11月26日(金)名古屋の日本ガイシホールで行われたダブル世界タイトルマッチの第一試合、WBCスーパー・フェザー級戦は、挑戦者で同級2位の粟生隆寛(帝拳)が王者ビタリ・タイベルト(ドイツ)からダウンを奪って3-0判定勝ちをおさめ、新チャンピオンとなった。これでWBCフェザー級に続く2階級制覇に成功した。
この日の粟生は、立ち上がりからタイベルトにプレッシャーをかけ続けて、3Rにはチャンピオンが得意の左フックを放つ前に速い左ストレートを打ち込み鮮やかなダウンを奪った。アマチュアの経験も豊富な試合巧者タイベルトも必死に手を出して反撃を試みたが、粟生はその後も優勢を保ち続ける。タイベルトは7Rに粟生のパンチで左目を切られ、8Rには別な箇所からさらに激しく出血。9Rには粟生の連打にタジタジとなる。粟生は10、12Rにも左を好打し、最後まで気を抜くことなく長丁場を乗り切った。スコアは115―112、118―112、116―110と全ジャッジが粟生の勝利を支持していた。
感激屋の粟生は初めて世界王者になった時と同様テレビの勝利者インタビューで感涙に声を詰まらせたが、落ち着きを取り戻すと、「タイベルトは思ったより速かった。自分からいって(試合を)作りたかった。もっといけたのに」と反省の言葉が口をついた。それでも「これで長谷川さんに繋げられました」と、兄貴分の長谷川の試合に弾みをつけられたことを喜び、また涙。試合が近づくと、インタビューを切り上げ、長谷川の応援のためリングサイドに駆け出していた。
再起戦で2階級上げて世界戦に挑んだ長谷川穂積(真正)も見事にベルトを巻いた。フアン・カルロス・ブルゴス(メキシコ)に3-0判定勝ちし、バンタム級に続く“飛び級”2階級制覇に成功した。
これが再起戦のリングでもある長谷川は序盤、硬さがうかがえた。それでも持ち前のスピードを生かした左ストレート、右フックでブルゴスを攻め、優位に試合を進めた。だが7R長谷川はメキシカンの左アッパーをアゴに食らい、ぐらつくピンチ。ここを驚異的にも打ち返してしのいだ長谷川。
8Rには偶然のバッティングで右目上をざっくりと切ったが、WBCルールによりブルゴスが減点を食い、勝利へと近づく。ポイントをリードする一方でこの日の長谷川は足を止めて打ち合うシーンが多く、珍しく被弾もしてハラハラとさせた。終盤2回ブルゴスは右目下を大きく腫らせながらも攻勢を続け、長谷川はクリンチも使いながらの打ち合いとなった。
公開採点で行われた試合は結局長谷川が一度もリードを許すことなく117−110が2者に116−111のスコアで勝利。さまざまな重圧に負けず、長谷川が見事に世界チャンピオンに返り咲いた。リング上で亡き母への思いを語り、弟分の粟生と喜び合った長谷川は控え室でも「勝てて良かった」と第一声。
「途中まではよく動いて戦えたけれど、カットをしてから自分のボクシングができなかった。でも今日は強い気持ちを見せたかった、というのもある」とコメント。フェザー級で戦った感想は「(相手が)倒れないな、ということ。バンタムとは違う」と言いつつも「これでよく分かりました。これを次に生かさないと」と、自信とともに今後の修正の必要性をも語っていた。 |