日本テコンドー協会(JTA)
「第19回全日本フルコンタクト・テコンドー選手権大会 ITA杯無差別級王者日本一決定戦」
2008年11月9日(日)東京・後楽園ホール
開場10:00 開始10:30
既存のライトコンタクトルールを改革し、技あり・一本勝ちを認めるフルコンタクトルールを採用した、7度目の全日本大会が開催された。同大会は『K-1
WORLD MAX』などで活躍する尾崎圭司(2002&2003年王者)を輩出したことで知られる。
フルコンタクトテコンドーとはリングを使用し、本戦3分(延長3分2回まで、決勝戦のみ3回まで)の無差別級トーナメント制で争われる。
上段・中段への蹴り(ローキックは禁止)と中段への突き(ただしアゴと額に限定した、蹴り技を生かすための突きや牽制のための突きは禁止されない)を用いての一本勝ちや技あり、または時間内にダウンがなければ判定によって勝敗が決せられる。
今回、男子無差別級には19名、女子無差別級には5名がエントリー。計23試合が行われた。
波乱が起きたのは男子準々決勝。昨年の全日本王者である高島大輔(川崎中原支部)が、昨年4位の鈴木明斗(川崎支部)に判定2−1で敗れたのである。
高島は、真正な無差別級王者であることを証明するためにあえて1回戦で組まれた、最重量110kgの強豪・趙哲来(福岡支部)を判定3−0で下し、快調な滑り出しを見せていたのだが…。
前大会で高島を後一歩まで追い詰めながらも惜敗した古谷知也(高知支部)は準決勝で敗退、同じく前大会で優勝候補だったプロキックボクサーで7戦無敗の坂本洸巳を破った試合巧者・朝比奈浩一(高知香南支部)は1回戦で姿を消した。
そんな中、決勝戦まで勝ち上がったのは尾崎の弟子で予選会2大会優勝の鈴木雅博(神奈川大横浜体育会支部)と、昨年準優勝の小松裕弥(東京城南支部)だ。
小松は2008年度K-1トライアルに合格し、同リーグで3戦して3勝無敗。準決勝では延長戦の末に古谷を破っている。一歩の鈴木は戦前から“台風の目”として挙げられていたホープである。
鈴木はそれまでの試合と同様、決勝戦でもパンチを上手く使った攻撃的な組手で激しく前に出る。サウスポーの両者はパンチから踵落とし、後ろ蹴りに繋げていく。鈴木が飛び後ろ蹴りを放てば、すぐに小松も同じ技を返す。左中段廻し蹴りを多用する小松に対し、鈴木はパンチから左上段廻し蹴り。本戦の試合時間はあっという間に過ぎ、旗判定は鈴木に一本挙がったが、1−0で延長戦へ。
後ろ横蹴りの応酬が2度あり、鈴木がパンチで突っ込んでいく。小松は踵落としからパンチのコンビネーション、さらに左中段廻し蹴りからパンチ。飛び後ろ蹴りの相打ちでは、鈴木が吹っ飛ぶ。さらに小松は左中段廻し蹴りを決めていくが、鈴木は前に出てのパンチ、回転系の技をアグレッシブに繰り出していった。
判定は3−0で鈴木の勝利。21歳の若きチャンピオンが誕生した。
鈴木は「一生懸命に練習してきたので、抱負通り神大テコンドー部に優勝トロフィーを持ち帰れてよかった。今日の試合だとあれで優勝かと思う人もいると思うので、来年は誰が見ても僕の勝ちだと思われるくらい完封できるように頑張ります」と優勝インタビューでコメント。奨学金20万円を何に使うかと質問されると「練習に付き合ってくれたみんなが応援してくれたので、一緒に焼肉に行きたいと思います」と答え、仲間たちからの声援を浴びていた。
鈴木を指導する尾崎は「いまJTAで勢いのある二人が決勝に勝ち残ったと思います。どっちに旗が挙がってもおかしくない二人だし、モチベーションも他の選手より高かったかと思います。結果は僅差だったので、これから二人がJTAを盛り上げてくれることを期待しています。鈴木は高校生で入門してきて、最初は何も知らなかったのにここまで強くなってくれて、僕に嬉しいものをくれました」と目を細める。
河明生JTA会長は「昨年に続いて新人が台頭した大会でした。昨年のチャンピオンが途中で敗退したので、不動の王者がJTAに存在しないことが証明された大会でしたが、若手が伸びるのは団体として喜ばしいことです。鈴木は166cm、66kgとかなり小さい選手なんですが、一生懸命に練習してきました。また、1ヵ月ほど前に神奈川大学の先輩を事故で亡くし、その想いが彼のモチベーションを高めたのかもしれない。これで供養できたと思うし、故人も天国で喜んでいるのではないか」と、総括と共に鈴木が秘めていた想いを打ち明けた。
女子無差別級では、昨年チャンピオンの江川沙織(横浜鶴見支部)を1回戦で破った高橋三恵(東京港支部)と、東京大会女性部3位・松兼ひとみ(東京港支部)が決勝戦を争った。
今大会がなんと7度目の全日本大会挑戦となる高橋が、パワーアップした蹴りで悲願の初優勝を成し遂げている。
また、開会式ではグラビアアイドルでJTAの道場に通う愛川ゆず季が、初めての踵落としによる試し割りの演武を披露。10月中旬に行われた昇級審査に合格し、黄色帯を手にした実力で見事、板を真っ二つに割ってみせた。
愛川ゆず季試割り式の詳細はこちら→
RESULT
▼組手無差別級トーナメント
優 勝 鈴木雅博(神奈川大横浜体育会支部)
準優勝 小松裕弥(東京城南支部)
3 位 古谷知也(高知支部)
4 位 鈴木明斗(川崎支部)
▼女性組手無差別級トーナメント
優 勝 高橋三恵(東京港支部)
準優勝 松兼ひとみ(東京港支部)
▼蹴武の型トーナメント
優 勝 植田博和(東京江東支部)
準優勝 野村修一(岡山備前支部)
▼新人賞
寺澤紗裕里(横浜市大体育会支部)
▼最優秀選手賞
鈴木雅博(神奈川大横浜体育会支部)
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