ZUFFA
「UFC 118」
2010年8月28日(土・現地時間)アメリカ・マサチューセッツ州ボストン TDガーデン
<主な試合結果>
▼ライト級タイトルマッチ 5分5R
○フランク・エドガー(アメリカ/王者)
判定3-0 ※三者とも50-45
●BJ・ペン(アメリカ/挑戦者)
4月のアブダビ大会でタイトルを奪われたペンがエドガーにリベンジマッチを挑む。ペンは「ヤツは逃げ回るだろうが、一本かKOで俺が勝つ」と試合前に挑発。UFCの絶対王者と言われたペンがタイトルを奪回するのか、それともエドガーが初防衛に成功して世代交代を完全に果たすのか?
1R、いきなり前に出るペンをエドガーがダブルレッグタックルでテイクダウン、リバーサルを狙うペンだが、すぐにエドガーがパンチを入れて抑え込む。フックガードからエドガーを浮かせて立ち上がるペン。スタンドに戻ると、エドガーはアッパーをもらいながらも左右フックを打ち返す。
ジャブから組み付くペンに、エドガーはヒザ蹴りから胴タックル、そしてまたもテイクダウンに成功! すぐに立ち上がるペンにヒザ蹴りを入れる。スタンドに戻るとジャブを繰り出し、左右に動き回るエドガー。近づいてくるペンにジャブ、ロー、左フック。エドガーが左フック3連発! 前に出るペンが左ボディから左フック。
2R、前へ出るペンだが、エドガーもジャブで押し返す。ペンは右アッパーから左フック、エドガーも左フック。エドガーは左右へのヘッドスリップでペンのパンチをかわしつつ、何度もタックルを仕掛ける。ペンの左ジャブが3発連続でヒット、ペンの右フックをヘッドスリップでかわすとそのままタックルへ入り、テイクダウン!
すぐに立ち上がったペンにジャブで前へ出るエドガー、左ミドル、ジャブでペンを突き放す。パンチを当てては離れるエドガーに、ペンのフックは空を切る。ジャブを多用するエドガーに、ペンは手数がかなり減ってきた。
3R、エドガーが左アッパーから右フック、そしてジャブ。ローからフックにつなぎ、ペンがパンチで前に出てくるとステップでかわしていく。インファイトでパンチをまとめ、すぐに離れるエドガーのヒット&アウェー。エドガーのステップに追いつけないペンは、エドガーが入ってくるところをフックで迎え撃つ。
ローを散らしてジャブ、そして飛び込んでの連打で右フックを当てるエドガー。ペンは完全に手数が減った。ヒット&アウェーで攻めるエドガー、さらに右ロー。エドガーはダブルレッグタックルから、テイクダウン出来ないと見るやすぐに立ち上がって左フック。ステップから組み付いて金網に押し込み、離れ際には左のヒジ! エドガーが完全にスタンドを支配する。
4R、疲れと焦りが浮かぶペンの表情、一方のエドガーも鼻血が流れる。開始と同時にペンがタックルで初のテイクダウン! ペンはパスガードに成功したが、足をまたいだところでエドガーに立たれてしまう。スタンドに戻ると、エドガーはステップワークを多用し、右ローをディフェンスしようと片足を上げたペンを見事な足払いでコカす! 上になるエドガーにペンはクロスガード。ペンはラバーガードに切り換え、エドガーの動きを制するが、クロスガードに戻される。
エドガーは中腰になってパウンド、ヒジ。そして思い切った右の一発! 身体が離れたところでペンが立ち上がり、エドガーは左フックをクリーンヒット。ステップで左右に動きながら、右ローを面白いように当てていくエドガー。ジャブで距離を取り、入り込んではパンチをまとめてすぐに離れる。ペンは完全に受けに回ってしまった。
