果を奪った。しかし、効果が3つ以上ないために自動延長へ。身体を振ってリズムを取りながら圧力を掛けていくのはシャンハル。
右ストレートにコノネンコも連打で応戦し、左ミドルをキャッチして寝技に持ち込むがこれは場外に。飛び込んでフックを放つシャンハルにコノネンコも左右のフックを合わせる。
シャンハルはまたも飛び込んでの左フックから、コノネンコの頭を下げさせて左ハイキック、そのまま掴んでの頭突き。コノネンコは投げ! 場外へ倒れる。
下がるコノネンコに前へ出るシャンハルは左右のフック、組むと頭突き。
しかし、上段への後ろ廻し蹴りを空振りしてバランスを崩し、倒れてしまう。そこでコノネンコが上になるが、シャンハルは下から三角絞めを狙ったところで時間切れ。
本戦から攻め続けたシャンハルが判定5−0で勝利、二連覇を達成。そしてコノネンコの敗北により、日本チームの王座獲得の夢は潰えた。
RESULT
▼-260級
優 勝 カリエフ・アダン(ロシア)
準優勝 カリトノフ・アレクセイ(ロシア)
3 位 サモヒン・マキシム(ウクライナ)
4 位 佐々木嗣治(帯広支部)
空道歴僅か1年、4級にして2009ロシアカップ優勝を果たした25歳のカリエフと、空道歴7年で同じく2009ロシアカップで優勝している31歳のカリトノフが決勝戦を争った。
カリエフは左右回転の飛び後ろ蹴りを連発する独特のスタイル。思い切ったパンチの打ち合いも展開刺される。カリエフがパンチでカリトノフを下がらせて上段への後ろ廻し蹴りも放つ。さらにタックルからマウントを奪い、マウントパンチで効果を奪った。
その後も後ろ蹴りを連発する、バックスピンキック男のカリエフ。
自動延長になり、パンチの打ち合いからカリエフがタックル、バックを奪うが寝技時間制限に。カリトノフが組むと頭突きの応酬が繰り広げられ、カリトノフが投げから寝技に行くとすぐにカリエフが上になる。これは場外。
激しいパンチの打ち合いから組んでのヒザ蹴り、カリエフは後ろ蹴りからタックルに入ってグラウンドへ。
サイドにつく。スタンドに戻るとカリエフはやはり後ろ蹴り、パンチの打ち合いの中でも後ろ蹴りを放ち、カリトノフが組んでくると逆に身体を浴びせ倒す。
判定は信じられない数の後ろ蹴りを放ち、しかも有効打を奪っていたカリエフに5−0で凱歌が挙がった。
RESULT
▼-270級
優 勝 パノフ・ユーリ(ロシア)
準優勝 ビノグラドフ・アレクサンダー(ロシア)
3 位 トマス・スヴィアザス(リトアニア)
4 位 伊藤征章(渋谷)
スピードのある鮮やかな打撃で勝ち上がってきたパノフは2008・2009ロシアカップ準優勝、2008欧州大会−270級準優勝の実績を持つ選手。
一方、ビノグラドフは2008・2009ロシアカップ優勝と2008欧州大会−270級優勝を果たしていることから、この二人はライバルで常に決勝戦を争い、ビノグラドフが3度とも勝利を収めているようだ。
その対決が世界大会の決勝戦でも実現した。
お互いにステップでリズムを取りながら、パノフが組んでのヒザ、ビノグラドフは突進を前蹴りで止める。パノフは飛び上がってのパンチを繰り出し、さらにパンチで突っ込んでいくが場外へ。パノフは左右フックから上段後ろ廻し蹴りと攻めまくる。
自動延長に入ると、パノフがワンツーで前に出てタックルでテイクダウン。さらにビノグラドフのミドルキックをキャッチしてテイクダウンし、マウントパンチで効果を奪った!
