3月19日(金)東京・広尾にあるクラウド秋山道場にて、五味隆典(久我山ラスカル)が公開練習を行った。五味は、3月31日(水・現地時間)アメリカ・ノースカロライナ州シャーロット ボージャングルス・コロシアムで開催されるZUFFA『UFC FIGHT NIGHT FLORIAN VS GOMI』でケニー・フロリアン(アメリカ)と対戦する。
この日は秋山道場に設置されている、実際にUFCと同じサイズの金網を使っての練習を行った五味。「国内では金網を使った練習は初めて。リングよりは高さがあるので、圧迫感は感じます。(金網は有利・不利どちらに働くか)それは試合でやります。あと2週間の辛抱ですよ(笑)」と感想を語った。
「今までにない緊張感・恐怖心があります。逆にアメリカへ挑戦するのは素晴らしいことだと思うし、チャンスだと思っています。そういういいポジションにいられることに感謝して、あとは結果を恐れずに思いっきりやるだけですね」というのが現在の心境だという。
“恐怖心”という今までの五味からはあまり出てこなかった言葉について聞かれると、「やはり日本で10年以上やらせていただきましたし、外国人との対戦も多かったんですが、自分と闘ってきた外国人はこういう心境だったんでしょう。応援に来ていただくお客さんたちが今度はアメリカの方だということで、本場・メッカに乗り込んでやるのが楽しみな部分もあります。それだけ総合格闘技がメジャースポーツになってきたことも実感しますし、そのチャンスの時にやれるってことでこのチャンスをものにしたいと思っています」と、自分が逆の立場になったことに不安と楽しさの両方があるようだ。
「よく考えると私はオリンピック男だと思っている(笑)。4年に一度しかいい時がないという。スポーツ選手だからバイオリズムがあります。23歳の時に修斗のベルトが取れて、26〜27歳でPRIDEを取って。大体オリンピック選手と同じ。いよいよ最後のメジャーの舞台に辿り着いたということで、ここで力を出さないとダメですね。今までの経験を踏まえて。いくら時間があっても足りない気もするし、緊張感とうまく闘いながらやります」と、4年に一度の好調期が来たと笑う。
UFCへの思い入れについては次のように語った。
「19〜20歳の頃は生意気にもUFCでやりたい、アメリカでやりたいと言ってきましたが、10年かかりましたし、それくらい大きな舞台だったんだなと思います。ここに辿り着いて終わりじゃなく、これからもうひと暴れしたいと思っています。何と言ってもMMA発祥の地ですから。その舞台に立てるだけでも幸運な人間だって思いますし、今までのキャリアを踏まえて勝ちに行くのが第一条件ですね」
ケンフロ選手は僕の半分くらいしか試合をしていないんですよ。経験の差、アウェイは言い訳にならない。アメリカのファンも期待しているだろうし、対戦相手もそれなりに準備してくるでしょうから、期待はずれにならないようにしっかりやろうと思っています」
対戦するフロリアンの印象については、「どんな相手と対戦してもキツイことはキツイ。だからどの相手この相手はないですね。相手の土俵で試合をしないことと、自分らしい動きを冷静にすることです。彼はキックが上手いし、ストレートも伸びてきますし、彼の打撃と自分の打撃、あとは彼の寝技がどういった形でぶつかるか分からないので。あとはフルラウンドやっても切れないスタミナ。UFCに入ってあの中でスタミナ切れというのはかなりしんどいものがある。それと折れない気持ち。それを最後の仕上げでやろうと思っています。今から気持ちが折れないようにイメージトレーニングをして、最後までやりきって金網の中に入ると。プロとして最高の状態で対戦相手と向かい合う。それはしっかりやってオクタゴンに入ろうと思っています」と、相手よりも自分の方が問題だとした。
PRIDEで活躍したレジェンドが来るということで、アメリカでも話題になっていることを告げられると、「年齢のことは言いたくないし、実際クートゥアー選手も秋山選手も宇野選手もみんな年上ですから、年齢は全く関係ない。アスリートとしてのチャレンジですね。彼らの目にどういう風に映っていたかは分からないし、ケンフロ選手は僕より年上。だから同じ土俵だと思ってやるだけです」と、本人にはそのつもりはないようだ。
