1月11日(木)都内ホテルにて、2006年12月31日(日)大阪・京セラドームで開催されたTBS/MBS/FEG主催『K-1
PREMIUM 2006 Dynamite!!』での秋山成勲(フリー)VS桜庭和志(フリー)戦に関する記者会見が行われた。
会見には谷川貞治イベントプロデューサー(以下EP)、磯野元HERO'Sルールディレクター、平直行HERO'S審判長、梅木良則レフェリーが出席、この一戦の裁定に関する結果報告が発表された。また秋山本人も会見に出席し、今回の件についてコメントを残している。以下、磯野ルールディレクターによる発表内容の詳細。
「秋山選手がクリームを塗ったことに対して『悪質な故意』か『過失』は議論が分かれるところです。しかし秋山選手がカメラの前で堂々とクリームを塗り、その映像を撮影スタッフに撮らせていること、本人を事情聴取したところ『あれは塗ってはいけないものだとは思っていなかった』と素直に認めていること、映像で聞き取れる秋山選手の会話などから『悪質な故意』とまでは判断できず、この行為自体については『過失』と認定いたします。
また秋山選手がオイルを塗った反則行為には、ルール上10%の罰金とされますが、これはあくまで審判団がオイルを塗ったことに気付き、そのオイルが審判団の手によって拭き取られて、試合がその後も成立した場合のみ適用されるものです。しかし今回は最後まで審判団が確認できないまま、試合が終わってしまったので、まず試合そのものが不成立、ノーコンテストとします。
秋山選手の反則行為はHERO'Sルールの第8条その20の『プロとして常識外の行為』と認定し、秋山選手を失格とすることを決定いたしました。
試合前後で、秋山選手のボディチェックは何度も審判団で行っておりますが、ワセリンやタイオイル等ではなかったため、明確にオイルや何かを塗っていると判断することができませんでした。このことは審判団の過失と自ら非を認め、桜庭選手に謝罪、審判団のミスに関してはプロモーターサイドに処分を一任しております。
なお過去、秋山選手が裸体で試合を行ったケスティス・スミルノヴァス戦のバックステージの映像も全てビデオで徹底的に検証しました。この試合に関しましては、秋山選手がクリームやオイル等を塗る映像は見られませんでした。
最終的な処分として、HERO'S審判団より、秋山VS桜庭戦をノーコンテストとします。そして反則行為を犯した秋山選手を失格とし、ファイトマネーを全額没収します。
クリームを塗ってしまった秋山選手に大きな責任があることは事実だと思いますが、審判団は何重にもチェックをしておきながら、それを見破ることができなかった。もし審判団がそれを見破っていれば、公平な形で試合を成立させることができた。それができなかったことについて、審判団一同深く責任を感じております。大変申し訳ありませんでした」
また、磯野ルールディレクターの発表を受けて、谷川EPからは「グローブチェックを見過ごした岸名審判員と芹沢審判員のギャランティを50%没収、ボディチェックでオイルの塗布を見つけられなかった芹沢審判員、平審判長、磯野審判員、梅木審判員のギャランティを50%没収。
グローブチェック及びボディチェックの両面でミスのあった芹沢審判員を6カ月の職務停止処分、桜庭選手のアピールに対応しなかった和田審判員のギャランティの50%を没収する」ことが告げられ、HERO'S審判団全員に対する厳重注意と改善策の検討およびルール改正を要求したことを明らかにした。
審判団ミーティングの内容報告、選手と審判団に対する処分が発表された後、谷川EPは改めてこの問題について以下のようにコメントした。
「大晦日の大会が終わり、控え室で桜庭選手が非常に興奮していたということをお伝えしたんですが、翌日の新聞で私も秋山選手のグローブにスポンサーのロゴが入っていなかったことをすぐに発見しました。
大きく分けてグローブとオイルの2つの問題があり、もしそれが事実ならば、秋山選手を永久追放して、タイトルを剥奪しようと思いました。そこで徹底的にこの問題を追求・解明してくださいと、審判団を含めTBSさんとオフィシャルの方から映像を集め、スミルノヴァス戦の映像を含めて、全員で確認しました。
大会当日は試合前後のボディチェックを行った上で、何も塗ってないという判断だったので、本来ならばそこで終わりの話なんです。ただしドーピングのように、大会後に反則行為を犯していたことが分かったのであれば、それはキチンと処罰すべきだということで、過去の試合を含めて全て映像をチェックしたために、(公式見解を発表するまでに)時間がかかってしまったという部分があります。
秋山選手が悪意でやったのか、それとも過失だったのか。グローブを見るにしても、私自身そして審判団を含めて、『何か細工しているじゃないか』『スポンサーのロゴがはがれるわけがない』という疑いの目で、すべての映像をチェックしました。しかしグローブに関しては全く不正は見つかっていません。
オイルに関しても、悪意でやったのか、それともワセリンは駄目だけどクリームはOKだと思ってルールを把握してなかったのか。もし悪意でやったのであれば許せないという思いで、ビデオを検証しました。しかしクリームを塗っている映像やその時の発言を見ても、控え室の真ん中で堂々と塗っていましたし、もし悪意があってやっているのであれば、トイレや人のいないところで隠れて塗るでしょう。
私もそのクリームを塗ってみたんですが、塗った直後はサラサラしているんですよ。でも水にぬらしてみたり、汗をかいていると絶対に滑るなと感じましたし、成分にはワセリンも含まれてます。ワセリンが入っているいないの問題ではなく、試合前には何も体には塗っていけないとされているので、クリームを塗ったという行為自体、秋山選手の駄目な行為だと思います。
秋山選手は事情聴取を受けた際、こちらがクリームを塗っている映像を見たと言う前に、『塗っていました』と素直に認め、自分の知識・認識が足りなかったことを素直に詫びました。その姿を見て秋山選手に悪意があったとは思いませんでしたし、悪意があったと認定するものは出てきていません。
オイルを塗って試合をしようとした場合、反則としてルール上はファイトマネーの10%を没収することになっています。過去に金泰泳選手が顔にワセリンを塗っていたとして、試合前にイエローカードを受けたことがありましたよね。今回は試合が最後まで進んでしまい、審判団の過失もあったことも事実です。
しかし秋山選手にはルール上で最も厳しい罰則、プロとしてあるまじき行為と判断して失格としました。試合が成立していない、リングに上がるべきじゃない状態だったわけですから、私はある意味、反則負けよりも重い行為だと思いますし、今回の審判団の処分に納得させてもらいました。
非常に残念なことではありますが、この件を変に隠して、うやむやにするつもりもありません。大晦日に視聴率20%近くを取った大会のメインイベントで起きたという重みもよく分かっていますので、このような発表をさせていただいた次第です。
桜庭選手にはすべてのことを報告しました。しかし正直に言って、桜庭選手は納得してません。桜庭選手からは『正々堂々と戦いたかったし、反則行為をされてボコボコに殴られたわけだから、どんな処分が下っても僕は納得しない』という話を受けています。
長く時間が経ってしまったこと、世紀の一戦である秋山VS桜庭戦がこのような結果に終わってしまったことは、審判団も含めて責任を感じております。桜庭選手並びに関係者の皆さん、そしてファンの皆さん、心よりお詫び申しあげます。すいませんでした」
なおコメントの終わりに谷川EPは「この件を受けて秋山VS桜庭の決着戦をやろうという気持ちは全くありません。お互い頑張っていけば自然と対戦する可能性もあると思いますが、この一戦をノーコンテストにして再戦をさせるために何とかしようという思いも全くありません」と語っている。
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