5R、ペンがすぐに片足タックルでテイクダウン、立ち上がるエドガーに足をクラッチして再びグラウンドへ持ち込もうとするが、エドガーが起き上がって上を奪い返す。クロスガードのペンにボディから顔面へのパンチ、そしてヒジを放つエドガー。クロスガードのままのペンへ、エドガーがパンチとヒジを間断なく打ち込んでいく。
エドガーのパンチと鉄槌に防戦一方となるペン。首をひきつけて防ごうとするのが精一杯だ。胸を合わせたエドガーがヒジ、ようやくペンが金網を背にして立ち上がる。スタンドに戻るとタックルに来たペンにエドガーがクリンチアッパー、ほとんど動けないペンにエドガーがワンツースリーのパンチコンビネーション、前へ出てジャブ、右ストレート。ペンのタックルは余裕でかわす。そして試合終了のホーンが鳴った! エドガーの完勝だ。
判定が出る前から笑顔で観客の声援に応えるエドガー。判定はなんとジャッジ三者とも50-45の「BJに感謝したい、神様にも感謝したい、そしてチームのみんなと自分の子供にも感謝したい。今回は絶対に差をつけて勝とうと思っていたよ」
「フランキーは素晴らしい勝ち方をした。何も文句は言えないよ」とペンも今回は完敗を認めた。
▼ヘビー級 5分3R
○ランディー・クートゥア(アメリカ)
一本 1R3分19秒 ※肩固め
●ジェームス・トニー(アメリカ/元プロボクシング世界3階級制覇王者)
元プロボクシングIBF世界ミドル&スーパーミドル&クルーザー級3階級制覇チャンピオンの大物ボクサーであるトニーが、ついにUFCデビュー戦を迎える。42歳の挑戦に全米の注目が集まるところだ。迎え撃つは“金網の鉄人”47歳のクートゥア。こちらはUFCのヘビー級王座を3度、ライトヘビー級王座を2度獲得している。ここまでの戦績は18勝10敗。
1R、左手を下げたデトロイトスタイルで構えるトニーに、クートゥアはさっそくのタックル。あっという間にマウントを奪い、左のパンチを入れる。トニーは背中をべったりとつけてクートゥアを抱きかかえるが、クートゥアはパウンドから左のヒジ! 逃げようとするトニーにクートゥアは上半身を起き上がらせたままの肩固め。場内からは「UFC! UFC!」のコールが沸き起こる。
しばらく絞めていたクートゥアは一度離すとトニーを完全に寝かし、パウンドからマウントのまま肩固め、そしてサイドへ出るとトニーは為す術なくタップ。トニーの挑戦は何も出来ないまま終わり、クートゥアが貫禄の一本勝ちで歓声を浴びた。
「ボストンのみんな、キミたちは素晴らしいよ。これは狙っていた通りだ。これがMMAだからね。彼は9カ月しか練習してこなかったようだが、それでは短すぎる。私はボクシングのファンだが、このルールでMMAファイターが負けるわけにはいかない」とクートゥア。
「ランディーは偉大なファイターだが、ボクシングなら負けない」とトニーは負け惜しみを言った。
▼ミドル級 5分3R スウィングバウト
○デミアン・マイア(ブラジル)
判定3-0
●マリオ・ミランダ(ブラジル)
前回4月大会でアンデウソン・シウバのミドル級タイトルに挑戦するも、判定で敗れたマイアが復帰戦。ここまで12勝2敗の32歳。打撃を強化するためヴァンダレイ・シウバの教えを受けている。対するはこれがUFCでは2戦目(1勝1敗)、12勝1敗の31歳ミランダ。レスリングで南米王者の実績がある。セコンドにはアンデウソンが就いた。
1R、身長193cmとマイアよりも10cm上回るミランダに、サウスポーのマイアは片足タックルからテイクダウン。寝かしきろうとするマイアに、ミランダは一度は金網を背に立ち上がるも、すぐにテイクダウンされる。殴りながらバックに回り込もうとするマイア、徐々にバックマウントの形を作っていく。立ち上がろうとしたミランダのバックマウントを奪い、腕十字を仕掛けたマイアだが、ミランダは腕を抜いて立ち上がる。
