5月4日(木)都内ホテルにて、HERO'S緊急記者会見が行われ、FEG谷川貞治代表、前田日明スーパーバイザー同席のもと、桜庭和志(フリー)の参戦が発表された。以下、会見内容詳細。
谷川代表
「まず私の方から経緯を説明させていただきますと、先月に入って3月で桜庭選手が高田道場を円満退社されたという噂が私のところにも入ってきました。
その話を聞きまして、だったら食事でもしたいなと幾つかの知り合いの方とお話していたんですが、いてもたってもいられなくなり、私の方から桜庭選手に連絡を取らせてもらった次第です。私の気持ちを言いますと、現在のK-1とPRIDEさんの状況などそういった思いとは全く別に、桜庭選手に関しては一ファンとして必ずPPVで試合を見させてもらっていました。
私がPRIDEさんの仕事を手伝っていた時期に、桜庭選手は一番思い入れのある選手でしたし、この3年間くらいの桜庭選手を見ていて、批判でも何でもなくプロデューサーという立場から『ああしたいな、こうしたいな』という気持ちは正直に言ってありました。それで桜庭選手がフリーになった時に、そういう話もしたいなと。
そこで桜庭選手に連絡を取って、久しぶりに会うことになり、ほとんどそういった話もしなかったんですが、本当に最後の方に少し話をしたところ、桜庭選手の中にはHERO'Sで戦うという気持ちはほとんどなかった、10%もなかったと思います。『今は悩んでいると思うので、知り合いの弁護士の先生と相談してください』と話して別れました。
そしてラスベガスから帰ってきた今週の月曜日に、弁護士の先生と連絡をとったところ『一度お話をしましょう』と。そこで桜庭選手の方から『HERO'Sで戦います』と言われました。ただかなり桜庭選手は酔っていたので本当かどうか分からなかったんですけど、桜庭選手の方から『明日、榊原社長のところに行ってきます』となり、それで火曜日に榊原社長のところへ行かれたと思います。
その時に僕が感じた桜庭選手の表情は、酔っぱらっていたのではなく、目も真っ赤でかなり動揺している感じでした。色んなことはあったと思いますが、『明日は自分はHERO'Sのリングに上がります。それが一番気持ちが吹っ切れることだと思います』となり、急遽昨日の大会に来場してもらうことになりました。
スタッフやTBSの方々にも当日の朝に連絡するという形になり、フジテレビさんにも連絡して、榊原社長にも連絡を入れたんですが留守電になっていて。そういうバタバタした中で、桜庭選手登場が決まったという状況です。
桜庭選手自体は決して私の前でPRIDEさんでどうだったか、高田道場さんでどうだったか、という話は一切しませんし、僕はそれは関係ないと思います。桜庭選手が自分自身の格闘技人生の中でどうしていこうかと迷っている時期に、お話をさせてもらってこういう形になったと思います。
皆さんも桜庭選手のことは良く分かっていると思いますが、お金で動くような選手ではありませんし、心機一転何か新しい戦いの場を求めようという気持ちが大部分を占めていて、そこで決断していただけたと思っています。
桜庭選手が今後Dynamite!!やHERO'Sに上がっていくということになれば、格闘技人生も残り数年、完全燃焼出来るように出来る限りのことをしてあげたいなと。HERO'Sに出ている選手には直前で(桜庭参戦を)伝えたのですが、みんな驚いていて刺激を感じていたので、桜庭選手が入ってくることでより活性化するリングになると思っています。
桜庭選手本人は本当に悩まれて、ここ最近はずっと飲んでいたみたいで、昨日は本当に来てくれるのかなって心配もしていたんですが、ちゃんと会場に来てくれて『決断してもらったんだな』と。リングに上がった直後はまだ迷っていますと言っていたんですが、今日もこうして会見に来てくれましたから。
とにかく私が桜庭選手にひたすらラブコールを続けていて、こういう形になりました。桜庭選手を自分たちのプロデュースでさらに輝く存在にしたいという気持ちだけで、こういう状況になった次第です。
自分自身も驚くほど短期間に決まったことなので、8月のトーナメントも含めまだ今後のことは何も話していませんが、この日を一つの区切りとして桜庭選手も道場を作ると思いますし、お互いにいいコミュニケーションをとって、最高の形で最高の舞台にしようと。一生懸命頑張って桜庭選手を盛り上げていこうと思います」
桜庭和志
「新しいところで一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします」
前田日明
「彼のような選手は色んな意味で大事にしていかなければいけないと思います。日本において総合格闘技がメジャースポーツになれるかどうか、という壁を破った一番の最初の選手だと思うんです。桜庭選手の出現で総合格闘技が日本に根付いたと。
自分らなんかは総合格闘技の取っ掛かりの部分から始めていて、関わっている間は総合格闘技がメジャースポーツになれるように邁進しているんですけども、自分らがいなくなった後に、桜庭選手のような人間に後を引き継いでやってもらいたい。
選手としているうちは100%ポテンシャルを発揮できる舞台でやらせてあげたいです。自分もテレビで桜庭選手の試合を見ていると、こういう状況で試合をするのは大変だなと思っていて、相当なプレッシャーがかかっているんだろうと。ただその中で結果を残しているので、たいした選手だなとも思っていました。
桜庭選手はもっとのびのびと、まだまだ時代を築いていける選手ですし、もっとポテンシャルを発揮して、総合格闘技の奥深さを知らしめることが出来る。選手の100%を発揮させる状況で試合をさせるというのが基本で、あんまりそれ以外のことに引きずられないよう気をつけてやっていきたいなと。
桜庭選手には自分たちの世代が出来なかった事を、自分たちが渡したバトンをこれからの選手たちにも渡していって欲しい。これからも総合格闘技がずっと続いていくように、そういった役割を担って欲しいと思います」
●記者からの質疑応答
――今後の練習環境について教えてください。
谷川 K-1のジムもありますし、トータルワークアウトさんやゴールドジムさんとも提携しています。桜庭選手が個人的に親交のある和田レフェリーも道場もやっていますし、色んなところがあると思います。桜庭選手が道場を作りたいというのもありますし、それまでは私たちが練習場所を提供したいと思います。
――試合はいつ頃を考えていますか?
