「SHOOT
BOXING WORLD TOURNAMENT S-cup2004」
シュートボクシング協会
2004年9月19日(日)神奈川・横浜文化体育館
開場15:00 開始16:00
[オープニングマッチ]
▼第1試合 3分5R
○石川剛司(シーザージム)
KO 2R0分57秒 ※スタンディング・チョークスリーパー
●AGE(SOZ)
30歳と遅咲きのデビューではあるが、ここまで4勝4KO無敗の戦績を誇る石川がオープニングマッチに登場。強力なワンツーを筆頭にパンチが入る石川だが、SBへの拘りからか投げに固執するためもつれて倒れる場面が多い。ジャーマン・スープレックスの体勢に入ったところで1R終了のゴング。
しかし、2R開始早々に首投げを決めてシュートポイントを獲得、さらに首相撲からヒザ蹴りを入れて、そのままスタンディング・スリーパーに移行した。SBの技を駆使して、シュートボクサーらしい闘いで最高のオープニングを飾った。
▼第2試合 3分5R
○ワンロップ・ウィラサクレック(ウィラサクレックジム)
TKO 1R1分6秒 ※縦ヒジによるカット
●歌川暁文(U.W.Fスネークピットジャパン)
成長著しい歌川が“日本人キラー”のワンロップと対戦した。ワンロップは初来日では桜井洋平に敗れているものの、その後は藤原国崇、アトム山田といった日本王者を相手に快進撃を続けている。ワンロップは最初からエンジン全開、ワンツー、ミドルキックとスピード&パワー溢れる攻撃を見せる。歌川もアッパーを交えたパンチのコンビネーションで応戦するが、パンチでロープに追い詰められ、右ヒジから左の縦ヒジの連続攻撃でバックリと切り裂かれてしまった。
[S-cup2004ワールドトーナメント]
▼第3試合 S-cup2004 1回戦 3分3R 延長1R
○アンディ・サワー(オランダ/リンホージム/S-cup2002王者)
TKO 1R2分37秒 ※2ノックダウン
●オーレ・ローセン(デンマーク/KRS GYM
Team OLE/IMTC世界Sウェルター級王者)
「サワーよりも私の技術の方が上」と豪語していたオーレは、序盤はミドルとヒザ蹴りで攻めたが、サワーにプレッシャーをかけられてコーナーへ追い込まれ、レバーブローをもらう。サワーはさらに連打でオーレをロープ際へ追い詰めると、レバーブローを効かせてオーレの体を丸めさせ、その直後に右の飛びヒザ蹴り! これでダウンを奪うと、その後もサワーはレバーブローからの連打でオーレを滅多打ち、一方的になったためレフェリーがストップした。
▼第4試合 S-cup2004 1回戦 3分3R 延長1R
○ジェンス・パルバー(アメリカ/チーム・エクストリーム/初代UFCライト級王者)
TKO 1R2分58秒 ※左フック
●代常亮(中国/中国武術協会/2004年中国散打65kg級王者)
※右膝後十字靱帯断裂のためパルバーは棄権
総合VS散打の究極異次元対決。代はパルバーの周りを回りながら、サイドキック、ハイキック、ローキックを放っていく。リング中央でサークルを描く代を見ていたパルバーだが、徐々に左ハイ、左フックを放ちながら追い詰めていく。あまりにも動きすぎたためか、段々と代のスピードが鈍っていき、ついにパルバーに捕まった。回ろうとする代の先回りをするようにして左フックを決めたパルバーは、そのまま左フックを連打。たまらずかがみこむ代からダウンを奪う。最後もパルバーが左ボディを叩き、左フックでKOした。
▼第5試合 S-cup2004 1回戦
3分3R 延長1R
○アルバート・クラウス(オランダ/ブーリーズジム/K-1 WORLD MAX2002王者)
延長1回 判定3-0 ※10-9、10-9、10-9
●チャンプアック・チョーセパサート(タイ/ISSジム/WMTASウェルター級王者)
※左背中肋骨亀裂骨折の疑いのためクラウス棄権。
多くの関係者が優勝候補に挙げていたチャンプアックは、1Rにローとミドル、ボディへのストレートを単発で出すのみで見ているようだ。クラウスはワンツーで切り込み、捕まりそうになったらアッパーと速いパンチで応戦していく。
2Rはチャンプアックがクラウスの前進に合わせてテンカオ、ミドルを決めてボディストレートを放っていく。クラウスはやはり速いワンツーから入って行こうとするが、チャンプアックのテンカオ
とミドルに止められてしまう。それでもパンチを当てると、チャンプアックは“効いてないよ”とばかりに腰を振ってクラウスを挑発する。
