12月26日(日)さいたまスーパーアリーナで行われた『ダブル世界タイトル戦』のWBA世界バンタム級王座決定戦で、同級2位・亀田興毅(亀田)が同5位アレクサンデル・ムニョス(ベネズエラ)から12回にダウンを奪い、3−0判定勝ちで新チャンピオンとなった。
これで興毅はWB世界ライト・フライ級、WBCフライ級に続く王座獲得で3階級制覇となり、これは日本における世界チャンピオン複数階級世界王座獲得の最多記録。また同じリングで行われたWBA世界フライ級タイトルマッチで防衛に成功した弟大毅とともに、日本のボクシング界では初めての兄弟同時世界チャンピオンとなった。
今年初めに1度は引退し、10月に再起したばかりのおなじみムニョス(31)。さすがにKOキングとして猛威を揮った頃と比べればパンチにスピードもなく衰えは隠せない。それでも若い亀田(24)を勢いづかせまいと立ち上がりから攻勢に出て、ワンツー、右ストレートと大きなブローを放ってプレッシャーをかけ続けた。これに対し亀田はサウスポーから右フック、左ストレートで対抗するが、手数が少ないのはムニョスのプレッシャーがきつかったため、あるいは相手のスタミナ難から後半失速するのを待つ作戦だったか。
しかしムニョスも、大振りでミスも目立ったが意外に衰えず、クリンチ際にしつこく相手の後頭部をたたく反則は相変わらず。6Rにはこのラビットパンチで減点1を取られた。
最終回で大きなヤマ場が訪れた。ムニョスがバランスを崩したところに亀田が右フックを決めて軽いダウンを奪った。ダメージは軽い。再開直後の猛攻で左ストレートの直撃弾。この方がムニョスにはこたえたろう。必死になって亀田にしがみつく様子はいかにもロートルの色がありあり。もっと早く亀田が仕掛けていれば、あるいはKOもあったかもしれない。
それでも採点は接近しているかと思えたが、意外にも115−111、116−109、117−109と、4〜8ポイント差の明白判定で亀田の勝ち。ムニョスの攻勢よりも、亀田の的確さにポイントを与えた採点だった。
不思議なことにこの日の敗者はムニョスにしても、大毅の相手オルティアーヌにしても、露骨に判定に不服を唱えることは避けていた。ムニョスは「いい試合を見せられて、とてもいい気分。亀田はいい選手だ」と言いつつ、本音は不満ありあり。亀田についての印象を何度聞かれてもまともに答えず、「もう一度リベンジの機会を」と訴えるばかりだった。日本選手との対戦8人目にして初黒星にもかかわらず、「一番強かったのは、セレス小林だ」とは……。
一方、誇らしげに体に3本のチャンピオンベルトを巻きつけて試合後の記者会見室に現れた勝者も、コメントは謙虚だった。「3階級制覇は素直にうれしい。ムニョスは強い選手やったし、パンチも強かった。まだまだ勉強せんとあきません」。それでも「ドネアをはじめバンタム級のビッグなチャンピオンの中に俺も食い込んで、そして抜かしいきたい」と夢はあくまでビッグ。どうせなら、WBAのスーパー王者に昇格して正規王座を明け渡したアンセルモ・モレノとの統一戦を実現させてほしいものだ。
亀田興毅VSアレクサンデル・ムニョス戦と同じリングで行われたWBA世界フライ級タイトルマッチは、チャンピンの亀田大毅(亀田)が挑戦者同級14位のシルビオ・オルティアーヌ(ルーマニア)に苦戦の末2−1の判定勝ちでベルトを死守。2度目の王座防衛に成功した。
この日の大毅は減量苦の影響から思うように動けず、しかも手が出ない。一方小柄なオルティアーヌは手数で勝ったものの的中率は悪く、しかも非力。坦々と進んだ試合は、そのまま盛り上がることなく12回を終えた。スコアは2−1と言っても数字上は接戦ではない。大毅の勝ちとした2人は115−113、116−112と、2〜4点差だったが、別なジャッジは118−110と逆に8点差でオルティアーヌの勝ち。まるで別な試合を採点していたかのよう。ジャッジの間で採点基準が違っていたとしか言いようがない。レベルの低い世界戦だったが、不調で手の少なかった大毅が王座を守れたのは幸運というほかない。
大毅は「(内容は)よくない。でも、こんな状態でも守れたんでよかったです」とホッと一安心。微妙な判定につては「この回を勝ったとか負けたとかは気にしていなかった」と言う。一方敗者オルティアーヌは「結果を受け容れる」と言いつつも、勝ったと思ったかの質問には「そう思う。後半いいボクシングができたからね」
大毅は試合前から口にしていたように、減量苦から上の階級に転向する可能性が高く、「2階級(バンタム級に)上げたい」とも。まだ結論は先だが、暫定王座を3度守っているルイス・コンセプシオン(パナマ)とのチャンピオン統一戦が実現する見込みはきわめて低くなった。
ダブル世界戦の前座に出場した亀田家三男、和毅はタイのピチットチャイ・ツインズジムを5度ダウンさせた末3回KO勝ち。デビュー以来の連勝を17(12KO)に伸ばした。サウスポーのタイ選手から2回に2度のダウンを奪い、3Rに左ボディーの後の連打でまたもダウン。なおも立ち上がったピチットチャイを追撃して倒すと、再開後すぐフィニッシュした。 |