8月30日(月)東京・池袋にあるSRC本部道場にて三崎和雄(フリー)が囲み取材を行った。三崎は22日(日)東京・両国国技館で開催された『SRC14』のメインイベントSRCミドル級チャンピオンシップで、王者ジョルジ・サンチアゴ(ブラジル)と対戦。最終ラウンドまでもつれる大激闘の末、セコンドからのタオル投入によりTKO負けを喫した。
試合直後は激闘のダメージにより試合後のインタビューに応じることが出来なかった三崎だが「三崎選手から『マスコミやファンのためにコメントを残したい』という希望があり、この場を設けさせてもらいました」(飯田広報)と、試合から約1週間後、囲み取材の場がセッティングされた。まず始めに三崎は試合のダメージと現状を報告する。
「試合が終わった後はそのまま病院に行って入院しました。精密検査を行ったのですが、特に異常はないということで、翌日には退院しました。ただ大きな損傷はないにしても、脳のダメージや打撲はあったので、極力、外には出ず、安静にしていました。左目が腫れていますが眼か底骨折もなく、その他の部分にも骨折などの怪我はありません。パンチを打たれると脳が膨張してしまうので、吐き気やフラフラする感じはあるのですが、試合後はいつもそうです。だからいつもと同じような状態でした」
前回の試合で「特にダメージが大きかったわけではない」と説明する三崎だったが、試合のことは全く覚えていないという。
「試合の映像はまだ見ていません。実は全く試合のことを覚えていなくて、どこかでいいパンチをもらってしまったのは分かります。ただ今回の調整不足ということもあり、2Rの後からはスタミナが切れてしまい、試合が終わっても試合の記憶がなかったです。
サンチアゴにレッドカードが出されたのも試合の後で聞いて知ったくらいですし、覚えているのは1Rとフロントチョークをかけたところくらいまで。本当に無意識のまま戦っていました。だから『試合を振り返って?』と質問されても、試合後に周りから話を聞くくらいのことしか分かりません(苦笑)。
ここまで記憶が全くないのは初めてです。試合内容も覚えていないし、自分の体で戦ったのかも覚えていない。経験していない酸欠状態になったからかもしれないですけど、実戦練習をせずにリングに上がって相手と組むと一気にスタミナがなくなって、今までにない感覚でした。自分は本能という言葉をよく使うのですが、あの試合は本当に本能で戦った試合だったと思います」
この言葉にもあるように、実は試合の約一カ月前に右足を負傷し、ほとんど練習が出来ない状態でリングに上がっていた三崎。
セコンドの高瀬大樹が試合後に自身のブログで、三崎が右足首を剥離骨折していたことを公表していたが、三崎は自らの口で右足の怪我を「試合の一カ月ほど前に寝技の練習をしていて右足を怪我しました。怪我は剥離骨折と靭帯の部分断裂で、全治2〜3カ月と診断されました」と説明。
「相手に怪我を悟られてはいけない、情報が出てはいけないと思って試合をしました。痛み止めを打ち、足首にテーピングを巻いてリングに立ったのですが、どのくらいサンチアゴに怪我を悟られなかったのかは自分では分からないです」と怪我を隠しながら戦っていたことを明かす。
しかし三崎は「どんな条件でもリングに立つのが自分の生き方です」とし、敗因はあくまで「自分の実力がサンチアゴに及ばなかっただけ」、試合の残り時間が29秒というタイミングでセコンドからタオルが投入されたことにも「命をすくってもらって感謝している」と試合内容・結果には納得している。
「怪我が原因で負けたとは思っていないし、自分は試合当日に100%の状態でやって負けました。もしかしたらサンチアゴの方も怪我をしていたのかもしれないし、自分の実力不足で負けたわけで、今は悔しい思いだけが残っています。僕は基本的に足を一本なくしたとしてもリングに上がれると思っているし、僕はテクニックではなく気持ちで戦う選手です。
だからどんな気持ちでも戦えるし(右足首の怪我は)さほど大きな障害じゃなかった。それよりも実戦練習が全く出来ずにリングに上がったことをファンとスポンサーの皆様など、応援してくださった人たちには深くお詫びしたいと思います。
セコンドからのタオル投入で試合が終わったことも、あとで知りました。色々と言われることもあったのですが、自分は古川(誠一)会長と何年も二人三脚でやってきて、本当に信頼している人です。だから僕は会長に命をすくってもらったと思っています。もしタオルを投げるタイミングが少しでも遅れていたら、僕はここにいなかったかもしれない。
会長は3Rが終わった時点で試合を止めようと思っていたと言っていて、自分はそれだけ極限の状態だったんでしょう。会長は僕のことを本当によく理解してくれていて、見てくれているんだなと思うし、心から感謝しています」
三崎はサンチアゴと2度に渡る激闘を繰り広げているが、いずれも敗れている。今の三崎にとってサンチアゴとはどんな存在なのか?
「正直、最初の頃は全く意識をしていなかったんですが、時間が経って、彼と試合で肌を合わせてみて、自分の人生において最も重要な存在になったと思います。前回の試合で決着はつきましたけど、こうして命がつながっている限り、まだ人生のどこかで彼とつながるかもしれない。サンチアゴは僕にとってモチベーションでもあり、大切な存在なのかなと思います」
復帰のタイミングについて三崎は「試合のダメージは時間が経てば治りますけど、足をしっかり治さないといけない。今のままでは練習も出来ないので。気持ちだけで言えば、すぐにでも試合をやりたいですけど、プロとして今回のようなことがあってはいけない。万全な状態で試合をやりたいので、めどはまだ立っていないですね」とコメント。
右足の怪我の回復を考えると、年内の復帰はまさにボーダーラインだが、三崎は「気持ちとしては(年内に)やりたいです。1・2カ月で足を治して、2・3カ月できっちりとコンディションを作る。相手がサンチアゴとは言わなくても、出来れば年内にリングに立ちたいと思います」と年内復帰に前向きな姿勢を見せた。
囲み取材の最後を「もう一度、もう一回だけサンチアゴと戦うチャンスが欲しいと思います」という言葉で締めた三崎。サンチアゴとの3度目の決戦に向けて、三崎の気持ちはすでに動き始めている。
★『SRC14』ジョルジ・サンチアゴVS三崎和雄の写真&レポートはこちら
|