接近戦でビノグラドフの右ストレートもヒットするが効果には届かず。
ビノグラドフのミドルキックを再びキャッチしたパノフが上になり、ビノグラドフは下から道衣を掴んで防戦。しかし、パノフはマウントを奪ってまたもマウントパンチで効果を追加。ビノグラドフは逆転を狙おうと後ろ蹴り、パンチで追いかけるが時間切れとなり、パノフが判定5−0で初優勝を飾った。
RESULT
▼270+級
優 勝 ラーサノフ・イブラギン(ロシア)
準優勝 ビンゲルト・ニコライ(ロシア)
3 位 三木善靖(早稲田準支部)
4 位 カプジー・ダニロ(イタリア)
2009ロシアカップ優勝&同年ロシア選手権3位の実績を持つラーサノフと、2009ロシアカップ準優勝と2009ロシア選手権優勝の実績を持つビンゲルトが決勝戦を争った。この実績から見ても、両者が世界大会の決勝戦を争うということはロシア国内のレベルの高さが分かるというもの。
ビンゲルトの右ローにラーサノフがパンチを連打、ビンゲルトは左ミドルキックを合わせる。ラーサノフがパンチを放ち、ビンゲルトが左ミドルを返す。この展開が続いたが、ラーサノフが組んで投げを見舞い、ビンゲルトを宙に舞わす。
蹴りのビンゲルト、パンチのラーサノフという図式。ラーサノフがパンチの連打で効果を奪ったが、勝敗は自動延長にもつれた。
ビンゲルトがパンチの連打から左ミドルキック、ラーサノフのパンチにビンゲルトがヒザ蹴りで迎え撃ったが、これが急所に入ってしまい反則1が与えられる。
ビンゲルトが左右のミドルをヒットさせて行き、ラーサノフのローには左フック。ラーサノフもミドルをキャッチしてフックを見舞い、そのままグラウンドへ持ち込む。
ビンゲルトが後ろ蹴り、ラーサノフは左右フック。ビンゲルトは日本の選手がほとんどやらない胴廻し回転蹴りまで繰り出す。しかし、ラーサノフの右フックが三度連続でクリーンヒット! そこからパンチの相打ちが続き、白と青に副審が二人ずつ効果の判定。ここで主審判定はラーサノフを支持、効果が入った。
判定は主審と副審一人が引き分けにしたため再延長戦になるかと思われたが、効果が入っていたためラーサノフの勝利。これによりロシアが全階級制覇の快挙を達成した。
RESULT
▼女子
優 勝 ラジィオノワ・ルドゥミラ(ロシア)
準優勝 イワノワ・ダリナ(ウクライナ)
3名ずつ4つのグループに別けられての総当たり戦が行われ、その勝者同士が準決勝からトーナメントを行うという変則的なトーナメントで行われた女子クラス。当初は第二回世界大会優勝のビコワ・イリーナ(ロシア)がエントリーしていたが欠場となり、誰が勝っても初優勝という図式になった。
決勝戦に勝ち上がったのは、空道歴11年の初段で20歳学生のイワノワと、空道歴6年で弐段を持つ2009ロシアカップ準優勝の実績がある23歳のラジィオノワ。
試合場に立つと、身長164cmのイワノワと145cmのラジィオノワはかなりの身長差が目立つ。体力指数(身長+体重)の差が30以上あるため掴んでの打撃は一切なしのルールで行われた。
ところが、試合が始まると145cmのラジィオノワは果敢にフックで突っ込んでいく突貫ファイトを仕掛ける。フックで前へ前へと押して行き、タックルで場外へ吹っ飛ばす。潜り込んでパンチを放ってくるラジィオノワに、イワノワはヒザ蹴りで応戦。
自動延長に入ってもラジィオノワが左右のフックで突っ込んで行き、イワノワが首相撲からのヒザ蹴りで迎え撃つ展開。ラジィオノワは蹴り足をキャッチして転がし、大きく回り込んでチャンスをうかがっては左右フックでラッシュをかける。足を止めての打ち合いから、ラジィオノワがバックを奪ったところで試合終了。
身長差をものともせず、突貫ファイトを仕掛け続けたラジィオノワが判定5−0で勝利。身長145cmの世界女王が誕生した。
<日本代表選手の最終戦績>
▼-230級
中村知大(早稲田準支部)→決勝戦で敗退
宮地 孟(八王子支部)→準決勝で敗退
高橋 腕(新潟支部)→準決勝で敗退
平安孝行(中四国本部)→準決勝で敗退
太田秀俊(仙台北支部)→準々決勝で敗退
▼-240級
我妻 猛(角田同好会)→準決勝で敗退
田中俊輔(吉祥寺支部)→決勝戦で敗退
堀越亮祐(総本部)→準決勝で敗退
田中洋輔(早稲田準支部)→2回戦で敗退
青木政樹(浦和支部)→準々決勝で敗退
▼-250級
勝直光(関西支部)→1回戦で敗退
鈴木清治(石巻支部)→準々決勝で敗退
アレクセイ・コノネンコ(東北本部)→決勝戦で敗退
笹沢一有(中部本部)→準々決勝で敗退
服部宏明(九州本部)→準々決勝で敗退
▼-260級
大日向貴之(帯広支部)→準々決勝で敗退
佐々木嗣治(帯広支部)→準決勝で敗退
山田 壮(関西本部)→3回戦で敗退
木村猛(仙台北支部)→3回戦で敗退
池田隼太(帯広支部)→2回戦で敗退
▼-270級
伊藤征章(渋谷)→準決勝で敗退
稲田卓也(横浜北支部)→2回戦で敗退
菅原智範(石巻支部)→2回戦で敗退
▼270+級
キーナン・マイク(成田支部)→準々決勝で敗退
三木善靖(早稲田準支部)→準決勝で敗退
▼女子の部
神山歩未(日進支部)→総当たり戦の1回戦で敗退
坂原夕子(北河内支部)→総当たり戦の1回戦で敗退
岡裕美(横浜北支部)→総当たり戦の1回戦で敗退
前原映子(北本支部)→準決勝で敗退
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