10月1日(水)東京・日本武道館で開催された『K-1 WORLD MAX 2008 World Championship
Tournament FINAL』の一夜明け会見が、2日(木)都内ホテルで行われた。会見には大激闘でボロボロとなった世界チャンピオン魔裟斗(シルバーウルフ)が出席。世界タイトルを獲得したK-1ライト級期待の星・上松大輔(チームドラゴン)、谷川貞治K-1イベントプロデューサー(以下EP)も出席した。
「昨日はとにかく、とにかく疲れた1日だったという感じです。言うことは別に何もないですね、今日は。今も実感も全然ないし、ただ疲れたなっていうだけで。多分、これから実感がどんどん沸いてくるんだろうと思うんですけど。今は実感が沸いてないので、何もないです」と、魔裟斗は最初に挨拶。
目には顔の腫れを隠すための大きなサングラス。表情は柔らかいが、やはり多大なダメージと疲れは隠せない様子だった。
「(試合の後は)いつも応援に来てくれる人たちの集まりがあって、そこに顔だけ出して、あとは家に帰ってゆっくりしてました。昨日はちょっと寝てます。3時間くらい。最近、早寝早起きで何時に寝ても6時何分に起きちゃう。今日は遅めで6時40分くらい目が覚めました。いつもと同じで試合の次の日はもの凄く疲れます」
昨日の試合を振り返り、「本当に激しい試合だったと思いますね。第1試合、第2試合共に。やっぱり佐藤選手もキシェンコ選手も強かったし、キシェンコの一発一発は本当に痛かった。よく俺の気持ちが折れなかったなと思いますね。
足も腰も顔も痛いです。久しぶりですよね、こんなに顔を腫らすのって。昔クラウスとやった時、それ以来くらい。こんなに打ち合ったことも今までにそんなになかったんじゃないかな」と、自分自身のタフさに驚いているようだった。「楽な試合はなく、2回とも厳しい試合でした。それであれだけ会場が盛り上がったし、結果的にはああいう試合が出来て良かったと思います」
大激闘となった佐藤嘉洋戦を振り返り、「うーん…まあ、気持ちが強くて、まさかパンチで倒されるとは思ってなかったですからね。それは驚きました。意外と右ストレートが重かった」と評し、試合前に舌戦を繰り広げたことについては「終わってしまえばもう何もないです。やっぱりプロなんで、そこもプロらしくと思っているので。仲良くやっても見たいと思わないじゃないですか。試合前は大嫌いですけど、終わってしまえばもう何もないですね。いい選手だなって思います。入れ込み過ぎ? いや、それはないです。あの時、言ってることは本気ですよ。その場面はいつも本気ですけど、昔と違って入れ込んだり、眠れなかったりとかそんなのは全然ないです」と、闘い終わってノーサイドであると語った。
キシェンコ戦でローキックが効いているにも関わらず、パンチで打ち合いに行った理由は「俺が思うにあそこでローで行ったらパンチでやられるんですよ。あそこでパンチで行かないと、あれだけ圧力あるからパンチで倒されると思ったんです。だからあえてパンチで勝負に行った」と説明。
魔裟斗は戦前、ずっと「決勝はアンディ・サワー」と言い続けて来た。その予想が外れたことが決勝戦での試合内容にも影響しているのではと聞かれると、魔裟斗は意外な事実を明かした。
「計量の時点で“あ、これはキシェンコ来るかな”と思って、今までキシェンコのビデオは1回も見なかったんですけど、計量から帰って1回だけ見ました。サワーは体調が悪かったんじゃないですかね。減量の失敗をしていた感じで、いつものキレがなかったし。飛びヒザ蹴りとかを見て“あ、キレてないな”と思いました。重いなって。やる前はそうでしたが、今は何とも思ってないです」
佐藤戦、キシェンコ戦共にダウンを奪われて本戦の判定を迎えたが、「1、2Rは(オープンスコアが)出ていたので、3Rはどうなるのかなって思いましたね。でも、絶対に勝負は捨てないと思っていたので。多分、去年の俺だったら途中で心が折れていたと思います。練習の成果というか、今年は気持ちが今までで一番強かった。勝ちたいという気持ちが、あの4人の中で俺が一番強かったと思う」との心構えがあったという。
ダウンの瞬間は覚えていない。「記憶が飛んでいるのか、必死だったので覚えていないのか、よく分からないです。倒された時はヤバイと思いました。行かなきゃいけないって。2度のダウンはフラッシュダウンなのか効いたのか必死で覚えてないです。セコンドの指示も会場の声も覚えてないです。必死だったんで、全然覚えてない」
そのオープンスコアリングシステムに関して、選手の立場として「あれはいいと思います。あれは確実に出るから変な判定にならないんで、分かりやすくていいと思います。自分が取ったのも分かってます。考えながらやってました。ただ、今回はとにかく必死だったので、試合の内容とかあまり覚えてないんですよ。必死でした」と評している。
今回の2試合では、国内トップのディフェンス技術を誇る魔裟斗らしからぬノーガードでの打ち合いを展開した。なぜオフェンスに比重を置いていたのか。その理由を魔裟斗は次のように語った。
「絶対に倒すつもりでやってたから。そういうスパーリングをずっとしてきたし。今回は下がったら負けだと思っていたので、絶対に下がらず前へ前へを意識していた。スタミナには自信があるので。攻撃重視で行きました。スタミナに自信があるので、どんなに攻めても、俺が疲れたら相手は動けないと思っているので、とことん攻めようと。
今回は賭ける意気込みが違った。今回は絶対に勝つと思っていたので、想いが違ったというか。それがファイトスタイルに出た感じだと思います。そういう練習ばかりしていました」
そして、昨日の試合後のコメントでは引退を連想させる言葉を並べていたが、一夜明けての心境はどうなのだろうか。その答えはやはり同じものだった。
「今は何も考えられない。今は本当に疲れきっちゃってて。冷静な判断が出せないです。今は動くのが嫌です。それくらい集中してやってましたから。先のことはまだ何も考えてないです。今は温泉にでもゆっくり浸かりたいですね。あまり長く休んでも暇なので、顔の腫れがひくくらいまでは休もうかな」
世界王座奪還に代わる新たなるモチベーションを設定するのか、それともワンマッチ参戦になるのか、あるいは引退という選択肢もあるのか……? 結論が出るまでには、まだ時間がかかりそうだ。
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