3月21日(水・祝)東京・町田市立総合体育館サブアリーナにて、日本コンバットレスリング協会主催「第13回全日本コンバットレスリング選手権大会」が行われ、PRIDEライト級王者・五味隆典(久我山ラスカル)が73kg級で優勝を果たし、優秀・最優秀選手特別選考試合でも一本勝ちを収め、大会MVPに輝いた。
2月PRIDEラスベガス大会でニック・ディアス(アメリカ)にまさかの一本負けを喫した五味が、復帰のリングに選んだのは、自身の原点とも言えるコンバットレスリングの舞台だった。
坊主姿にどこか初々しさを感じさせる五味は、他の選手と同じようにマットでウォーミングアップし、チームメイトと笑顔で会話をかわすなど、リラックスした表情を浮かべ、自分の試合直前になっても、久我山ラスカルジムの教え子たちの戦いを見守り、アドバイスを送り続ける。
そしてコンバットレスリングショーツでマットに上がった五味。1回戦は全日本修斗グラップリングで2位の実績を持つ小林正俊(秋本道場ジャングルジャンクション)を相手に、やや動きに固さが見られたものの、アームロックによるキャッチポイントを奪ってポイント1-0で勝利。
続く準決勝では、弟分の帯谷信弘(木口道場レスリング教室)もセコンドに着いた渡部正志(木口道場MMA教室)と対戦し、バックと腕ひしぎ十字固めでキャッチを奪い、堂々の決勝進出となった。
決勝戦の相手は昨年の全日本選手権で準優勝を果たしている岡澤弘太(総合格闘技GROW)。五味は序盤から岡澤の頭を落としてコントロールし、ポイントにはならなかったものの、何度もタックルで岡澤からテイクダウンを奪っていく。
2Rには岡澤の引き込み際に足を一本抜いて、ハーフガードの状態でじっくりと押さえ込み、そこからパスガード、サイドポジションからアームロックを狙っていく五味。なかなかタップしない岡澤だったが、五味はそれを見て冷静に腕ひしぎ十字固めに切り変えて、2R1分24秒、一本勝ちで危なげなく優勝を果たした。
さらに五味は優秀・最優秀選手特別選考試合でも、67kg級優勝の馬場勇気(ロデオスタイル)にバックからのリフトを狙うなど終始試合を有利に進め、最後はネックロック気味にがぶった状態から、引き込む馬場に対してグラウンドでサイドポジションを取ると、しっかり腕ひしぎ十字固めを極めて、最優秀選手賞MVPの座を確かなものにした。
大会終了後、「普段ジムでやっていることと一緒ですね。こうやって若い人たちと触れ合うのはいいことですね」と語った五味。「PRIDEで3年間、上だけを見てやってきましたけど、今日の大会に出ていた選手たちとどちらかがプロかアマチュアか?
色んなものに左右されることなく、好きなことを仲間達とやるということは、志が高くないと続けられないでしょう。練習しなければアマチュア以下のプロの選手もいるだろうし、アマチュアでもしっかり練習をしていれば、プロ以上の選手もいる。
一回戦で対戦した小林選手は、僕がK'zFACTORYにいた頃から同じ釜の飯を食った仲間で、今でも格闘技が好きでこの大会に出てきている。その一方で次の世代の子たちも出てきていて、今日僕と対戦した19歳の子なんかは、いい経験になったと思いますし、3年後の彼が楽しみですよね」と、4年ぶりとなるアマチュア大会の感想を述べる。
ラスベガスでニック・ディアス(アメリカ)に敗れてからの復帰戦であったものの、五味は「復帰戦も何も関係ないですよ」と笑う。
「自分の道をここからスタートしていく。自分のあるべき姿があって、この前の修斗のルミナさんや自分を鍛えてくれた先生がいて、その中で一個ずつ確認していく。
難しい部分もありますけど、自分のペースで戻って来れたと思いますし、色んなものに左右されずに芯のある練習をやって、ジム生と精神力をつけていきます」と、今回の試合の意味を語ってくれた。
そんな五味だからこそ、ディアスとの再戦やライト級GPについては「のんびりして、スパにでも入りながらじっくり考えます(笑)」と、焦りは感じられない。
大会を見守った木口道場・木口宣昭会長も「過去の栄光を別にして、リスクを承知でこの大会に出てきてくれた。純粋無垢な気持ちでアマチュアの試合に出る姿は、うちに入門してすぐの頃の顔に戻っていましたし、この前一緒に飯を食った時の話し方なんかも、初心に帰っているなと感じました。今日の大会は、気持ちを新たにリセットして、再出発の第一歩になっていると思います」と、今大会が五味のリスタートのキッカケになるだろうと語った。
表彰式で名前を呼ばれると、五味は軽く両手を挙げてギャラリーにアピールする。そして木口会長から賞状とメダルを渡されると、少し恥ずかしそうな表情を浮かべ、メダルをじっと眺めた後はニッコリと笑顔を見せた。2007年の五味隆典は、この日ようやくスタートを切った。
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