金網を背にしてローを繰り出すミランダにマイアはタックル、クリンチアッパーから離れる。左ローを出しつつ距離をとるミランダ、残り時間僅かになるとパンチで前へ出てハイキックを繰り出すが、いずれもミランダにブロックされた。
2R、思い切りフックを振り回すミランダ、マイアがタックルに入ると首相撲からのヒザを見せるが、続く片足タックルに捕まり、マイアがフロントチョークからテイクダウンする。片手をつき、金網を背に立ち上がろうとするミランダに、マイアはバックを狙いつつ抑え込んでいく。マイアはマウントを取りに行き、ミランダに背中を着かせて完全なマウントポジション。パンチ、ヒジを叩きつけながら肩固めを狙っていく。
金網に寄っていくミランダに、パウンドとヒジを入れ、腕十字の体勢になるミランダ。さらに殴りつけていく。そして万全の体勢から腕十字を仕掛けたが、ミランダが立ち上がると同時に腕を抜き、パウンドで襲い掛かったところでラウンド終了。
3R、パンチで飛び込むミランダ、左ローにはマイアが片足タックルを仕掛け、すぐにバックへ回り込む。四の字フックで背後からのパンチ、ミランダはほとんど動かないでパンチをディフェンス。マイアは腕十字に行ったが、ミランダが上になって立ち上がる。
ミランダは首相撲からのヒザ蹴り、転倒したマイアは寝たまま「来い、来い」と挑発するがミランダは乗らずにスタンドを要求。やや攻め疲れが見えるマイアだが、タックルでテイクダウンするとサイドからマウント。そして3度目の腕十字にトライするも、やはりミランダが上になってかわし、パウンドを入れたところで試合終了。どうにも噛み合わない試合は両者とも疲労の色を見せ、ジャッジ三者とも30-27でマイアが勝利を得た。
▼ライト級 5分3R
○グレイ・メイナード(アメリカ)
判定3-0
●ケニー・フロリアン(アメリカ)
前回3月大会で五味隆典をスリーパーホールドで仕留めたフロリアン。今回の開催地にあるボストン大学の出身ということで、一際大きな声援を受ける。15勝4敗の34歳。メイナードはここまで無敗、10勝1無効試合(UFCでは7連勝)の31歳。フロリアンとは対照的にブーイングが送られる。ライト級トップ同士の激突となった。
1R、サウスポーのフロリアンは低い構えからジャブ、左ハイキック。左をフェイントしての右ロー、右ボディストレート。メイナードも右フックを繰り出していく。メイナードの右フックにフロリアンは左フック、メイナードが一瞬ヒザを折る。
両者ほぼ同時にタックルに行くが、メイナードが金網に押し込んでいき、シングルからダブルレッグのタックルでテイクダウンに成功する。トップを奪ったメイナードはフロリアンを金網に押し込んで右フックを数発出したが、このラウンドは終了。
2R、ジリジリと前に出るフロリアンに、メイナードは軽快なステップを踏みつつ左へ回り込む。フロリアンの前足外側にポジショニングするメイナード、フロリアンは左ミドル。メイナードの右フック、フロリアンが金網を背にしたところですかさずタックルへ行く。背後に倒したメイナードが右ヒジ! これでフロリアンは流血する。
ガッチリと抑え込んでいくメイナードはパウンド、中腰になって上から押さえつけるようにして立たせないようにする。パウンドを打ち込み、抑え込むメイナード。
3R、低い構えからボディへジャブを出すフロリアン、メイナードは右フックを強振。相手の前足外側へポジションを置くメイナードは素早い片足タックルからテイクダウンに成功、ヒジを繰り出し、下から蹴り上げるフロリアンにパウンド。やはり中腰になって上から潰すメイナードに、フロリアンは立ち上がることが出来ない。
