7月17日(火)都内ホテルにて、TBS主催『OLYMPIA HERO'S 2007 ミドル級世界王者決定トーナメント開幕戦』の一夜明け記者会見が行われ、大晦日での現役復帰を発表した船木誠勝(ARMS)が心境を語った。
会見はFEG谷川貞治代表による、復帰までの経緯説明から始まった。
「船木さんはHERO'Sの旗揚げ戦から中継の解説の仕事をしてもらっていて、当時はパンクラスを離れてフリーとしてタレント活動されていました。格闘技から離れているということで、私から『また(格闘技を)やりたくないですか?』と軽くお願いしたことはありましたが、正式なオファーをしたことはありませんでした。
ところが柴田選手の練習を見たり、試合を見ているうちに火が着いたんだと思いますが、半年ほど前に船木さんの方から『格闘技をもう一度やりたい』という話を受けました。そこで(現役復帰が)本気かどうかを確認して『明日の大会で発表してもいいですか?』と聞いたところ了承がありました。ですから前田さんに船木さんの復帰を話したのも大会前日でしたし、細かい話合いはこれからです。
私も船木さんが練習されているという話を聞いて、ある現役の有名格闘家から『かなり強い』ということや、そういう選手たちも極めてしまうという話も聞きました。それだったら(現役復帰も)大丈夫だろうと。ただし7年間の空白がありますから、調整のためにも大晦日がいいということになりました。
船木さん、桜庭選手、田村選手は、グレイシーと闘いながら、プロレスファンに夢を与えて、名勝負をやって、総合格闘技を日本でブレイクさせた世代です。そんな船木さんのために最高の舞台、場所や相手を一生懸命用意したいと思っています。
船木さんたちの世代があり、それから宇野選手たちの世代につながっている。船木さんたちはメインイベンターとしての風格を持っていると思います。そして下の世代の人たちにもいい刺激になると思います。また選手としては大変だと思いますが、総合格闘技の現状に立ち向かって欲しいです」
谷川代表の言葉を受けて船木が挨拶。復帰を決意した理由を自らの口から語った。
「桜庭選手がHERO'Sに参戦することになり、自分は解説席から見ていたのですが、選手としてはもう潮時だとうと思っていました。
しかしそれでも桜庭選手は闘っていて、それを見て心が動きました。また今年の頭に柴田がデビューするということになって、柴田を通して現役の選手としてリングを見て、自分もやらきゃいけないと感じました。
Dynamite!! USAで田村選手と会って、もし桜庭選手が欠場した場合にはホイスと闘うというオファーを受けていたと聞きました。同年代の選手たちが身を削ってやっているのに、それを解説席から批評するにはやりきれなかった。
LAから帰ってきて、柴田と一緒に色んな選手たちとスパーリングをしても、まだ力が残っていると感じます。それで上がるリングがあるのであれば、もうやるしかないだろうと。それで現役復帰の話をしました。
昨日もリングに上がって挨拶をしましたが、自分のことを知らない人もたくさんいると思います。でもリングの中は100%選手のものです。その選手の生活やすべてリングに出ます。ありのままの自分を出せば、損をさせない自信はあります。若い選手たちにも『何であんなヤツが』と思って、牙を向いてくれたらいい活性化にもなるでしょう。
またアメリカにとられた日本の総合格闘技のいい部分を作り直したい。今は日本が作ったものを、アメリカでお金で持っていった。だったらもう1回自分たちで作り直せばいい。2,3年かかるかもしれませんが、不可能だとは思いません。これからは大晦日に向けて、100%選手としての生活に入りたいと思います」
そして挨拶を終えた後は記者からの質疑応答に答え、今後の選手活動のビジョンを明かした船木。質疑応答の最後には前田日明HERO'Sスーパーバイザーが船木の復帰についてコメントし、「色んな意味で期待している。思い入れのある選手なので、協力してやっていきたい」と激励している。
――これから大晦日までのトレーニングの計画について教えて下さい。
船木「合宿を張る予定はありません。日常でトレーニングをして、特別なものは考えていません。現状でやれる限りの場所や、知っている人たちと練習します。試合だからと言って変えるところはないんです。
生活を変えてしまったら、格闘技が日常じゃなくなってしまう。闘えるのであれば闘う、日常で闘える状態にしていきたいと考えています。柴田の練習もあったので、今週一杯は休んで徐々にトレーニングを初めて行こうと思います」
――タレント業の方は休止することになりそうですか?