桜庭 そこまで詳しい話はしてないんですけども…今のところは8月をどうやってかわそうかを考えていて、それでいっぱいいっぱいです(笑)。
――HERO'S参戦を決心した一番の理由と、HERO'Sに対する印象を聞かせてください。
桜庭 谷川さんに「好き好き」言われてしまって、僕も人間なので好きになってしまいました。HERO'Sにはいい選手がいて、戦ってみたい選手もいるので楽しそうだなって感じです。
――戦ってみたい選手は誰ですか?
桜庭 ブラックマンバです(笑)。
――今、PRIDEに対してはどんな気持ちですか?
桜庭 色んな意味で感謝の気持ちしかありません。PRIDEだけじゃなく高田道場に対しても感謝の気持ちだけです。
――前田スーパーバイザーからは次の世代の選手についての話もありましたが、どういった選手を育てていきたいと考えていますか?
桜庭 ブラックマンバのような選手を育てたいと思います(笑)。
――桜庭選手はブラックマンバ戦を熱望していますが。
谷川 体重が違いますし、トーナメントにも残っていますし(笑)。8月は無理ですが話し合っていきたいと思います。
――基本的には85kg級が主戦場になりそうですか?
谷川 その体重でやると思います。無理して体重を増やしたり、減量する必要もないと思います。桜庭選手の適正の体重でやってもらいたいです。桜庭選手は「HERO'Sって名前はどうします?」「ルールはどうしますか?」と、もっと原点の話をしていまして、もちろんそれは変えませんけども、個人的には8月のトーナメントに出て欲しいと思います。
――桜庭選手自身はトーナメント参戦についてはどうでしょう?
桜庭 ブラックマンバ選手が相手だったらやります(笑)。
――道場の開設はいつ頃を考えていますか?
桜庭 今年中に出来ればいいかなと思います。
――年齢的なものを考えると競技人生はあまり長くないと思いますが、これからはどういったキャリアを積んでいきたいと考えていますか?
桜庭 僕はNOAHの百田選手を目標にしていますので、まだまだ(現役で)行こうと思っています。特に目標とかはないですけども、いつも言ってることなんですが、一つ一ついい試合が出来ればいいなと思います。
――PRIDEのリングで戦う桜庭選手に期待するファンも多かったと思うのですが、そういったファンに対してはどんなことを思っていますか?
桜庭 こないだ新聞で見たんですけど、無差別級GPには選考漏れになっていたので、行き場がなかったっていうのもあったし、NOAHにも行こうと思っていたんですけど、それも難しいなって感じで…昔、長州さんが新日を辞めて全日に行った時に凄く盛り上がったじゃないですか? そういうことを僕もやってみたいし、それで(K-1とPRIDEが)仲良くなってもらったらいいなって。
――今後もう一度PRIDEのリングに上がる可能性はあるということでしょうか?
桜庭 僕は両方のリングに上がりたいと思いますし、それはその時のキッカケもあります。その前にまずは(K-1とPRIDEが)仲良くなってもらいたいなって思います。
――HERO'S参戦については高田さんとはお話されましたか?
桜庭 高田道場を辞めた時点では色々話しましたが、今回の件に関しては榊原さんと話していました。
記者会見終了後に、囲み取材に応じた桜庭の知人の弁護士によれば「高田道場との契約が切れてから、色々な話が来るようになってすごく悩んでいました。このまま行くと3年くらいは悩んで死んじゃうじゃないかと思うくらい(苦笑)。桜庭本人はあまり語りませんが、もっと大きな意味で業界を盛り上げていきたい、以前のようにPRIDEとK-1が交流できるようになればいいなと考えています」と桜庭の近況について語った。
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