11月3日(日)東京・両国国技館にて開催されたシュートボクシング協会主催『SHOOT BOXING WORLD
TOURNAMENT S-cup 2006』で、悲願のS-cup初優勝を果たした緒形健一(シーザー)の特別インタビューが、シュートボクシング協会から届いた。歓喜のS-cup優勝を遂げた緒形の生の声を聞け!
――『S-cup』優勝、本当におめでとうございました!
「ありがとうございます。15年かかって、やっと取れました(笑)」
――振り返ってみると、会見の時から凄く落ち着いてましたよね。吹っ切れていたというか。
「その場にいる自分が幸せだなって思ったんですよ。『S-cup』っていう大きな目標があって、それに出られる自分がいて。緊張するっていうより“よっしゃ、これはやってやろう!”って。前みたいに“勝たなきゃいけない”“負けたらどうしよう”っていう感覚はなかった。
“ここまで、他の人間がやってないような経験もしてきたんだから、もう楽しまなきゃ損だな”って感じでしたね。今まで、ケガとか悔いが残ることが多かったんで、とにかく全力を出し切ればいいんだって。そういうふうに考えたら、開き直れましたね」
――そう考えるようになったのって、いつ頃からですか?
「ここ1年くらいですね。前はどこかでプレッシャーを感じてて、それがブレーキにもなってたんですよ。でも最近は20代前半の頃に持ってたものと、経験がうまくミックスされてきた。冷静さもあるけど、キレる時はキレるっていう(笑)」
――緒形さんはこれまでたくさんのケガをしてきましたよね。大事な試合で負けたこともあれば、「あと1年で引退」と宣言したこともありました。それに総合格闘技にもチャレンジして。そういう経験は、今から思うとどうでしたか?
「全部プラスですね。そんなどん底、誰も味わえないじゃないですか。その反動で上にも行けたんだと思いますね。ふり幅は極端なほどいいんだなって」
――正直“これはもう潮時なんじゃないか”と思ったこともありました?
「“もうダメなんじゃないか”って思いかけた時は、多々ありますよ。体が動かない、気持ちが出てこないっていう時は、正直ありました」
――それでも、現役を続ける支えになったものになったのは何だったんでしょう。
「これは自分の性格なんでしょうけど、落ちるところまで落ちると、必ず上を向いちゃうんですよ。横道にそれないんです。とにかく思ってたのは、“この苦しさからは絶対に逃げない”って。
ここで逃げたら一生逃げることになるんだと思って“もう一回やってみよう”と。その繰り返しでしたね。試合のことだけじゃなくいろんなことが重なって、頭が変になりそうになったことは何回もありましたから。でも、それが自分を成長させてくれたんだと思いますね」
――試合を振り返ってみると、一回戦からダウンの応酬という予想外の展開になりましたね。
「あそこは自分の悪い面が出ましたね。早く倒さなきゃと思って焦りが出た」
――ただ、5月のポール・スミス戦もそうなんですが、今の緒形さんは窮地に追い込まれてもそう簡単には負けないですよね。そこが以前との違いじゃないかなと。
「それは気持ちの差でしょうね。やっぱり、積もり積もった鬱憤がありますから(笑)。“絶対やってやる”って信念だけですよ。実際、ダウン取られた時なんてダメージで視界ゼロでしたから」
――周りがまったく見えていないという。
「コメカミを打ち抜かれて。あんなにダメージが残ったのって久しぶりですよ。そのせいで、左耳が聞こえない状態になりましたから。しらっとした顔してましたけど、内心は“やっべぇ!”って(笑)」
――それでも最後はKO勝ちしたわけですが、あの試合も含めて、『S-cup』での緒形さんはジャブとボディブローを多用してましたよね。
「練習ではできてたけど、試合では今まで出せなかったのがその部分なんですよ。今回はとにかく“自分が持っているものを出す”っていうのがテーマだったんですけど、まあ半分は出せたかなって」
――今までそれが出なかったというのは……?