3R、左ストレートからの左ミドルで攻めるチャンプアック。クラウスはボディを効かされているため、2R後半からは一発勝負の大振りが目立つ。右目の下も腫れあがってきた。チャンプアックはなおもテンカオとボディストレートで攻めたが、判定はクラウス有利の30−28が一人、30−30が二人で延長戦へ。
延長に入るとクラウスがジャブを多用し、距離を取ってからの素早いステップインを見せ、ワンツーを度々ヒットさせてチャンプアックの頭をブレさせる。後半はチャンプアックもヒザ蹴りで盛り返したが、アグレッシブでクラウスにポイントがついた。リングから降りたクラウスは右足を引きずっていた。本戦でクラウス有利につけた平直行レフェリーは、「クラウスのパンチが効いていて、チャンプアックはフラついてた。逆にチャンプアックのミドルはちゃんと背中で受けていた」と説明した。
▼第6試合 S-cup2004 1回戦 3分3R 延長1R
○カテウ・キビス(ブラジル/チーム・ノゲイラCWB
SPORTS/ストームムエタイミドル級王者)
TKO 1R1分32秒 ※ヒザによるカット
●緒形健一(日本/シーザージム/SB日本Sウェルター級王者)
この日に12年間の全てを賭けていた緒形、大きな叫び声を挙げて入場したが、運命は残酷だった。1R開始早々、カテウがパンチで攻め、緒形がブロックしながらやや下を向いた時だった。カテウの膝が高く上がり、緒形を蹴り上げたのである。
これで緒形は、右眉の辺りを大きく切り裂かれてしまった。ドクターチェック後、再開されたが緒形の傷口からは激しい出血が続く。傷口をカバーして闘おうとした緒形だったが、二度目のドクターチェックでストップがかかった。ショックの大きい緒形はマウスピースを吐き出して、その
場で座り込んでしまった。
▼第7試合 S-cup
リザーブマッチ 3分3R 延長1R
○宍戸大樹(日本/シーザージム)
判定3-0 ※30-29、30-29、30-28
●ブルース・マクフィー(ファイブ・リングス・ドージョー)
シーザー会長が宍戸のコーナーへ行き、「いいか、チャンスだぞ。絶対に勝て!」と腹に拳を当てて気合を入れた。おそらく、この時点でクラウスの棄権がシーザー会長に伝わっていたのだろう。プレッシャーを与えないため多くは語らなかったが、宍戸は何となく感じ取っていたという。
1R、パンチからローのコンビネーションで攻めるブルース。スピードもプレッシャーもある。対する宍戸は右ローを主軸に、パンチでロープに吹っ飛ばされても、その反動を利用してそのままニールキックを放つという破天荒な技を繰り出す。2R、やはりプレッシャーをかけてくるブルース。宍戸は連打でコーナーに詰まるが、ボディブローを耐えて左フックを返す勝負強さを発揮。パンチはよく見えているようで、クリーンヒットを許さず、ローキックを当てていく。投げは不発。
3R、宍戸は攻めまくる。右ローを強力にヒットさせ、パンチのコンビネーションでアッパーを突き上げた。ブルースも打ち返すが、宍戸が手数で押していき熱戦を制した。
▼第8試合 S-cup2004 準決勝 (A) 3分3R 延長1R
○アンディ・サワー(オランダ/リンホージム/S-cup2002王者)
判定3-0 ※30-29、30-28、30-29
●チャンプアック・チョーセパサート(タイ/ISSジム/WMTASウェルター級王者)
試合前、パルバーが棄権を自ら説明。プロ修斗の植松戦で痛めた左膝の負傷が再発したためだという。「まだいっぱい見せる事があったのに、負傷してしまいました。SBは素晴らしい。また機会があったら出たい。すいません」と涙声で挨拶した。
先にクラウスが棄権したためリザーバーの宍戸はカテウ戦へ。唯一、KO負けしていないチャンプアックが敗者復活した。1R、サワーはハイキック、レバーブローからのパンチのコンビネーションで優勢に攻めるが、チャンプアックは全く後ろに下がらない。パンチに合わせてテンカオ、ヒザを入れていき、ボディストレートでサワーのスピードに対抗する。
2R、ボディストレートからテンカオへつなぐチャンプアック。サワーを抱え込んでのヒザも繰り出す。サワーは強烈なレバーブローを効かせるが、チャンプアックは下がらない。両者足を止めての打ち合いに、場内は沸きに沸く。3R、サワーは顔面への前蹴り、左内股へのローキックでチャンプアックのバランスを崩す。またしても足を止めての両者の打ち合いに観客席がどよめく。チャンプアックは打たれても下がらず、前へ出てパンチ、ヒザ。サワーもインローを返して前蹴りで突き放すなどの総力戦となり、場内大盛り上がりの中、試合は終了した。この時点でのベストバウトだった。
