3月5日(月)都内ホテルにて、昨日横浜アリーナで開催されたFEG/フジテレビ主催『K-1 WORLD
GP 2007 IN YOKOHAMA』の一夜明け会見が行われた。シュルト、ハリ、藤本らの会見が終わった後、「昨日のヒーロー」としてジェロム・レ・バンナからダウンを奪って日本人初勝利をもぎとった澤屋敷純一(チームドラゴン)が会見を行った。
会見の冒頭、谷川貞治イベントプロデューサーはこの試合が決まったいきさつから説明した。
「バンナは映画の撮影があって体調がよくない、怪我もしている部分があったんですが、2007年一発目の大会でもありバンナから出るよと言われました。それで相手をどうしようと、と。バンナはシュルト、ホンマンなど自分からやりたいというタイプなので誰と闘いたいか聞いてみると、“今回はベスト8ファイターより、豪快に勝ちたいので日本人とやろうか”という話になりました。
でも武蔵、藤本、中迫、天田、堀、野田はもう決まっていたのでどうしようかと。ノブ・ハヤシ、富平はバンナとやってもいい試合やるかなと思っていたんですが、たまたま前の日にSRSを見ていたら澤屋敷選手が出ていて“コレにしようかな”と頭に浮かんだんです。
周りには危ないからやめた方がいいと言われたんですが、前田憲作トレーナーに電話したら“絶対に驚かせます。ビックリさせますよ”と勝つようなことを言われて、そうなんだと。じゃあ、組もうということになりました。反対はされましたが、フジテレビさんにも“面白いですね。若い人にビッグチャンスを与えましょう”と言われましたね。アーネスト(・ホースト)にも“こんなカードを組んじゃいけない。何でこんなカードを組んだんだ”と怒られました(笑)。
ビッグチャンスをモノにするかどうかが、大物になるかどうかの運の巡り合わせですから、澤屋敷選手は見事に突破しました。佐竹も武蔵もバンナにはKOされてますから、あんな奇跡は見たことがない。武蔵が出てきた時よりも彼には可能性を感じました。彼は朴訥とした感じですが、1年後には見違えるようなスーパーヒーローにしたいし、本人もなれるように努力して欲しいと思います。野田選手も大事に育てたい。
感心したのは前田憲作トレーナーですね。堀、澤屋敷、小比類巻、尾崎といい選手を出しまして、彼とはプロになる前からのお付き合いがあるんですが、いい選手を育てる才能を感じます。チームドラゴンが“きてるな”と感じますね。他にも伊藤隆さんや山口元気さんなど、若手の指導者が今の時代に合った選手を作ってくれることを嬉しくも頼もしく感じています」
次に澤屋敷自身が昨日の試合を振り返る。「昨日は見事に作戦がハマったからよかったです。実力不足は否めないので、もっと実力をつけて世界の選手と肩を並べるくらいになりたいです。一番はバランス。パワーもスピードもテクニックもスタミナも全体的に上げることが必要だと思います」と抱負を述べた。
世紀の大番狂わせを演じた澤屋敷だが、かなり朴訥とした感じというか、まるで他人事のようにぶっきらぼうに語るので、記者の間から苦笑が洩れることも。谷川EPも思わず「変わってますね」と苦笑した。
「感動したというようなことを友だち、親戚、親、姉に言われたり、メールがたくさん来てました」と言う澤屋敷。「父に電話したら泣いてました。自分も泣きそうになりましたが、堪えました」なぜ? と聞かれると、「意地で」。一つの質問に一言が返ってくるという感じで、矢継ぎ早に質問が浴びせられる。
バンナが再戦を臨んでいることには「当分したくないです」、最初から勝てると思っていたかと聞かれると「勝ち負けよりベストを尽くして上がろうと思いました」、ピーター・アーツに憧れて格闘技を始めたとのことなので会ったことはあるかという質問には「すれちがったくらいですね」。練習は「一日4時間くらい」で、変わったことは「ジムの近くでタイヤを引くくらいですかね」。
堂々とした答えっぷりに本当に緊張しているのかとの質問も飛んだが、「もの凄くしてます。隠してるんじゃないですかね」と表情一つ変えずに答える。憧れのアーツとの対戦を聞かれると「分かりませんね。準備をしっかりするといっても何年もかかると思います」。GP予選への出場は「練習次第だと思います」、バンナに勝ったという実感は「ないです。何日か後くらいにはあるかも」、柔道は「高校の時にやってました」、その前は「バスケをやって途中でやめました」、バンナ戦のダメージは「おでこが痛いです」。
各スポーツ新聞の紙面を大きく飾った自分の記事を食い入るように見つめながら質問に答えていた澤屋敷は、「凄いですね。もらっていっていいですか? タダにこしたことないじゃないですか」と言って新聞を手にし、トロフィーとスポーツバッグを持ってスタスタと会場を後にした。
谷川EPはその姿に苦笑を浮かべながらも、「彼には大器を感じる。底が深い。分かりやすいタイプではないですね」と“大物っぷり”を感じ取る。「どんどん試合をやらせるか、しっかり練習して作り上げてやるか、育てる方法は二つある。前田トレーナーと相談して決めたいですね。早ければハワイ大会にも出てもらいたい」と、日本人ヘビー級で久しぶりに現れた金の卵に目を細めた。
●2007年度 シリーズスケジュール
4月28日(土)ハワイ・ブレイズデルセンター
「K-1 WORLDGP 2007 IN HAWAII」
USA GP、初代ヘビー級王者決定戦
6月23日(土)オランダ・アムステルダムアリーナ
「K-1 WORLDGP 2007 IN AMSTELDAM」
EUROPE GP
7月29日(日)香港orマカオ
ASIA GP
8月11日(土)ドイツorラスベガス
世界最終予選
9月下旬 韓国・オリンピック第1体育館
「K-1 WORLDGP 2007 IN SEOL 開幕戦」
12月上旬 日本・会場調整中
「K-1 WORLDGP 2007 決勝戦」
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