「これまでに倒されたり、ケガをした嫌な記憶があって、もう一歩踏み込めなかったんですよね。それが、ようやく試合で吹っ切れた。ようやくですけど(笑)」
――準決勝の宍戸戦でも、ジャブが効果的でしたよね。
「練習でも、いつもあれで効かせてるんですよ。あいつもそれが分かってるんで、向こうにしたら“うわ、来た!”って感じだったと思いますね」
――とはいえ、やはりやりにくさはあったみたいですね。
「やりにくかったですね。勝たなきゃしょうがないんで非情になろうと思ったんですけど、やっぱりずっと一緒に練習してきましたからね。あいつが入門してきた日から知ってますから。本当に複雑な心境でした」
――非情にはなりきれないというか。
「勝ちに徹したつもりではいるんですけど、キレられなかったかなって。リングで宍戸が睨んできた時は“何をコラ!”って思ったんですけどね(笑)。やりにくさの反面、宍戸と準決勝をやって冷静になれたってところもあるんですよ。デビュー前から知ってる人間ですからね。アイツが何か仕掛けてきたら、体が勝手に反応するんですよ」
――本来の緒形さんの動きを取り戻せたと。そして決勝のサワー戦を迎えるわけですが、リングに上がった時はどんな状況だったんですか?
「いや〜、キツかったですね。トーナメントは本当に精神力の勝負だなと思いました。もう、最後は蹴る気がなくなるんですよ。“ああ、だから最近、アンディは蹴らないんだ”って分かりましたね(笑)。でも、アンディは凄いですよ。そういうトーナメントで、1年に2回も決勝をやってるわけですから」
――ただ“蹴る気がなくなった”と言いながらも、ローキックはよく決まってましたね。
「そうですね。そこはもう気力で」
――1Rにダウンを奪いましたが、その後の残り2Rはどんな気持ちでしたか。
「このまま終わるわけがないって思ってましたね。絶対、コイツは来るヤツだって。だから自分も、逃げないで前に出るしかないと」
――あの試合を見て思ったのは、ダウンを取ったのも凄いんですけど、そこからの反撃をしのぎきったのがさらに凄いなと。みんな、それでやられちゃってますからね。
「アンディの“赤鬼ラッシュ”を止めるには、こっちも鬼になるしかないなと。反撃に耐えるんじゃなくて、先手を取るしかない。それは試合の前から、頭の中で何度もシミュレーションしてました」
――1Rに奪ったリードを守ろうとしていては勝てないと。
「守りに入っても、アンディのラッシュだったらもってかれちゃいますからね。こっちから攻めていくしかないんですよ」
――判定を待つ間の気持ちはどうでしたか?
「勝ったつもりではいたんですけど、アンディもガッツポーズしてるし“周りから見たらどうだったのかな”っていうのはありましたね」
――実際、勝利が確定するまで凄く冷静な表情でしたよね。
「あれでドローだったら、一気にガクッとくるじゃないですか。だから延長まで覚悟してましたね」
――最後の最後まで、気を抜いてなかったと。大会の後はどんな感じだったんですか?
「家まで歩いて帰れると思ってなかったんですよ。だから試合前には家の掃除とか、身辺整理みたいなことをして」
――病院に直行するくらいの覚悟があったと。
「そうなんですよ、だから家に帰りながら“あれ、こんなんでいいのかな?”って思ったりもしましたね(笑)。病院どころか、それ以上のことも覚悟してましたから」
――大会から何日か経ちましたが、実感のほどはいかがですか?
「『S-cup』は取りたくてしょうがなくて、本当に念願だったんですけど、取ってみたら“こんなもんかな?”って感じなんですよね」
――「こんなもんかな」ですか(笑)。
「変な意味じゃなくて、やっぱり終わってしまえば、過去のものなんですよね。過去の栄光に引きずられるよりは、次に向かっていきたいなって感じなんですよね。ベルトを家に置いたのも、1日だけでしたし。あとは会長にお渡しして」
――あれだけ目標にしていた『S-cup』なのに、実際に勝ってみると次に目が行くというのは面白いですね。それだけ、今の緒形さんが充実してるってことなんでしょう。
「目標がない人生は楽しくないですからね。やっぱり敵がいないと」
――シーザー会長からは何か言われましたか?