▼第9試合 S-cup2004 準決勝 (B) 3分3R 延長1R
○宍戸大樹(日本/シーザージム)
判定3-0 ※30-27、30-28、30-28
●カテウ・キビス(ブラジル/チーム・ノゲイラCWB
SPORTS/ストームムエタイミドル級王者)
リザーバーとしてチャンスを掴んだ宍戸は、先輩・緒形の敵討ちに討って出た。凄まじい勢いで攻めるカテウに対し、宍戸はよくパンチを見切って右ロー。カテウの突進に合わせるように、バックハンドブローを出すとこれがクリーンヒット! さらに動き回ってローをヒットさせ、バックブローをもう一発。
2Rも宍戸の猛攻が続く。ローとボディブロー、顔面・ボディと使い分ける前蹴りと上下へ攻撃を使い分けながらパンチも当てていく。全く切れることない驚異のスタミナで、連打で攻め続ける宍戸。ローでもパンチのパワーでもカテウを押しまくる。カテウはバックドロップを狙うが、これは不発に終わった。
3R、一気に前へ出る宍戸はストレートの連打でカテウをコーナーへ追い詰めていき、カテウが反撃してくると意表を突くバックキック。これが見事に決まり、宍戸はバックキックを連発!さらにカニバサミの奇襲攻撃!打ち合いになってもパンチをよく見て返し、全く下がらない宍戸に場内から大歓声が沸き起こる。最後まで攻撃の手を休めなかった宍戸が、ついに決勝進出を決めた。
[スペシャルワンマッチ]
▼第10試合 エキスパートクラスルール3分5R(ヒジあり)
SB豪州ヘビー級王者
○ネイサン・コーベット(オーストラリア/ファイブ・リングス・ドージョー)
TKO 2R1分53秒 ※3ノックダウン
●ニルソン・デ・カストロ(ブラジル/シュート・ボクセ・アカデミー)
ローから組み合いに来ようとするカストロを突き放し、パンチを入れるコーベット。接近戦でも強打のパンチングパワーを発揮するコーベットは、ヒジ打ちを交えながら右フック、ワンツーでそれぞれダウンを奪うと、体が泳ぐカストロにダメ押しの右フック!カストロはバッタリと倒れこんだ。
▼セミファイナル エキスパートクラスルール3分5R(ヒジあり)
WPKL世界ウェルター級王者
○フィクリ・ティアルチ(ムシドジム)
KO 3R1分27秒 ※飛びヒザ蹴り
SB世界ウェルター級王者
●土井広之(日本/シーザージム)
土井は内・外とローを使い分け、フィクリの蹴りとパンチのコンビネーションを巧みに見切っていく。首投げでシュートポイントも奪い、優勢に1Rを終えた。しかし、2Rになるとフィクリは右ヒジの連打で下がっていく土井へ、ガードの上からヒジを叩きつけていき、劣勢へと追い込まれる。なぜか集中力がかけてしまったかの土井に、シーザー会長はインターバル中、「勝てよ!分かったのか!」と檄をとばす。
だが3R、フィクリがヒジの集中打から組み付き、それを嫌がった土井が離れたところで、フィクリは大きくジャンプしての飛びヒザ蹴り! これがモロにヒットし、ダウンした土井の右目上はバックリと裂かれていた。
[S-cup2004ワールドトーナメント]
▼第12試合 S-cup2004 決勝 3分3R 延長2R
○アンディ・サワー(オランダ/リンホージム/S-cup2002王者)
TKO 2R0分50秒 ※2ノックダウン
●宍戸大樹(日本/シーザージム)
※アンディ・サワーがS-cup史上初の二連覇を達成
前回の覇者サワーと、リザーバーから上がってきた宍戸の決勝戦。ここまで神がかり的な強さを見せてきた宍戸に期待がかかったが、サワーはその期待を完膚なきまでに打ち砕いた。
1R、フックでプレッシャーをかけてくるサワーは、宍戸がガードを固めると飛びヒザ蹴り。サワーがどんどんとパンチで前へ出てくると、宍戸も打ち返していくが、上から振り落とすような右フックを浴びて防戦に回ってしまう。宍戸はバックキックも放つも、サワーの前進は止まらない。右フックを浴びる宍戸にもはやこれまでか…と思った瞬間、宍戸は組み付いてスタンディングの肩固めを狙ったが、起死回生にはならず。打たれながらもニールキックを放つが、これも決まらなかった。
2R、出会い頭に当たったサワーの右フックで宍戸が遂にダウン! 一気にツメにかかるサワー。宍戸は首投げを見舞うが、これは体勢不十分でシュートにはならず。サワーは粘る宍戸をスピードあるワンツーで蹴散らすと、一気に踏み込んで連打を決め、KO勝ち。S-cup史上初の二連覇を達成した。
「私はこの1年間、いい試合が出来なかった。しかし、私は完全に戻りました。いい試合が出来てよかった。優勝できて本当に良かった。この勝利をオランダに持って帰りたいと思います。皆さんに感謝します」とサワー。完全復活の雄叫びを挙げた。
