熊久保 ここからは核心に触れようと思うんですが、なぜリングスは下降線を辿っていったと思います?
高柳 まずKOKルールが受け入れられなかったというのがあるよね。
熊久保 バーリトゥードが全盛の頃で、格闘技界がより刺激的な方向に進んでいましたからね。
高柳 競技者って最終的には総合格闘技を目指すベクトルにあるじゃないですか。リングスはそれを団体として目指していたんだけど、当時はまだ受け入れられなかったと思う。ちょっと早かったんじゃないかな。前田さんもこの前会った時に言ってましたよ、「WOWOWも、もうちょっと我慢してたらなぁ」って。今の総合格闘技の隆盛を見て、HERO'Sのスーパーバイザーに就任したというのもあるんだろうけど、「あと5年我慢していればな」って。僕もそれは一理あると思いますよ。現実的には我慢できない事情もあったんですけどね。
熊久保 後半はマンネリ化もありませんでした? 選手に関しても新しい選手が出てこなかったし、試合内容も同じようなものが増えちゃって。
高柳 結局、そういう時期に来ていたんだと思う。10年続くってことは、どんなに長いものでも一つの時代が終わる時期なんです。長寿番組でも10年続くものはほとんどないですよ。少なくとも選手が10歳は年をとるわけだし、10年続く興行団体なんて少ないわけだから、上手く保った方じゃないんですか。あとはWOWOW自体があの10年間で、予想していたような成長が出来なかったというのもあると思う。ただ、もしWOWWOWが予定以上に成長していたら、もっと早くリングスはなくなっていたかもしれないし、そればっかりは分からないですよね。
熊久保 前田日明という存在がデカすぎましたよね。前田さんを超える人っていないじゃないですか、現在においても。本人としては上手く世代をチェンジしたかったんでしょうけど、それが出来なかった。
高柳 前田さんがカリスマとして大きくなっていく一方だったよね。前田さんのファイトを知らない人たちまでもが、前田さんのことをより大きく捉え始めていて、前田さんのリングスとして続けるのが難しかったんじゃないかな。頭があまりにも大きくなりすぎちゃって。それは感じますよね。
熊久保 初めて前田さんが欠場した時に、ハンとフライで横浜アリーナを満員にしたじゃないですか。あれをもっと上手くやっていれば、違った結果になっていたかもしれないと思うんですよ。
高柳 前田さん自身が格闘家として下がり始めていた時だったし、リングスが旗揚げした時なんて前田さんは「35歳が限界だから」って言っていたんです。その時、前田さんはもう33歳くらいだったから、実際はもう少し現役を続けたわけだけど、あと2年くらいしかないんだって思っていました。前田さんの現役としての時期がとっくに峠を過ぎていたんです。ただ、そこで山本、田村、高阪が出てきて、1次・2次までは来ていたんだけど、その次が続かなかった。
熊久保 そうなんですよね…
高柳 だからやっぱりそういう寿命だったんだよ、きっと。今の時代でも続いているって想像できます?
熊久保 できませんね。
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