4月20日(日)東京・渋谷のスクランブル渋谷でジャパン・プロフェッショナル・ムエタイ・コミッション(JPMC)主催の『ルール・ジャッジ講習会』が開かれた。
これはJPMCのレフェリー&ジャッジのライセンス取得希望者を対象に行われた会で、JPMCやムエタイに興味を持つレフェリーやジャッジ、あるいはその希望者が12名参加した。
講習会のために招かれたのは、アネック・ホントンカム氏(65歳)。アネック氏はもう30年以上、タイでムエタイを裁き続けているムエタイの番人。現在はWBCムエタイ審判部長、7チャンネルのムエタイ相談役を務める傍ら、国内外でプロボクシングのレフェリーも務めている。また、シドニー工科大大学院を卒業するなど、学識豊かな“インテリ・レフェリー”だ。
アネック氏は、まずムエタイの概要について話し始めたが、その中身はムエタイについての知識を持っているはずのレフェリーや格闘技マスコミにとっても目から鱗(うろこ)の連続だった。
「ムエタイのジャッジは蹴りに対する評価が常にパンチよりも高いわけではない。強い蹴りを与えた方がダメージを与えられるケースが多いのでそういうふうに受け取られることもあるが、全て一緒。蹴りも打点の高いものがポイントになるわけではなく、ローキックでもグラつかせたらきちんと採点に加味します」
具体的なスコアのつけ方に対するスピーチでも、みな熱心に耳を傾けた。
「10点法では勝っている方を10点にしないといけない。一方、負けている方は9点、8点と減点されていく。でも5点以下の点はありえない。赤の選手が2点リード。でも、それから彼が一点減点された。そうなると9−8になるかといえば、そうはならない。勝っている方は10点じゃないといけない。ということで10−9になります」
アネック氏がクイズのように出席者に問いかける場面もあった。
「1ラウンド開始前、両選手がグローブを合わせることは握手代わり。スポーツマンシップに則ったものです。でも、選手がこれを強く拒否したらどうなるかわかりますか?」「……」「ノーコンテストとなります」
参加者はその厳格さに驚く。
「5R開始前もグローブを合わせます。ルールでやらなければならないのはこの2回。レフェリーはこれを忘れてはいけません」
アネック氏がレフェリーの動き方を直接指導する講習もあった。サークルを描くような基本的なレフェリーのステップ、両者がコーナー際で膠着した時のブレイクのさせ方、一方がダウンした時のカウントの数え方。アネック氏の動きは、とても65歳とは思えないほど軽快だった。
最後はJPMC認定のライセンスを取得するための筆記試験が行われた。この試験にパスし、その後これまでのレフェリー経験を加味するなどして審査をし、ライセンス交付となる。難問も多かったため、眉間に皺を寄せる受講者も。午前10時からスタートした講習会が終了したのは午後6時過ぎだった。出席したJPMC理事でレフェリーの小川実氏は言う。
「すごくためになった。アネックさんは態度が違うし、ブレイクのかけ方もうまい。また、ムエタイのルールの中でもジャッジは難しいというのが実感。それでも、今回のようにいろいろな団体のレフェリーが一同に会したことは、ひとつのムーブメントになっていくような気がします」
<ANEK氏のレフェリー暦>
AIBAジャッジ&レフェリー
チャンネル7 リングオフィシアル会長 30年間
WBCボクシング リングオフィシアル(インターナショナル) 23年間
(インターナショナル 13試合、タイトル戦 55試合)
WBCムエタイ リングオフィシアル会長
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