アンディ・サワーのコメント
チャンプアックが一番手ごわかった
「優勝した実感はまだ湧いてない。一番手ごわかったのはチャンプアック。彼は頭が岩で出来ているよ(笑)。宍戸もタフだったけど、チャンプアックが素晴らしかった。彼には本当に驚かされたよ。今までタイ人とは闘った事がなかったので、1・2Rはどうやっていいか分からなかった。(クラウスが棄権した事は)別に動揺しなかった。トーナメントでは必然的な事だからね。クラウスとは、正直言って闘いたかった。(パルバーは)いいボクサーだ。でも、弱点は膝だと気付いた。もし、闘っていたとしてもKO出来たよ。(決勝はSB同士になった事)今回の大会で、それが一番素晴らしい点だった。SBの闘いをどんどん広げる事が大事だからね。宍戸は良かった。グッドファイトだった。彼はとても素晴らしい選手であり、ハードな闘いだった。コンディション的にも良かった。グッドガイだと思う。
(今後の目標)もちろん、SBの試合をやる事が一番だ。あと、K-1MAXに出る事も目標だね。ハイレベルな試合に出て行きたい。(MAXのリベンジも)もちろんです。(賞金の使い道は)スイス銀行の口座に預けるよ(笑)。それは冗談で、これから子供が生まれるので、そのために使いたい。私は子供が大好きなんだ」
フィクリ・ティアルティのコメント
サワーとは友人だが試合をしたい
「土井はどってもいい選手だと思う。彼をKO出来たことは嬉しい。正直に言えば、もっといろんな技を出して、いい試合をしてKOしたかったんだけどね。自分としては、テクニックがあまり見せられなかったので、いい試合だとは思っていない。1Rに投げられた瞬間は驚いた。これはムエタイではなく、SBの試合だと気がついたよ。土井のローキックはあまり効かなかったね。(SBルールは)これからもっと練習すれば、問題ない。これからは自分もK-1MAXに出たいと思います。魔裟斗が最強のファイターだと思うので、魔裟斗とやりたい。(S-cupは)自分の階級なら出たい。S-cupはどの試合も素晴らしくいい試合だった。アンディの事は好きだよ。いい友人だ。しかし、機会があれば試合をしてみたい。あと、私の故郷をオランダだと思っている人が多いようだが、私はモロッコ出身だ。モロッコのために闘っているんだよ」
カテウ・キビスのコメント
チャンスがあれば宍戸ともっといい試合が出来る
「緒形は予想通り、素晴らしい選手だった。何回もビデオを見て自分も対策を練った、その結果だと思う。緒形を尊敬します。(カットは)ヒザ蹴りだね。ボクシングのコンビネーションから、ヒザが当たったんだ。宍戸にはおめでとうと言いたい。彼はテクニックのレベルが高い。SBルールを有効に使うことが出来た。宍戸戦はいい試合だったと思う。またチャンスがあれば、もっといい試合が出来るだろう。これは言い訳になってしまうが、ブラジルから来た疲れがあったね。(減量の影響は)修斗のスイス大会では80sで試合をし、今回の試合のためには15s減量した。これまで65、67、70、80sで試合をした事がある。減量の影響はやはりあったと思うが、いい試合が出来たから良かった」
ジェンス・パルバー
サワーとの対戦ならすぐにOKするさ
「植松戦で痛めたところと、同じ場所を傷めてしまった。サイドキックを予測していたら、角度を変えてローを蹴ってきた時に痛めてしまった。それで痛みが走ったので、勝機を急ごうと思ってKOに行ったんだ。トレーニングして完治したと思っていたのに…。代はサイドキックが得意で、背が高くていいファイターだった。僕はSBのルールが、スタイルがとても好きなんだ。いろんな事を試せたので、いいトレーニングになったと思っている。サワーはとってもいいファイターだね。コンビネーションも多彩だし。機会があれば、ぜひ闘ってみたい。彼には“ガードをしっかりあげておけ”と言いたいね(笑)。(サワーはすぐKO出来ると言っていたが)今回に関して言えばそうだね。一撃で終わっていただろう。SBにはもう一度、挑戦したい。サワーに伝えて欲しい。電話をくれればすぐに対戦をOKするとね。(他の選手は)クラウスは彼の試合をビデオで見て、試合を楽しみにしていた。今日、出場した選手はみんないいファイターだったね。(次の試合の予定は)まずは膝の精密検査をしなければいけないけど、おそらく11月25日にカナダのモントリオールでボクシングの試合になると思う」
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