「最初は“これまであきらめないでやってきた結果だよ”って言われたんですけど、何日か経って“お前、これで調子に乗ってんじゃねぇぞ”と(笑)」
――相変わらずキツイですねぇ(笑)。
「調子に乗ってるつもりはないんですけど、やっぱりクギを刺しとこうと思ったんでしょうね。“支えてくれる人がいっぱいいて、この優勝があるんだから”って。それは本当にその通りだと思いますね。僕もこれまでいろんな人間を見てきてますからね。調子に乗った人間がどうなるかは知ってるつもりなんで」
――そしてこれからなんですが、今、見えているものって何でしょう。
「今はですねぇ、なんか楽しくないんですよ。このところ練習もしてないし走ってもいないしで、メシもまずいんですよね」
――試合直後は「休みたい」と言ってましたけど、いざ練習を休んでみると(笑)。
「やっぱり敵がいないとダメなんですよね。根っから好きなんでしょうね。優勝の余韻とか、本当にないんですよ。今はもう次ですね、次」
――緒形さんにとっての“次”とは?
「シュートボクシングを極めたいってことですね。『S-cup』でも、優勝はできたんですけど投げが見せられなかったのが大きな反省点で。“打つ・蹴る・投げる”っていう競技を完成形にもっていって、後輩たちに伝えていくのが自分の仕事だと思ってます。ダラダラやってても、生きてる意味がないんで」
――『S-cup』で“強い緒形健一”を見た感想としては、これは滅多なことでは崩れないんじゃないかというのがあるんですよ。
「これを言っちゃうとどう思われるか分かんないんですけど……。またポカやっちゃう可能性もなくはないなと(笑)」
――ダハハハハ! 性懲りもなくそんなことを(笑)。
「ただ、今の精神状態だったら、自信はありますね。しかも『S-cup』で見せられたのは半分ですから。100%の自分を出せたら、もっと凄いものを見せられるんじゃないかなって」
――もしかして、次の『S-cup』も……。
「落ち込んでる宍戸には悪いんですけど、もう一回立ちはだかってやろうかなって(笑)。そういう気もなくはないんですよ」
――K-1MAXや年末のDynamiteという声もありますが
「当然、最強と言われてるブアカーオとはやってみたいです。彼はアンディをKOした男ですし。でもそれは、僕がやりたいと言って出来ることでもないしタイミングもあると思います。」
――MAXで闘ってみたいのはブアカーオだけ?
「魔裟斗選手ですね。やっぱりなんだかんだ言って日本人の中では郡を抜いてると思うし、是非闘ってみたいファイターです」
シュートボクシング協会
「NEO ΟΡΘΡΟΖ Series.〜FINAL〜」
2006年12月3日(日)東京・後楽園ホール
開場17:00 開始18:00
※スターティングファイト17:30〜
<決定対戦カード>
▼メインイベント 70kg契約 3分5R
宍戸大樹(シーザー/SB日本ウェルター級王者)
VS
ダマッシオ・ペイジ(ジャクソンズ・サブミッション・ファイティング/WEF世界ウェルター級王者)
▼第6試合 60kg契約 エキスパートクラス3分5R
及川知浩(龍生塾/SB日本フェザー級王者)
VS
ツァン・ジャ・ヒ(韓国/Tae San Gym/韓国ムエタイ協会スーパーフェザー級王者)
▼第5試合 60kg契約 エキスパートクラス3分5R
歌川暁文(日本/UWFスネークピットジャパン/SBフェザー級2位)
VS
ジュン・ビュング(天氣/韓国ムエタイ協会フェザー級王者)
▼第4試合 65kg契約 エキスパートクラス特別ルール3分3R
三原日出男(シーザー)
VS
五味慎一郎(湘南)
▼第3試合 55kg契約 エキスパートクラス特別ルール3分3R
えなりのりゆき(シーザー)
VS
脇田 誠(風吹)
▼第2試合 61kg契約 スターティングクラス2分3R
南 健介(シーザー)
VS
栃岡 裕輔(龍生塾)
▼第1試合 57kg契約 スターティングクラス2分3R
阿部マサトシ(AACC)
VS
調整中
<チケット料金>
RS席10,000円 SS席7,000円 S席6,000円
A席5,000円 B席4,000円
※当日券は各500円増し。
<チケット販売所>
イープラス=http://eee.eplus.co.jp
CNプレイガイド=http://www.cnplayguide.com
チケットぴあ=0570−02−9999
ローソンチケット=0570−00−0403
フィットネスショップ=03−3265−4646
レッスル渋谷=03−3464−0078
板橋大山アメリカン=03−3962−6443
チャンピオン=03−3221−6237
書泉ブックマート=03−3294−0011
後楽園ホール=03−5800−9999
<お問い合わせ>
シュートボクシング協会=03−3843−1212
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