ケンフロはこれまで2度タイトルマッチ出場経験があり、去年の8月に五味が生涯のライバルと目するBJ・ペンに挑戦したばかり。ここで勝てば一気にタイトルマッチへ近付くことになるが、「やる以上は常にトレーニングして、何年かかってでもタイトルに絡んでいけるようになることですね。まずはとにかく今回をクリアすることです。最初を落として後から追いつくというのは凄く大変な作業です。なかなか最初のインパクトは取り戻すことが出来ませんから。どんな形にしろ思い切ってやることですね」と、まずは今回のUFCデビュー戦に集中している。
「グラウンドでのヒジもありますし、1試合1試合のダメージは今までの総合とは違ってくると思う。1回勝負、一発勝負だと思うので、今までのものをその場その場で要求されますし、それを出せなければ今までの実績はパーになってしまう。まずはデビュー戦を思い切ってやるだけです。自分自身が憧れ続けた舞台ですから」
ここで五味が興味深いことを言った。「今までと違って、勝ち方にこだわる必要がないので、とにかく結果でしょう。しがみついても何をしても。そういった意味ではリキみはないです。判定でも何でもいいです。相手が潰れるまで攻める、その一心ですね。これは自分自身の責任なんですけれど、ここ数年はお客さんが見て一番いいと思われるところ、打撃戦ばかりを重視してやってしまったところがある。やっぱりフィジカル、レスリング、きつい寝技……そういったもの全てあった上で、今まで打撃戦が出来たりしたので、そういったものを見失わないように今はフィジカル中心にやっています。試合の度に仕上げるという作業だけという時期が何年も続いたので、今は時間をかけてフィジカルを戻しています。それがあって初めていい試合が出来るということに気付きました。まだ作り始めたばかりですけれど、UFC参戦を続ける限りはそこを気をつけながらやろうと思っています」と、本来の自分を取り戻そうとしているようだ。
フロリアンはムエタイスタイルの打撃、特に立ち技でもヒジを使ってくるのが要注意。しかし五味は「ヒジはパンチと一緒で飛んでくるものなので、ガードするしかない(笑)。ヒジはもらわないようにするしかないですよ。ヒジは必ずガードする。パンチと一緒です。もらえば痛いし。やられたらやり返す。それしかない」と、特に気にはしていない様子。
「ムエタイの間合いですよね。ヒジ、ヒザ……ボクシングとはちょっと違うので慎重にいきます。サウスポーのムエタイですね」
五味は26日に現地入りし、UFCデビュー戦に臨む。「日本人三連勝で帰ってこれるようにやろうと思っています。違う土地でたまたま日本人の方たちと一緒になるというのは、何かのチャンスでもあり、何かのタイミングだと思います。みんな勝って損することは一つもないので、岡見選手と宇野選手の頑張りに負けないような試合をしてこようと思っています」と、日本人全勝を目標として掲げた。
ZUFFA
「UFC FIGHT NIGHT FLORIAN VS GOMI」
2010年3月31日(水・現地時間)アメリカ・ノースカロライナ州シャーロット ボージャングルス・コロシアム
<全対戦カード>
▼メインイベント(第10試合)
五味隆典(久我山ラスカル)
VS
ケニー・フロリアン(アメリカ/チーム・シットヨートング)
▼セミファイナル(第9試合)
ロイ・ネルソン(アメリカ)
VS
ステファン・シュトゥルーフ(オランダ)
▼第8試合
ネイト・クォーリー(アメリカ)
VS
ホルヘ・リベラ(アメリカ)
▼第7試合
ロス・ピアソン(イギリス)
VS
デニス・シバー(ロシア)
▼第6試合
アンドレ・ウィナー(イギリス)
VS
ハファエロ・オリベイラ(ブラジル)
▼第5試合
ジェイコブ・ボルクマン(アメリカ)
VS
ロニーズ・トーレス
▼第4試合
宇野 薫(フリー)
VS
グレイソン・チバウ(アメリカ)
▼第3試合
岡見勇信(和術慧舟會総本部)
VS
ルシオ・リナレス(ブラジル)
▼第2試合
ジェラルド・ハリス(アメリカ)
VS
マリオ・ミランダ
▼第1試合
チャーリー・ブレネマン
VS
ジェイソン・ハイ(アメリカ)
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