船木「タレント業を続けるのは難しいですね。集中してやらないといけないことですから、(タレント業は)無理です」
――柴田選手の指導については?
船木「それは並行してやっていきます。一緒に強くなるという形で、互いのスパーリングパートナーです。自分の試合は大晦日で、柴田は9月の試合に出る予定なので、9月以降は自分の練習に集中したいと思います」
谷川「柴田選手はたくさん試合をした方がいいと思います。経験を積んだら凄い選手になると思いますし、大物扱いはしないと言うか、小さな大会でも海外の大会でもどんどん試合をして方がいいでしょうね。
逆に船木さんは半年間、キチンと準備した方がいいんじゃないかなと。現役時代はメインイベンターとして試合をしなきゃいけないということで、一ヶ月に何試合もして体がボロボロだったと思うんです。それがこの7年間で治ったという部分もあるし、新しい船木さんが見たいです」
――現役復帰について桜庭選手や田村選手とはお話されました?
船木「会話はしていません。もともと桜庭選手とは挨拶をする程度でしたし」
――現在の体重とあと何年くらい続けようと思っていますか?
船木「85kgなのでライトヘビー級でやっていこうと思います。自分は一度引退した人間なので、二度と引退は出来ないんですよ。
だからリミットはないですし、使ってもらえるのであれば、使ってもらえる限りやります。ただし見ている方が目を覆いたくなるようになれば、その時は辞めます」
――怪我などはないですか? また奥さんは今回の件について何か言っていましたか?
船木「昔は試合の三日前に肋骨にヒビが入って、そのまま試合をしたこともありましたけど、今は特に不安を抱えているような怪我はありません。奥さんは反対してました。でも自分が言ったらきかないも分かってますし、好きなことをやればいいと」
――前田さんは船木選手の復帰については?
前田「船木の話を聞くと思い出すことがあってね。自分たちは総合格闘技の黎明期、創成期にもなってない時代からやってきて、選手や団体を背負って一カ月に一試合はしないといけなかった。自分も靭帯を切ったり、アバラを折ってやったり、悪戦苦闘しながらやってきました。
船木は自分と同世代だと思っていけど、まだ37か38で桜庭や田村と同世代です。彼らと彼らが育てた世代が、日本に総合格闘技界のブームを起こす先兵になると期待していました。僕と船木はリングスとパンクラスで別れたけれど、船木はモーリス・スミスに勝ったり、一ヶ月に一回は試合を続けていて、今思うとやっていたなと。でもそれを経験した人間のポテンシャルは今の選手と全然違う。
今は柔術から総合格闘技に入りますけど、自分らはキャッチレスリングから入りました。だから船木と今の総合格闘技の試合を見ていると『ああいう技が使えるのにね』って話をすることが多い。例えばそれを選手たちに言っても、イメージできないんです。だから船木はリング上で誰も気付かない事ができると思います。
いずれにしても船木が辞める時には『早いな、まだまだやれるのに』と思いました。この7年間は良くも悪くも体の治癒になっていたり、自分の技術がゼロになって考え直すいい機会になった。船木はたまに電話で話しても『今、体脂肪率が何%です』とかそんな話ばかりで、生まれつきのアスリートです。彼には色んな意味で期待しているし、思い入れのある選手なので協力してやっていきたいと思います」
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