メイナードが大振りの右を放ったところでフロリアンが立ち上がろうとするが、メイナードはすぐに胴タックルでテイクダウン。フロリアンはオモプラッタで応戦、2度目のトライで腕を絡め取ったが、メイナードは腕を抜いて脱出。立ち上がるフロリアン。残り時間僅かになると、勝利を確信したメイナードは追ってくるフロリアンの攻撃をステップでかわしまくり、判定3-0で8連勝を飾った。場内はブーイングに包まれた。
▼ウェルター級 5分3R
○ネート・ディアス(アメリカ)
一本 3R4分2秒 ※フロントチョーク
●マーカス・デイビス(アメリカ)
“名勝負製造機”の異名を持つデイビスは高いKO・一本率を誇るサウスポー。22勝7敗の37歳。プロボクシングでも17勝1敗2分の戦績を持っている。ディアスはシーザー・グレイシー柔術アカデミー所属、兄はあのニック・ディアス。こちらもサウスポーで一本勝ちの多い12勝5敗の25歳。
1R、ディアスはジャブをヒットさせると両手を広げて挑発。そこへデイビスがパンチで突っ込んで連打。デイビスはディアスの左フックで右目上をカットして流血する。両者ともパンチを振るい、デイビスは左フック、左ストレート。組みに行くディアスだが、デイビスは離れる。
再び組みに行き、金網に押し付けるディアスだが、これもテイクダウン出来ず断念して離れる。お互いにパンチを繰り出す。デイビスはリーチに優るディアスに強引なインファイトを仕掛けてワンツー、ディアスもパンチを振り回してハイキック。デイビスの出血がひどくなる。
2Rが始まる前に長いドクターチェックを受けるデイビスだが、試合開始。パンチの応酬ではインファイトを仕掛けるデイビスに、ディアスは長いリーチからのジャブで応戦。ディアスはタックルで金網に押し付けるが、これもディアスに防がれる。
パンチの応酬では果敢にワンツーで突っ込んでいくデイビスと、ジャブを駆使するディアス。デイビスが左フックから組み付くが、すぐに離れる。ディアスはジャブ、デイビスが打ち返すためにインファイトになるとフックで遠ざける。ジャブでディアスが試合を支配。デイビスは頭を振り、ローキックも出してパンチにつなごうとするが、なかなかビッグヒットは奪えない。ディアスが外掛けでようやくテイクダウンしたところでこのラウンドは終了した。
3R、「来い、来い」と挑発するディアスはジャブを多用。前手の右でジャブ、フックを繰り出していく。果敢に飛び込んでワンツーを繰り出すデイビスだが、ディアスの長いリーチが邪魔だ。距離を取ってパンチを次々にヒットさせるディアス、首相撲からのヒザ蹴り、前蹴りからタックルでテイクダウン。
ついにトップを奪ったディアスはパスガードを仕掛けながらパウンド、ヒジ。そして金網に押し付けながらのフロントチョーク! デイビスはすぐに落ちてしまったが、レフェリーはしばらく気づかず、絞め続けたディアスが一本勝ちを収めた。
▼ライト級 5分3R
○ジョー・ローザン(アメリカ)
一本 1R2分1秒 ※腕ひしぎ十字固め
●ゲイブ・ルーディガー(アメリカ)
1R、ローザンが圧力をかけて前に出て、組みながら右のパンチ。そのままテイクダウンし、素早くサイドへ。パンチを入れながらバックマウントを奪い、スリーパー狙いからマウント、すぐにバックマウント、そしてトップポジションからヒジ! 目まぐるしくスピーディーにポジションを変えていくローザンは、立ち上がろうとしたルーディガーのバックを奪うとジャーマンでテイクダウンしてのマウントからパウンド、そして腕十字! 流れるような美しい動きで相手を仕留めたローザンに、場内は大いに沸いた。
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