4月8日(日)埼玉・さいたまスーパーアリーナで行われたDSE主催『PRIDE.34』のリングに、昨年PRIDEからライバル団体のHERO’Sに移籍した桜庭和志(フリー)が現れ、田村潔司(U-FILE
CAMP)と握手を交わした。
大会の休憩明け、今大会でPRIDE代表の座から離れるDSE榊原代表がファンに向けてメッセージを送る中、「一つだけ実現しなかったカードがあります」と告げる。するとここで「SPEED2」のテーマが流れて、タイガーマスクを被った桜庭が花道に登場! 誰も予想だにしなかったビッグサプライズに、さいたまスーパーアリーナが揺れる。
そして桜庭の次に現れたのは田村潔司。田村は目に涙を浮かべながら花道を歩く。リングには桜庭と田村、そして榊原代表。実現しないと思われていた3ショットに、榊原代表が感慨深そうな表情でマイクを握った。
「みなさん、こうして二人がリングに立ってくれています。DSEとしては最後の興行、僕はPRIDEの代表と言う立場を辞めますが、この二人が同じリングに立っている事実を胸に刻んで欲しい。PRIDEのスタッフには実現できなかったこのカードを新体制で実現させてください。このリングに二人が立つまで三年半、タムちゃんがいる登戸に何度も行きました。そして僕の想いをサクちゃんも伝えましたし、ファンの皆さんにも伝えました。
なぜ僕がこのカードにこだわるのか? このカードは競技としての美しさ、選手がかけてきた人生、僕が見て欲しいものすべて、見せたい要素が全部詰まったカードになるからです。この二人がこうしてリングに立っている。それは試合をする意思があるからです。今後、このカードが実現することを願いたいです。
ここに桜庭和志がかえって来てくれました。3月27日にサクちゃんから直接電話もらって『試合させてください』と言われました。ただしこのリングに立つだけでも、たくさんのハードルがありました。大きな心で受け止めてくれたK-1関係者のみなさん、本当にありがとうございました。将来、いくつかの問題が解決してこのリングで試合をしてくれるはずです。その時は桜庭選手のことを応援して欲しいと思います」
榊原代表からマイクを受け取った桜庭は、マスクでその表情こそ分からないものの、目には涙が浮かんでいる。「榊原さん、お疲れ様でした。そして皆さん、お久しぶりです。今日ここで試合をしたかったんですけど、時間がなくて出来ませんでした。もう一回このリングで試合をしたいと思います」
桜庭の言葉を聞いて、田村がマイクを握る。「試合もしない自分が挨拶するのは大変失礼ですが、代表のはなむけのため、一言挨拶させてもらいます。言いたいことは三つあります。一つは、榊原代表、神経を削る喜怒哀楽の交渉事など、長い10年間、大変だったと思います。そして二つめは、PRIDEを支えているファンとスタッフの皆さん。皆さんの支えがなければここまで来れなかったと思います。これからも代表の意思を受け続いて、どんどんPRIDEを進化させてもらいたいと思います。
最後に桜庭和志、まず彼がこのリングにどういう気持ちで挨拶にきたのかを組んでもらいたいと思います。そして今立場が違う状況ですけれど、いい意味で桜庭と僕にしかできない夢の架け橋ができたらなと思います。恩人である榊原代表、僕らの師匠である高田さん、各代表者の協力を得ないといけないと思いますが、僕と桜庭でしかできない夢の架け橋ができたらなと思います。これが僕からの気持ちです」
そして「今まで色んな選手と交渉してきましたけど、どっちも頑張ってしゃべった方だと思います。部屋でずっと黙りきったまま、向き合うこともありましたから。でも色んな形で伝え方はあると思います」と笑顔を見せた榊原代表。
「必ず次の世代でこのカードが実現すると思います。その日が来たら、僕は観客席で、待ちに待ったこの試合を楽しみたいと思います。みんなで夢を実現させてください」と、桜庭VS田村というドリームマッチ実現を、次のスタッフへと託した。
そして3ショットで写真撮影に収まる3人、桜庭と田村はガッチリと握手し、リングを降りた。DSE体制最後の大会に、団体の垣根を超えて、PRIDEのリングに戻ってきた桜庭。控え室へ引き返す途中、マスクをとってそれを観客席に投げ入れると、ファンに手を振りながら会場を後にした。
大会中に発表されたFEG谷川貞治代表のコメントでは、桜庭から試合出場の話を受けた際に、試合の一週間前の話だったため、今回は調整ができなかったとのこと。今後の桜庭のPRIDE参戦については、桜庭の意思を組んだ上で可能な限り調整したい、としている。また谷川代表は榊原代表の勇退について、「過去に色々なことがありましたが、今はおつかれさまでしたと言いたいです」とメッセージを送った。
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