「昨日は運営上の欠陥、ミスが露呈した大会だった。試合自体は激闘、まさにスーパーファイトのレベルに申し分ない手に汗握る試合の連続で大会としては良かったと思います。しかし、安全面の管理はいかがなものかということが露呈した」
8月6日(日)都内ホテルにて行われた『HERO'S2006 ミドル&ライトヘビー級世界最強王者決定トーナメント準々決勝』の一夜明け会見で、最初に挨拶した前田日明スーパーバイザーは開口一番、昨晩から大きな話題となっているレフェリング問題に言及した。
記者からも3人がレフェリング問題に対しての質問をした。最初に桜庭VSスミルノヴァス戦のレフェリーの判断をどう思うか聞かれた前田スーパーバイザーは、次のように答えている。
「あの試合は桜庭がコーナーでダウンする感じでつんのめってた時点で止めないとダメでしたね。詰まって何発かもらって、首がガクッとした時かな、レフェリーが止めたのかなと思ったらリング内に入れて。自分はレフェリーに“何やってんだ!”と言って、次にドクターを見て“止めろ”と言ったらドクターがオロオロしていて、どうにもならなくて自分が立ち上がって“止めろ!”と言いました。あれは本当はやっちゃいけない。
逆転勝ちもいいんですけど、脳へのダメージが心配だから。無意識の状態でも人間は防御反応が働いて、それでやっちゃうと一番ダメージが脳に溜まる。溜まると反応が悪くなったり、運動系にダメージがあって。桜庭はアローナの時に今回の試合と同じか、それ以上のダメージをもらっているので、周りが注意してやらないと。警戒のマニュアルが働いていなかったことを残念に思います」
次に「今までのHERO'Sは早めのストップをしていたのになぜ今回は遅かったのか、桜庭選手のセコンドにタオルを投げられる人がいなかったのが問題ではないか、ダメージを見て10月の出場を辞めるケースもあるか」との質問が飛び、前田スーパーバイザーは次のように答えている。
「危機管理のマニュアルが出来ていなかった。レフェリーもジャッジもドクターも、全部機能していたのかという疑問がある。自分も危ないと思って止めようとしたが、誰も言うことを聞いてくれなかった。正直、スーパーバイザーって何なのかなって疑問に思いました。危機管理のマニュアルを徹底しないと。これは殺し合いではなく、スポーツとしてやっているんですから。傷害を残さずにやるのが一番大事。周りの人間が選手を守ってあげるべき。
勝敗を気にする人もいるけど、自分を倒すような強い選手が現れた、強いヤツがいたってそれだけのことなんですよ。まず、安全。選手が安心して闘えるような場を作ることが大切でしょう。桜庭の10月は様子を見て、慎重にやるべきだと思います。桜庭は総合格闘技のステータスを上げた一番の役割を担った選手なので、大事にしてあげたい。出来るか出来ないのか、冷静に判断して見極めたい」
次に谷川プロデューサーが答えた。
「HERO'Sは止めるのが早いという事ですが、レフェリー&ジャッジからもそういう声が多くて実際に止めるのが早いんです。レフェリー、ジャッジが何を考えていたのかは分かりませんが、人間なのでレフェリーの人が復帰戦だからトコトンやらせてあげたかったと考えていたのかは分かりません。僕は冷静に見て、止めるべきなのかどうかのタイミングは難しいと思います。前田さんの言ったとおりシステムが問題ですね。
運の悪いことにルールディレクターの磯野さんという人がいるんですが、金VS秋山戦でモメて何人かのレフェリーもついていっていなかったんです。競技関係の人数が減っていたんです。K-1と比べるのはよくないんですが、K-1にはルールディレクターの他に審議委員長の角田さん、審判長の上にオブザーバーとしてK-1の審議委員にレフェリーやジャッジはやらないんですが、猪狩先生、島先生、田畑先生がいるんです。その方たちは相撲のもの言いのようなもので、あまりにも酷い判定やジャッジがあったらもの言いの権限が与えられています。
HERO'Sではそういうことをこれまでやっていなかったんです。僕は解説があったし、コーナーの右側奥だったのでよく分からなかったんですね。システムの問題だと思います。どういうシステムでフォロー出来るか。次の大会へ向けて早急に作っていきたい。10月に関しては当たり前のように、医学的にも本人の気持ちも含めてキチッとやっていきたい」
また、桜庭戦の感想を求められた秋山と大山は、「自分がどう言っていいのか分からないけど、ある意味選手ですし、人間ですので本当に前田さんの言われたとおり殺し合いではないし、しっかりした自分たちが安心して試合が出来ればな、と思います」(秋山)「ファンの立場として見れば桜庭さんらしい素晴らしい試合だと思いました。選手として見れば、ちょっと怖いなという部分はありました。ストップの基準が曖昧なので、しっかりしていただければありがたいな、と思いました」(大山)とそれぞれ語っている。
桜庭は試合後、病院へ向かいCTスキャンをとったが異常はなし。安全のため点滴を打ち、月曜日にはMRIでさらに詳しく検査する予定だという。この日は、「ダメージが激しく出席は困難とドクターも言っている」との理由で会見を欠席、メルヴィン・マヌーフはフライトスケジュールの関係で欠席した。
なお、桜庭VSスミルノヴァスのストップ問題について谷川プロデューサーは「レフェリー、ジャッジ、ドクターを含めて競技役員に問題点が出てきた。ルールミーティングを開いて、正式な回答書を頂いて皆さんに出します」としている。
●谷川プロデューサーの囲み
「桜庭選手自身は“プロレスラーだから相手のいいところを引き出してたでしょ。引き出しすぎたけど”と言っていました。ダメージは“大丈夫”と言って、“盛り上がってました?”と言ってました。僕が見る限りは試合前は凄く嬉しそうで、機嫌がよくて舞い上がっていたように見えましたね。桜庭選手らしからぬというか。シュート・ボクセに入って何であんなパンチが打てるのかなと。力が入りすぎたのかなと思いました。全然、大丈夫とは言っていました。明日、神奈川県内の病院に検査入院します。何もなければその日の内に退院しますが。桜庭選手には炎のコマとかを見せる桜庭選手に期待していたのに、喧嘩モードで行ってたから何をやっているんだろうと思いました。
桜庭選手は元々顔が腫れやすいので、いたって大丈夫とは言っていました。CTは問題ありません。ただ脳が腫れる可能性もあるので、点滴は打ちました。
止めなかったのは悪かったですが、KIDや元気ではないドラマを作り出せる選手だと思いましたね。あと、試合時間を10分にしたのは桜庭選手が言ったからじゃないですよ。最初からライトヘビーは1R10分で実験しようと思っていたんです。
マンバとメンジバーは名勝負製造機ですね。誰とやっても面白くなるでしょう。カルバンは70kgでKIDくらいの何かを持っている。瞬発力とか野獣性とか、“神の子”という感じがしました。
TBSさんからは“面白かった”とだけ言われました。秋山VS金は極まった瞬間に抜くところだったんですね。1回は極まったと思う。金ちゃんは根性があるから、湿布も氷も付けず帰って行きました。抜けそうだったんですね。秋山選手が離したから抜けちゃったんです。アレは難しいですね。
桜庭選手はKIDや元気とは違う雰囲気の試合が出来るので、それが凄く嬉しい」
TBS
「HERO'S 2006 ミドル級&ライトヘビー級
世界最強王者決定トーナメント決勝戦」
2006年10月9日(月・祝)神奈川・横浜アリーナ
開場14:30 開始16:00(予定)
<出場予定選手>
▼ミドル級トーナメント
宇野薫(日本/和術慧舟會東京本部)
ハニ・ヤヒーラ(ブラジル/アタイジジュニア柔術)
J.Z.カルバン(アメリカ/アメリカン・トップチーム)
アイヴァン・メンジバー(カナダ/トリスタージム)
▼ライトヘビー級トーナメント
桜庭和志(日本/フリー)
大山峻護(日本/フリー)
メルヴィン・マヌーフ(オランダ/ショータイム)
秋山成勲(日本/フリー)
※ライトヘビー級トーナメントは1R10分・2R5分 延長5分1R
※ミドル級トーナメントは5分2R 延長5分1R
<大会に関するお問い合わせ>
HERO'S実行委員会=03-5775-5065
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